シリアで死亡したジャーナリスト山本美香さん パートナーが当時を振り返る

2012.09.06 Thu posted at 16:31 JST

(CNN) 内戦に陥っているシリアを取材中に日本人ジャーナリストの山本美香さんが殺害された事件で、一緒に取材を行っていた独立系通信社ジャパンプレス代表の佐藤和孝さんが当時の様子をCNNに語った。

山本さんは8月、シリア情勢を取材するために同国に入った。山本さんは紛争地を取材するベテラン記者で、過去にはアフガニスタンやイラク、旧ユーゴスラビアでの取材経験もあった。

公私にわたって山本さんのパートナーだったジャパンプレス代表の佐藤さんは、山本さんが銃撃された時、数メートルしか離れていない場所にいた。

山本さんとともに多くの紛争地取材を行ってきた佐藤さんは、山本さんの報道に対する情熱について、「ジャーナリズムは戦争をやめさせることができるという固い信念だったと思う」と語る。

佐藤さんによれば、山本さんは子どもたちにも関心を寄せており、世界に対して、どのように子どもたちが傷つけられ、殺され、心から血を流しているかを伝えたかったのだという。

佐藤さんはまだ彼女の死をうまく処理できていないと言う。そして、彼女の身に何が起きたかを正確に知ることが、心の平安を得る唯一の方法だと語る。

佐藤さんによれば、2人はシリアの反体制派の武装組織「自由シリア軍」に同行してアレッポの町にいた。10~15人の男たちが自分たちの方に向かって歩いてきて「最初は自由シリア軍だと思い、同じ側だったのでカメラを構えて撮影を開始した。その時に(銃撃が)起きた」と佐藤さんは言う。

佐藤さんは、1人の男が緑色のヘルメットをかぶっているのが目に入った瞬間、シリア政府軍の兵士だと思ったというが、確かめるすべはなかった。佐藤さんが体を反転させて走りだすや、銃声に続いて自動小銃の掃射音が聞こえてきた。佐藤さんは「自分に当たると思った」と振り返る。山本さんと離ればなれになったのはその時だったという。

1時間後、佐藤さんは山本さんの無事を信じて行方を探していた。山本さんが死んだとは全く思わなかったという。

反体制側の兵士に山本さんはどこかと尋ねると、「病院にいるから自分で行って会ってこい」と兵士にいわれたという。病院の1階のロビーに、ストレッチャーに乗せられて布で包まれた遺体があった。その時、佐藤さんには、それが山本さんだと分かったという。

佐藤さんは外国人ジャーナリストゆえに山本さんが狙われたと考えている。佐藤さんによれば、武装した男たちの1人はこう叫んだという。「あそこにいるぞ。日本人だ」。だが、山本さんが死の直前まで撮影していたビデオからは、何を言っているのかはっきりと聞き取るのは困難だ。

佐藤さんはこのビデオについて、「ビデオの中で彼女は生きている」と語る。佐藤さんには、これをどう扱えばいいのか分からないと話す。

佐藤さんは東京のシリア大使館に対し、銃撃事件の真相究明を求める要望書を提出した。だが回答が得られるかどうかは望み薄だと言う。

「美香は私の仕事上の、そして個人的にも人生のもっとも大切な一部分だった。彼女は私の右腕であり、左腕であり、すべてだった。彼女がいなくなり、どうしたらいいか分からない」と佐藤さんは語った。

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