(CNN) パキスタンでキリスト教徒の少女がイスラム教の聖典「コーラン」を焼却したとして告発された事件が24日、地方裁判所から少年裁判所へ移管された。警察は捜査の結果、少女に罪はないとの見解に達しているとされ、裁判の幕引きは近いとみられる。
少女は首都イスラマバード郊外に住んでいたリムシャさん(14)。調理の燃料にするためにコーランを焼いたとして8月に拘束され、反冒とくの罪に問われた。これに対して国際社会から非難が集中し、リムシャさんは9月に保釈されている。
警察は裁判所に提出した報告の中で、リムシャさんが罪を犯したことを示す証拠はないと指摘。地元イスラム教指導者がリムシャさんをわなにかけたうえで告発したとの見方を示した。指導者が証拠を捏造(ねつぞう)するため、コーランを破いたとみられる。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチでパキスタン問題の部門を率いるアリ・ダヤン・ハサン氏によると、うその告発をした者が罪に問われる例は過去にはないという。
ハサン氏によれば、反冒とく法は当初、宗教間の平和を維持する目的で導入された。しかし1980年代半ば以降、軍事政権が冒とくを死刑に値する罪とする修正案を導入し、宗教的少数派や女性、子ども、貧困層を弾圧する道具として使い始めた。86年以降、冒とく罪絡みの事件は1400件に上り、裁判中に52人の被告が死亡。現在15人の死刑囚がいる。
被告が地域住民に攻撃されたり、殺害されたりするケースも後を絶たない。リムシャさんは拘束当日、近隣の住民から怒りの声を浴びせられた。担当弁護士によれば、リムシャさんに片思いをした近所の男性が、腹いせのために騒ぎを起こした可能性もある。
少年裁判所への移管は明るい兆しと考えられるものの、リムシャさんの苦難が終わるわけではない。裁判所や警察がどのような見解を示そうと、告発されたこと自体によってリムシャさんは生命の危険にさらされ、その危険は今後も続く恐れがあると、ハサン氏は警告している。