シリア避難民数千人が国境地帯で足止め、健康悪化の子どもも

避難してきた人々

2012.10.01 Mon posted at 16:08 JST

シリア北部(CNN) トルコとの国境から100メートルも離れていないシリア北部の国境地帯で、内戦の混乱を逃れてきた数千人の避難民が、国境を通過できないまま地面の上で寝起きする生活を続けている。不衛生な環境で体調を崩す子どもも増えているが、越境できるめどは立っていない。

オリーブの木にビニールシートをかぶせただけの粗末なテントが並ぶ野営地。夜が明けると、汚れた毛布にくるまっていた人たちが起き出してきた。

子どもたちは焚き木用の小枝を集め、給水タンクの前には女性たちが行列を作る。白く濁ったタンクの水は、ここで暮らす人たちの間に下痢が広がる原因となっているようだ。

1カ月前までこの場所に野営地はなかった。しかしシリアの反体制派「自由シリア軍」によると、ここで暮らす人は9月末の時点で推計5500~6000人に膨れ上がり、日々増え続けているという。

政府軍と反体制派の激しい戦闘が続くアレッポでファストフードチェーン店を営んでいたという男性(30)は英語で取材に答え、「自宅が破壊されたのでここに来た」「ここでオリーブの木の下に住むことになるなんて、これまでの人生で想像したこともなかった」と肩を落とす。

多くの人が、同じようにロケット弾や空爆で町や村を破壊され、避難を強いられた体験を語った。

父親に抱かれた2歳の少女は、先月の爆発でひどいやけどを負い、胸にまだ生々しい大きな傷跡があった。記者が話しかけても反応はない。父親は、爆発で耳が聞こえなくなったと説明した。

国境は目の前なのだが

もう一方の腕に抱かれていた生後1カ月半の男の子は、顔一面に蚊に刺された跡があった。下痢をしていて熱もあるという。父親は、一家8人でここまでやって来たが、トルコへの国境を越えられないままもう2週間以上も待っていると話し、「私たちはここで日ごとに死に近付いている」とつぶやいた。

トルコは過去1年以上にわたり、シリアからの難民を受け入れる政策を取ってきた。トルコへ脱出した難民は、衛生的で管理が行き届いていると定評のある難民キャンプで生活している。

しかしシリアからの難民は8月までに8万7000人を超え、キャンプに収容し切れなくなった。新しいキャンプの建設が追い付かず、トルコ政府は少なくとも部分的に、難民の受け入れ中断を余儀なくされている。

トルコ外務省は「キャンプ建設のペースが、シリア政権の国民に対する暴力のペースに追い付けない」と話し、別の当局者は「政策に変更はない」「できる限り難民を受け入れる政策は継続する意向だ。ただ、収容能力には限界がある」と説明した。

国境地帯で待機している人たちには、食料や医薬品など人道支援物資の提供を始めたといい、「現時点でできることはこれが精いっぱい」だという。国際団体などが支援に乗り出した様子は見られなかった。

国境を隔てる有刺鉄線前には100人ほどの男性が集まり、トルコのエルドアン首相に難民の受け入れを求める抗議活動を続けていた。夜の闇にまぎれ、有刺鉄線のフェンスをくぐってトルコに侵入しようとする一家もいたが、すぐにトルコの兵士に見つかり、シリアに追い返された。

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