仏誌がムハンマド「風刺画」掲載、イスラム教国さらに刺激か

2012.09.20 Thu posted at 19:30 JST

パリ(CNN) イスラム教の預言者ムハンマドを中傷したとされる米国映画が中東諸国などで反米デモを引き起こしているなかで、フランスの風刺漫画誌「シャルリー・エブド」が19日、ムハンマドをほうふつさせる人物の画像を掲載した。

風刺画にはムハンマドとの直接の言及はないが、男性の裸の後ろ姿がムハンマドと受け止められる複数の画像がある。イスラム教では預言者の偶像化は不敬行為と位置付けられている。

同誌の編集責任者は19日、この時期の掲載について「火に油を注ぐ考えはなく、ニュースを風刺的な側面から扱う表現の自由に基づいた」と説明。フランスのCNN系列局に対し「今週のニュースはムハンマドと不愉快な映画だった」とし、冷笑の対象は映画であると語った。

ただ、今回の掲載はフランスのイスラム教社会から注目を集めるための宣伝行為との批判が既に出ており、余波が今後も続く可能性がある。フランスに住むイスラム教徒は推定470万人で、西欧では最多規模。シャルリー・エブド誌の風刺画掲載に伴って暴力事件が発生したとの報告は現段階でない。

同誌の記者の1人は怒りや暴力を扇動する意図はなく、狙いは笑いだと強調。「全ての過激主義者を笑い飛ばしたい。それはイスラム教、ユダヤ教、カトリックなどの各教徒であるかもしれない。極端な言葉や行動を我々は受け入れない」と述べた。その上で、この編集方針は権利の行使であり、読者の反応には責任が持てないとも語った。

フランスのエロー首相は、今回の風刺画掲載について「表現の自由は支持するが、限界はある」と指摘。「風刺画の側面に沿っての報道の自由はあるが、責任を負う問題もある」と付け加えた。

この中でフランス外務省はイスラム教徒が集団礼拝を実施する金曜日の21日に約20カ国に駐在する大使館を閉鎖し、フランス人学校を休校とする事前予防策を発表した。一部の大使館では警備が既に強化され、シャルリー・エブド誌のパリの社屋周辺では18日夜、警戒する警察車両が見られた。

同誌は昨年11月、イスラム法をからかったとも見られる表紙を掲載して襲撃を受け、発刊当日に社屋が燃やされる被害を受けたこともある。この号の表紙にはひげを生やし、ターバンを巻いたムハンマドを登場させ、「笑いで死ななかったらむち打ち100回」との言葉が添えられていた。この表紙を描いた風刺画家は今なお警察の警護下にある。

19日に掲載された風刺画ではムハンマドの画像は表紙に飾られていない。昨年11月の表紙を担当した画家は「教訓を得たため」と説明している。

フランス内では国内のイスラム教徒対策が主要な政策課題として浮上しており、国内論議も招いている。この中で同国政府は昨年、イスラム教徒女性の品格をおとしめ公共治安に問題もあるとして顔を隠す被り物などの着用を禁じていた。同様の法案はベルギーでも成立し、スイスではモスク(イスラム教寺院)に付設する尖塔建設が禁止された。

ムハンマドをやゆしたとされる米国映画は中東諸国などで米外交公館への襲撃事件も起こし、リビア東部ベンガジでは米領事館がロケット弾攻撃などを受け米大使ら館員4人が殺害されている。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。