ANALYSIS

プーチン氏の次の標的か、モルドバが恐れる理由

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モルドバでは1月、ウクライナによって迎撃されたロシアのミサイルによって複数の家屋が損傷した/Moldova Ministry of Internal Affairs

モルドバでは1月、ウクライナによって迎撃されたロシアのミサイルによって複数の家屋が損傷した/Moldova Ministry of Internal Affairs

グロザ氏は「以前もそうだった。ロシアがプロパガンダを流し、モルドバの情報空間を利用しようとするのを何度も見てきた」と述べた。

ポーランドのモラビエツキ首相は19日、CBSに「モルドバにはロシア軍やロシア軍兵士の活動の痕跡が数多く残されている。この国は非常に脆弱(ぜいじゃく)だ。我々の助けが必要だ」と語った。

モルドバにロシアの拠点がある理由

モルドバにおけるロシアの関心の中心にあるのがトランスニストリアだ。モルドバ東部に細長く伸びる地域には、数十年もロシア軍が駐留している。

冷戦の終盤、ドニエストル川東岸に延びる1300平方マイル(約3300平方キロ)の飛び地はロシアの軍事拠点だった。ソビエト連邦が崩壊してからは、独立国家かルーマニアとの併合の道を模索していたモルドバに対抗し、1990年にソビエト社会主義共和国のひとつとして独立を宣言した。

翌年モルドバが独立を果たすと、ロシアは早速「平和維持軍」としてトランスニストリアに介入し、部隊を送り込んで現地の親ロシア派勢力を支援した。

その後モルドバ軍との戦いが続いたが、92年に歩み寄りのないまま紛争は終結。国際社会はもちろん、ロシアもトランスニストリアを国家として承認しなかったものの、モルドバ軍はこの地域を事実上分離したままにした。そうした行き詰まりの結果、実質的にモルドバ政府は今日までこの地域の支配権を持っていないため、推計50万人の住民はどっちつかずの状態となっている。

モルドバが争点となる理由

モルドバは東西を隔てる分岐点だ。政府や国民の大半はEUとの関係強化を望んでおり、昨年にはEU加盟候補国の地位も獲得した。だが国内に抱える分離派の親ロシアの感情はますます高まりを見せている。

この1年、ロシアのウクライナ侵攻の影で、モルドバも一触即発の状態だった。今月を含め、ロシアのミサイルは度々モルドバ領空を通過している。

昨年4月にはトランスニストリアで爆発が相次ぎ、プーチン氏がこの地域も戦争にまきこむつもりではないかとの懸念が高まった。

その後ロシアの進軍が滞ったことで脅威は薄れたが、モルドバ当局者は、プーチン氏の次の標的は自分たちかもしれないと西側諸国に警告を発している。

モルドバの安全保障担当者は先月、ロシアが年内にもモルドバ東部で新たな攻撃を行う危険性が「非常に高い」と警告した。モルドバは北大西洋条約機構(NATO)に加盟していないため、余計にプーチン氏に狙われやすくなっている。

仮にロシアが今春ウクライナ南部を中心に攻撃を仕掛けた場合、再びオデーサに進軍してトランスニストリアとつながろうと試みるかもしれない。そうなれば、実質的にウクライナ南部を横断する陸の回廊が生まれることになり、NATOの領域にまた一歩近づくことになる。

本稿はCNNのロブ・ピチェタ記者の分析記事です。

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