自警団とギャングが衝突 ハイチ首都

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ハイチの首都ポルトープランスの道路/Evelio Contreras/CNN via CNN Newsource

ハイチの首都ポルトープランスの道路/Evelio Contreras/CNN via CNN Newsource

ポルトープランス(CNN) カリブ海の島国ハイチの首都ポルトープランスにある国際空港の前を通る広い道路は最近、世界滅亡後のような静けさに包まれている。かつては車や人でにぎわっていた場所は、くすぶるごみの山から煙が立ち上り、苦いにおいが空気中に漂っているだけだ。

近くに警察の装甲車両が止まり、数少ない見張り役の警察官は目出し帽で顔を覆っている。この通りは、まるで災害後のように、ほとんど放棄されたように見える。ポルトープランスに住む人々が誰よりもよく知る経験だ。しかし、今回は街を離れるという選択肢はない。空港はギャングに包囲され、閉鎖を余儀なくされている。

ギャングの集団は今月に入り、空港や警察署、政府庁舎、刑務所など、ハイチの国家として最後に残ったものに対して、かつてない連携で攻撃を行っている。長年にわたるギャングの支配と民衆の不安が頂点に達し、ギャングによる攻撃によって、アンリ首相は先週、辞任に追い込まれた。驚くべき降伏ではあったが、それでも平穏を取り戻すには無駄だったことが判明した。

ポルトープランスのギャングは依然として市内への食料や燃料、水の供給を妨げている。おそらく国家として最後の機能を果たしている国家警察は市内を1区画ずつ取り戻そうと戦っている。集中的な市街戦が、人間の基本的な絆をそぎ落とすにつれて、街の命そのものが衰えつつあるように見える。

企業や学校は閉鎖されたままで、社会基盤にほころびが生じつつある。多くの住民は家を出ることを恐れ、孤立している。自警主義に向かうものもいる。恐怖や不信、怒りが蔓延(まんえん)し、死は誰の心にも存在している。

ポルトープランスのある地区では18日、群衆が付近のギャングに所属しているとして男性を取り押さえた。男性は墓地に向かって歩かされた後、殺害され、遺体は路上で燃やされたという。地元社会の情報筋がCNNに語った。

CNNが確認した映像では、シャッターが閉まった店舗の前の道路で煙を上げる遺体が捉えられ、黒くて濃いすすが一面に広がっていた。地元の治安関係の情報筋によれば、住民によって殺害された犯罪の容疑者数百人分の遺体が火によって処理されたという。

ギャングは長年にわたり、ポルトープランスの住民を悩ませてきた。その勢力は近年劇的に拡大し、国連の推計では、現在街の80%がギャングの支配下にある。自分たちの街が小さくなっていくのを目の当たりにして、多くのハイチ人が「ブワ・カレ」として知られる自警団運動を組織している。

こうした運動では、地域社会が防衛のための委員会を結成し、要塞(ようさい)や監視システム、検問所、パトロールさえ共有するようになった。

しかし、自衛と暴徒の正義の境界線は簡単に越えられる。国連の2023年10月の報告書によれば、自警団はギャングへの所属や「一般的な犯罪」の嫌疑をかけられた数百人の人々にリンチを行ってきた。

自警団員のひとりは教会の隣にある車で満杯の敷地でCNNの取材に応じた。安全上の懸念から匿名で語った団員が所属する自警団は、地域を支配下に置こうとするギャングの試みを繰り返し撃退したという。

自警団員によれば、大手企業がある地域を占領し、支配下にあるうちに金の支払いを強制するというのがギャングのやり方だという。

「我々は常に脅迫を受けている。ギャングは我々を攻撃して、近隣を破壊するという。そのため、我々は通りを封鎖し、警察が捜査を行う。車両の捜索に民間人は関与しない」

情報筋によれば、こうした自警団に拘束された人々は、ギャングのスパイだと非難されることが多い。

情報筋によれば、ギャングはバイクに乗ったスパイを送り込み、道路にバリケードがあるかや何人がバリケードにいるのかを確認させるという。自警団は疑わしい人物がいた場合、事情聴取を行ったり携帯電話を確認したりする。ギャングからのメッセージがあれば、自警団はこの人物を拘束する。

情報筋は「これは戦争ではない」と強調し、そうした地区は自衛をしているだけだとしながらも、これらに司法的な手続きが存在していないことを認めた。

車でわずか5分の場所にある別のコミュニティーは、さらに過酷な状況のなかで必死に団結しようとしている。そこは暴力や放火によって家を追われた何万人もの市民が集まっている、市内に数十カ所ある難民キャンプのひとつだ。

マリー・モーリスさん(56)はギャングの縄張りがどんどん近づいてくるのを目の当たりにしていた。2月29日、ギャングの襲撃が迫っているとの警告がもたらされると、モーリスさんは時間を無駄にしなかった。モーリスさんは全ての荷物をあとに残し、避難所となっている公立学校まで徒歩で1時間近くをかけて避難した。

それから約3週間、避難所の子どもたちは捨てられたホイルやプラスチックで作ったたこを揚げ、空き缶で作ったおもちゃの車を運転して、運転席にはボトルのキャップを置き、乗客として小石を乗せている。

大人たちは正常であるかのように振る舞うものの、虚無感を抱いている。大人たちは地元の警察と連携して支援団体に食料や水を運ぶよう求めるリーダーを選出したものの、街全体で道路が封鎖されているため、実際には支援はほとんど届いていない。

モーリスさんは、混雑した空間の片隅にある家族の場所を清潔に保とうとし、買い出しに20分かかる水で床をふく。しかし、モーリスさんの一家は誰も十分な食事が取れず、料理をする空間さえない。モーリスさんは、キャンディー1個でも食事に数えると語った。

難民キャンプの住民の一部は、日々の生存の難しさだけでなく、自分たちが歓迎されなくなっていることや、近隣住民との関係が悪化していることを自覚していると語った。部外者の流入がギャングの注目を引くことを恐れ、避難民の移動を懸念する地元住民との衝突も起きている。

国際移住機関(IOM)は資源の減少と暴力の激化による影響を予測しており、ハイチでの不信感の雰囲気が悪化することで、伝統的なセーフティーネットがほころび、人々が行き場を失うと繰り返し警告している。

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