宗教の自由、エジプトや中国などで悪化 米国務省が年次報告

クリントン米国務長官

2012.08.01 Wed posted at 12:38 JST

(CNN) 米国務省はこのほど、世界各国の宗教の自由に関する年次報告書をまとめ、エジプトや中国などで状況が悪化しているとの見方を示した。

報告書では、中東の民主化運動「アラブの春」による政変の流れの中で、宗教上の少数派が危険にさらされていると指摘した。

エジプトでは暫定統治を担う軍部が寛容な姿勢を示す裏側で宗派間の緊張が高まり、キリスト教系のコプト教徒らへの暴力が悪化していると批判。コプト教徒中心のデモ隊が治安部隊の攻撃を受け、死者25人、負傷者350人が出た例などを挙げた。さらに、暫定政権はキリスト教徒を狙った暴力や教会への攻撃を阻止できず、実効性のある捜査や訴追もできていないと断じた。

クリントン国務長官は報告書の発表に合わせて国際平和カーネギー基金の集会で演説し、エジプトのムルシ大統領に「全国民の権利を尊重する」との約束を守るよう強く求めた。

長官はまた、「宗教の自由は宗教だけの問題ではない。人々が国家から干渉されず、自由に考え、発言し、仲間と集まる権利の問題だ」「これらはすべての人権と同様、われわれが生まれながらに持つ権利であり、政府にはそれを守る責任がある」と力を込めた。

報告書は宗教の自由が長年にわたり制限されている国として、サウジアラビア、エリトリア、北朝鮮、イランを挙げた。また、宗教上の冒とくを理由に死刑判決が出たパキスタンや、イスラム教徒以外の人々をイスラム法により裁いたアフガニスタンなどにも懸念を示した。

中国については、昨年1年間で事態が特に悪化したとの見方を示し、チベット仏教への締め付けが強化された結果、僧侶ら少なくとも12人が焼身自殺したと報告。さらに、新疆ウイグル自治区ではイスラム教徒が深刻な弾圧を受けていると批判した。

報告書はまた、欧州諸国に外国人の排斥運動や反ユダヤ教、反イスラム教の動きが広がっていると指摘した。さらに、ロシアやイラク、ナイジェリアでは、「対テロ戦」という名目で平和的な宗教活動が取り締まりの対象になったとしている。

報告書は一方で、歓迎すべき動きとして、トルコが過去に宗教団体から没収した資産の返還を容易にする決定をしたこと、リビア最高裁がイスラム教への冒とくを罰する法律を覆したことなどを挙げた。

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