権力に固執するアサンジュ氏、犠牲となったウィキリークス

2012.08.18 Sat posted at 16:12 JST

(CNN) 内部告発サイト「ウィキリークス」創設者ジュリアン・アサンジュ容疑者が16日、再びマスコミをにぎわした。

性犯罪容疑での聴取を求めるスウェーデンに送還されるのを避けるため、アサンジュ容疑者はエクアドルへの亡命を求め、ロンドンのエクアドル大使館に2カ月近く滞在していたが、同日、エクアドル政府から「政治亡命」が認められた。

当初ウィキリークスは、インターネット上に存在する「無国籍の」報道機関として、他の報道機関が対処を余儀なくされる現地政府からの圧力を回避できると公言していた。そのウィキリークスの創設者が、ある国の政府の手から逃れるために、報道の自由が極めて制限されているとされるエクアドルに助けを求めざるを得なかったというのは極めて皮肉であり、悲しいことだ。

理論上、ウィキリークスはこの運命を回避できるはずだった。しかし、アサンジュ容疑者が、個人的な法的トラブルが浮上した後も、同組織の完全な支配の維持に固執したために、ウィキリークスも道連れとなってしまった。

スウェーデン当局が2010年8月20日にアサンジュ容疑者を性犯罪容疑などで国際指名手配して以来、ウィキリークスは危機的状況に陥った。かつてアサンジュ容疑者の右腕だったダニエル・ドムシャイトベルク氏が自著の中で次のように述べている。

本記事は「ウィキリークス革命―透視される世界」の著者、ミカ・L. シフリー氏による寄稿です。記事における意見や見解はシフリー氏個人のものです。

「決断を下すのはいつもジュリアン(アサンジュ氏)だった。他の者たちは優柔不断かつ臆病で、彼に限度を設ける決断力に欠けていた。そのため、ジュリアンは誰にも説明責任を負わず、自分の権限についていかなる変更も許さない独裁的リーダーとなった」

アサンジュ容疑者の性犯罪容疑が明るみに出た時、ドムシャイトベルク氏をはじめウィキリークスで働くボランティアたちは、ウィキリークスのためにアサンジュ容疑者に身を引かせようとした。言うまでもなく、誰かに高い倫理基準を守らせたかったら、自分自身も清廉潔白でなければならない。しかし残念ながら、アサンジュ容疑者は容疑が浮上してから数週間たっても権力を手放そうとはしなかった。

2010年9月14日、ウィリークス関係者は最後のオンライン会議に臨んだ。

関係者の中には「設計者」と呼ばれる謎に包まれた最上級プログラマーも含まれていた。そこでアサンジュ容疑者は、ビルギッタ・ヨンスドティル氏がマスコミのインタビューで語った内容について腹を立てた。ヨンスドティル氏はアイスランドの国会議員で、米軍ヘリがイラクの一般市民を狙撃する様子を撮影した有名なビデオの公開に貢献した人物だ。

ヨンスドティル氏はインタビューで「(アサンジュ氏に対し)法的問題への対処に集中し、後のことは他の人々に任せるよう強く促した」と語った。しかし、アサンジュ容疑者は代表の辞任を拒否した。

本記事は「ウィキリークス革命―透視される世界」の著者、ミカ・L. シフリー氏による寄稿です。記事における意見や見解はシフリー氏個人のものです。

アサンジュ氏の弁護士はスウェーデンでは公正な裁判を受けられないと主張

インターネット上では、障害点を避けながら情報を動かすことが容易なため、オンライン上の言論を検閲するのは非常に困難だ。その利点を生かし、ウィキリークスはアフガニスタン戦争やイラク戦争に関する重要文書や米国務省の内部文書を次々と公開し始めたが、それを止めるのは不可能だった。

米政府は、アマゾンなどの米国企業に圧力をかけ、ウィキリークスへのウェブサービスの提供を止めさせようとしたが、ミラーサイトが次々と立ち上がり、ウィキリークスのメインサイトが削除された後も公開情報は閲覧可能な状態に置かれた。

いかなる政府の脅しも受けることなく、あらゆる公的不正を暴くために、誰でも安全にかつ匿名で内部告発できるというウィキリークスの考えは誰にも止められないかに見えた。

しかし、これまでに明らかになったように、ウィキリークスはインターネットとは違い、組織自体に障害点を抱えていた。アサンジュ容疑者は私生活で直面した危機の対応を誤り、最も親密な協力者たちの信頼を失った。ドムシャイトベルク氏やヨンスドティル氏が協力をやめただけでなく、「設計者」もウィキリークスが匿名の内部告発情報を安全に受け取るためのソフトを持ち去った。

本記事は「ウィキリークス革命―透視される世界」の著者、ミカ・L. シフリー氏による寄稿です。記事における意見や見解はシフリー氏個人のものです。

最近、ウィキリークスが公開した情報と言えば、国際ハッカー集団「アノニマス」が米民間情報会社ストラトフォーから盗み出したとされる電子メールや、シリアの政府関係者がやりとりした電子メールくらいだ。

透明性の理念は、聡明かつ勇敢だが、結局欠点もある個人の法的トラブルよりもはるかに大きな問題だ。英国はアサンジュ氏のエクアドルへの亡命を認めるべきだ。同氏がスウェーデンや米国で公正な裁判を受けられる可能性はほとんどないからだ。

しかし、彼のことはそれで終わりにしよう。情報の自由の繁栄を望むなら、アサンジュ氏の事例から重要な教訓を学ぶべきだ。情報が自由に流通するためには、情報を管理する人物は1人であってはならない。

本記事は「ウィキリークス革命―透視される世界」の著者、ミカ・L. シフリー氏による寄稿です。記事における意見や見解はシフリー氏個人のものです。

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