日本、そしてアジア太平洋地域の「エネルギートランジション」の実現に向けて その土地に合わせたアプローチでパートナーと協働するシーメンス・エナジー

脱炭素化に向けてエネルギー構成を変化させていく「エネルギートランジション」が世界中の課題になっている。シーメンス・エナジーとローランド・ベルガーが共同で実施したレポートによると、アジア太平洋地域のエネルギートランジション準備度は25%に留まっており、日本においても取り組むべき課題が数多く存在していることが確認された。シーメンス・エナジー株式会社 代表取締役社長 兼 CEOである大築 康彦氏に、エネルギートランジションを実現するうえでの課題や、それに向けた同社の取り組みを聞く。

再生可能エネルギーに注力するシーメンス・エナジー

最初にシーメンス・エナジーについてご紹介ください。

世界有数のテクノロジー企業であるシーメンスは、医療機器、鉄道、ファクトリーオートメーション、電気の発電・送電など多岐にわたる事業を行っていました。2015年から意思決定の迅速化を図るため各事業の分社化を進め、2020年9月にエネルギー関連事業を手がける「Siemens Energy AG」として上場を果たしました。日本法人はシーメンス・エナジー株式会社として、2020年6月に発足しています。

主力事業は、天然ガスや石油の採掘・輸送技術、火力発電の技術、送電技術などですが、近年では、カーボンニュートラルに向け、水素・アンモニア・eフューエル製造技術やエネルギー貯蔵技術などの新しい技術や製品の開発にも力を入れています。また、風力やバイオマス、太陽光などの再生可能エネルギー分野でも活動を展開しており、電気を基盤とするエネルギー製品のサプライヤーとして、総合的なソリューションの提供を行っています。

日本においても、さまざまな取り組みを展開しています。再生可能エネルギー分野に特化してお話をしますと、まずは、木質バイオマス発電では、累計1ギガワットを超えるタービン発電機を納入しております。また、陸上風力では、年間数百メガワット近くの設備の建設を進めています。加えて、洋上風力についても、国のオークションが始まったことを受けて展開を進めており、石狩湾新港洋上風力発電プロジェクトに参画しております。

eFuel製造プラント“Haru Oni Project”
eFuel製造プラント“Haru Oni Project”
産業用コジェネレーションシステム
産業用コジェネレーションシステム
水素製造用水電解装置
水素製造用水電解装置
電力送電システム
電力送電システム

クリアすべき課題も多いが、同時にチャンスでもある

日本のエネルギー産業の現状や課題についてどのようにお考えですか。

日本はエネルギーの約9割を輸入に依存しています。また、国内においては原子力発電が進まず、火力発電、特に天然ガスや石炭への依存が続いています。日本政府は「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言していますが、その実現への道筋には厳しいものがあります。

カーボンニュートラル実現のためには、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの開発が不可欠ですが、特に日本が世界第6位の排他的経済水域を持っていることを考えると洋上風力の利用が鍵となると考えています。ただ、発電の拠点は電力需要の多い都市部から遠いため、送電インフラの整備も重要な課題となります。

また、国内で産み出す再生可能エネルギーだけで日本の需要を満たすのは困難なため、カーボンニュートラルなエネルギーの輸入も不可欠です。その際の輸入形態、例えばアンモニアや水素などの選択や、それに関連するサプライチェーンの構築もポイントとなります。

このように課題は多いものの、日本にはエネルギー分野で高い技術を持つ企業が多く存在します。それらの企業が連携し2050年までのロードマップを適切に作成すれば、他の国にとっても良いモデルとなるでしょう。そしてそれは、世界にとっての大きな貢献にもなります。日本のカーボンニュートラルへの挑戦は、同時に大きなチャンスでもあると考えており、弊社としても是非お手伝いをさせて頂きたいと考えております。

今後2~3年で動きが期待される日本のエネルギートランジション

アジア太平洋地域では、どの程度エネルギートランジションが進んでいるのですか。

シーメンス・エナジーは、コンサルティングファームのローランド・ベルガーと協力して、世界中の 2,000人を超えるエネルギー産業の専門家から集めた、主要なエネルギー優先事項の進捗状況に関するレポートを作成しました。その結果、アジア太平洋地域のエネルギートランジション準備度指数(ETRI)は25%で、まだやるべきことがたくさんあることが示されています。

アジア太平洋地域には異なる経済状況の国が存在し、各国の状況は大きく異なっています。例えば、東南アジアの国々は経済が成長し人口が増加しているため、電力需要が急増しています。これに対応することが最優先課題となっており、カーボンニュートラルは次のステップとして捉えられています。一方、日本や韓国など経済成長が落ち着いている国では、どのようにカーボンニュートラルを進めるかが課題の中心です。さらに、アジア各国でも天然資源の埋蔵量も異なります。そのため、一律の対応は難しく、各国に合わせたカーボンニュートラルへのアプローチが必要だと考えています。

日本のエネルギートランジションの取り組みはどのような状況ですか。

これまで日本のお客様は、「未来を予見することが難しく、カーボンニュートラルへの投資判断をするのが難しい」と感じているようでしたが、最近はコロナ禍も落ち着きつつあり、状況が変わってきています。国の方針、アンモニア・水素のサプライチェーンに関する方針など、明確な方向性も見えてきています。この流れを受け、これからの2~3年で大きな動きが期待されています。多くの企業が2030年をターゲットとしたCO2削減の中間目標を設定しているため、2025年までには行動を起こさなければならないと考えているでしょう。

再生可能エネルギーやカーボンニュートラル製品は、化石燃料に比べてコストがかかる、まず大企業が取り組むことが予想されます。しかし、1社だけの取り組みでは解決できないサプライチェーンに関する問題もあるため、小規模な事業者でも無視できない課題となっています。

新しいエネルギーの導入、特にグリーン水素やブルー水素、グリーンアンモニアなどに関しては、十分なボリュームを確保することがコスト低減の鍵となります。多くの企業が協力し合い、共同購入や共有利用を通じてボリュームを確保することが、コスト低減につながります。新しいエネルギーのサプライチェーンの構築には、さまざまな企業間の協力やリスク共有が不可欠であり、どの産業においても共同で取り組まないとネットゼロは達成できないと考えています。

各社の省エネ技術と連携し、カーボンニュートラル達成に貢献

シーメンス・エナジーの、日本における具体的な取り組みをご紹介ください。

現在、固定価格買取(FIT)制度の下で、風力やバイオマスといった再生可能エネルギーの発電設備を構築しています。洋上風力発電に関して私たちは、グローバルで50%以上のマーケットシェアを持っており、その技術を日本に持ち込んで、低コストの電気生成に貢献したいと考えています。

大築 康彦氏

また、水素製造の展開を進めており、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の補助金を活用し、山梨県に水電解装置を設置するプロジェクトを推進しています。この装置の中には、東レの技術が取り入れられており、共同で技術開発を進めています。このほか、三菱電機とは、地球温暖化ガスを排出しない遮断機の技術開発を共同で行っています。

日本の企業は省エネ技術に優れています。この技術を生かして無駄に捨てられているエネルギーを利用する、例えば夏のビルの上で放出されるエアコンの熱などを再利用する仕組みを構築するといったことに継続的に取り組んでいきたいと思っています。省エネ技術を持つ企業とのパートナーシップのもと、新しい仕組みを作っていきたいと考えています。

最後に、今後の目標をお聞かせください。

シーメンス・エナジーは、環境に関する厳しい基準のある欧州で培ったノウハウがあります。これを、省エネ技術に優れた日本の企業と協働することで、日本やアジアに合ったものに変え、エネルギートランジションを進展させることができます。また、私たちが持っているノウハウは、カーボンニュートラルを目指す個々の企業にとってもお役に立ちます。ぜひシーメンス・エナジーとともに、2050年のカーボンニュートラル達成を目指していきましょう。

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