無人機保有広がり70カ国以上に、軍拡やテロ組織入手の懸念

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2012.10.04 Thu posted at 19:18 JST

ワシントン(CNN) 米ワシントンのシンクタンク「ニュー・アメリカ・ファンデーション」は4日までに、アフガニスタン軍事作戦やパキスタン内のイスラム過激派掃討などに投入され新たな兵器としての価値が高まる無人機について世界の70カ国以上がさまざま仕様の無人機を保有していると報告した。

ただ、武装された仕様機の保有国は少数としている。同団体は、戦争の遂行方法も変革しつつある無人機の拡大は対抗戦略の構築も促すことを意味し、新たな軍拡競争が起きる可能性があると懸念している。

軍備近代化を加速させる中国は今年9月下旬、一部の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国と島しょの主権を争う南シナ海に無人監視機を投入すると発表。2010年11月に同国内で開催された航空ショーでは無人機25機を登場させ、一部はミサイル発射性能を備えていたことから米国を驚かせていた。

中国が既に一線に投じている無人機の数や開発段階にある機数は明らかでない。ただ、無人機を急速に増やす米国に追い付く戦略を進めているとみられる。

欧米と核開発計画などで厳しい対立が続くイランは2010年8月、初の武装した無人機を公表。今月2日には軍首脳が航続距離2000キロの長距離無人機の性能の詳細を明かし、敵国とするイスラエルの主要都市テルアビブに容易に到達可能と誇示していた。

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米国のブッシュ前政権が11年前にテロとの戦いを宣言した際、米国防総省が保有していた無人機は50機以下だが、現在は約7500機に膨張した。武装した無人機が出動したのは01年の11月中旬が初めてとされ、アフガンで国際テロ組織アルカイダの軍事司令官を殺害した。

米国の無人機は現在、パキスタンやイエメンに配備され、過激派幹部の追跡、殺害の主役とも化している。ニュー・アメリカ・ファンデーションの統計によると、パキスタンのイスラム過激派を標的にした無人機攻撃では過去8年、1900~3200人を殺害した。

無人機の開発技術も急速に進展し、広まっている。11年の報告書によると、各国政府や一般企業、研究所らが手掛ける開発計画は約680件。05年の195件からは大幅増となった。

輸出も盛んで、米国のゼネラル・アトミックス社は10年に輸出許可を受け、無人機「プレデター」の非武装仕様機をサウジアラビア、エジプト、モロッコとアラブ首長国連邦(UAE)に売却。今年3月にはイタリアが保有する無人機「リーパー」の武装化に応じたが、武装したプレデターをトルコに売ることは拒絶した。トルコはこれを受け、自前の無人機開発を発表している。

無人機や関連技術の世界最大の輸出国はイスラエルだ。同国の国営企業はナイジェリア、ロシアやメキシコを含む広範な国へ売却している。各国が協力しての無人機開発も進んでおり、スウェーデン、ギリシャ、スイス、スペイン、イタリアとフランスの航空関連の国営企業による事業は最新鋭の無人武装機の試作品完成への最終段階にある。

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米バージニア州の軍事関連コンサルティング企業は今年6月、武装した無人機の研究や開発、調達の市場は今後50年間で約2倍の水準となり、現在の66億米ドル(約5210億円)から114億ドルに拡大すると予測した。/

無人機確保に動いているのは国家だけではなく、反政府武装勢力も同様だ。カダフィ強権体制が昨年倒れたリビアでは反体制派が武装闘争の最中にカナダ企業から6ケタの価格で偵察用の無人機を調達していた。

無人機関連の技術の入手は現在、困難なことではない。オンライン通販大手アマゾンでは250米ドル(約1万9750円)払えば小型の専用無人機が手に入る。資金に余裕がある麻薬密輸組織が入手を果たすのも時間の問題かもしれない。遠くない将来、個人が武装した無人機を用いて私的な遺恨を晴らす復讐劇が起きる可能性もある。

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