目でパソコンを操作する装置、2000円台で実現 英研究者

視線の動きだけでパソコンが操作できる装置=ALDO FAISAL氏提供

2012.09.26 Wed posted at 19:35 JST

(CNN) マウスやキーボードを使わず、視線の動きだけでパソコンが操作できる装置を低コストで製作することに、英国の研究チームが成功した。家庭用ゲーム機に搭載されたカメラ2台と眼鏡一式を組み合わせた。

同じように視線の動きをとらえる装置は従来、数十万円という価格が一般的だった。しかし英インペリアル・カレッジ・ロンドンの神経科学者、アルド・ファイサル博士らが開発した「GT3D」は、ショッピングセンターで手に入る安い材料だけで製作できる。多発性硬化症やパーキンソン病、筋ジストロフィーの患者らにとって大きな助けとなるほか、ハンズフリーのパソコンという次世代製品の普及に向けた可能性を秘める。

ファイサル氏はもともと、あらゆる装置を分解せずにはいられない性分だった。ある時ふと人気ゲーム機の中身を調べてみたところ、非常に性能の良いカメラが内蔵されていたという。「どんなウェブカメラよりも速く、目の動きまで記録できることが分かった」と、ファイサル氏は振り返る。

人間の目は1秒に10~20回も動いているため、通常のカメラで視線を正確に追跡することは難しい。カメラの性能を上げれば、価格も当然高くなってしまう。しかしゲーム会社はソフトで利益を上げるため、ゲーム機には赤字覚悟で高価なカメラを搭載していたのだ。

視線の動きだけでパソコンが操作できる装置=ALDO FAISAL氏提供

GT3Dの製作コストは当初、1台につき39.80ポンド(約5000円)だった。しかしその後、ゲーム機の値下がりによって、さらに20ポンド(約2500円)まで下げることができたという。

ユーザーはまず、この装置を着けて、多数の点が映し出されたパソコン画面を見つめる。指示に従って1つの点から次の点へ、順に視線を動かせば、チームの開発したソフトがその動きを検出していく。いったん位置合わせが完了すれば、あとはマウスの代わりに視線で画面上のカーソルなどを操るだけ。ファイサル氏によれば、同じ技術を応用して、視線で車いすを動かすこともできるようになる。さらにはベッドやキッチン器具、テレビ、オーディオ機器などを自在に操作することによって、自立した生活が取り戻せる可能性もある。

ファイサル氏らはGT3Dの検査や動作確認を重ね、神経科学の専門誌に成果を発表した。多数の企業から問い合わせが寄せられているが、問題は商品化する際の価格設定だという。「マウスやキーボードの操作が困難な人たちのために、できるだけ安い価格で提供したい」という同氏らの使命感を共有する企業は現れていない。1~2年のうちに協力企業が見つからなければ、だれでも自由に同じ装置が作れるよう、GT3Dに関する情報やソフトをすべてインターネット上に公開するつもりだという。

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