(CNN) リビア東部ベンガジの米領事館が11日夜に襲撃された事件で、当時同領事館にいたクリストファー・スティーブンズ駐リビア米大使ら米国人4人が死亡した。オバマ米大統領は12日、「このような非道な行為には必ず処罰を下す」と強く非難する声明を発表した。
米政府高官などによると、領事館はロケット式の手りゅう弾によって襲撃されて炎上。 建物は武装集団に取り囲まれ、スティーブンズ大使らは建物の屋上へ脱出しようとして、ほかの職員と離ればなれになった。死亡したのはスティーブンズ大使のほか、情報管理担当官のショーン・スミス氏と国務省の警護担当職員2人。死亡に至った詳しい経緯は明らかになっていない。
今回の事件は、イスラム教の預言者ムハンマドを冒とくしたとされる映画がインターネットに投稿されたことに対する抗議行動が発端となって発生した。エジプトの首都カイロの米大使館もこの映画をめぐって襲撃され、星条旗が破り取られている。
オバマ大統領は「我々は他者の信教を中傷する一切の行為を拒絶する」「しかし今回のような非道な暴力は、断固として正当化できない」と非難した。
リビア指導部も遺憾の意を表明し、同国首相は「卑劣な犯罪行為」を非難する声明を出した。
関係者によると、ムハンマド映画に対する抗議行動を武装集団が扇動したのか、単に利用しただけなのかは分かっていない。スティーブンズ大使が狙われていたとは思えないという。
米当局者はこの襲撃について、計画的な犯行だったとの見方を示している。リビア東部のイスラム武装勢力の動向に詳しい関係者は、過去にもベンガジの領事館を襲撃したことのある国際テロ組織アルカイダ系の集団が、今回の襲撃にも関与した疑いが最も濃厚だと語った。
米政府高官や国防総省高官によれば、襲撃に関与したとみられる特定の武装集団に対する捜索を強化する方針で、その一環として無人偵察機を動員する見通し。米連邦捜査局(FBI)も12日、捜査に乗り出したことを明らかにした。
スティーブンズ大使は、リビアの指導者だった故カダフィ大佐と反体制派の衝突が激化していた2011年、反体制派との関係構築を担うためにリビアに派遣された。クリントン米国務長官は12日、「(スティーブンズ大使は)圧制者を阻止するために生命を賭し、そしてより良いリビアを築くためにその生命をささげた」との追悼談話を発表した。