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トルコのNATO拡大阻止、裏目に出る可能性 プーチン氏がプロパガンダに利用も

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握手をかわすトルコのエルドアン大統領(左)とロシアのプーチン大統領=2022年10月/Murat Cetinmuhurdar/Turkish Presidential Press Office/Reuters

握手をかわすトルコのエルドアン大統領(左)とロシアのプーチン大統領=2022年10月/Murat Cetinmuhurdar/Turkish Presidential Press Office/Reuters

(CNN) 昨年5月にスウェーデンとフィンランドが北大西洋条約機構(NATO)加盟の意向を宣言した時、多くの人々がこれをロシアに盾突く動きととらえ、欧州が考え方を転換した証拠だと考えた。それまで両国はロシア政府を挑発しないようNATO非加盟の方針を貫いてきた。ウクライナの戦争がその流れを変えた。

フィンランドとスウェーデン、そして大多数のNATO加盟国が、7月11日に予定されているNATO首脳会談で、両国が正式に加盟することを望んでいる。しかし、実現には非常に大きな障害が立ちふさがっている。加盟申請に対して、トルコからまだ正式な支持が得られていないのだ。

加盟の動きを阻んでいるのはトルコだけではない。ハンガリーでも北欧2国の加盟申請はいまだ批准されておらず、事態はさらに泥沼化している。だが目下のところ、トルコを味方につけることが最優先だとみられている。

NATO支持派には残念なことに、西側当局者の間ではトルコの態度変更に悲観的な見方が強まっている。

表向きには、トルコのエルドアン大統領は安全保障を理由に、スウェーデンとフィンランドの加盟に反対している。トルコ側の主張は、両国、特にスウェーデンが非合法武装組織「クルディスタン労働者党(PKK)」のメンバーをかくまっているというものだ。PKKはトルコ、スウェーデン、米国、欧州でテロ組織に指定されている。エルドアン氏はこれらメンバーの身柄引き渡しを望んでいるが、スウェーデンは拒否している。

トルコが7月の首脳会談前に態度を変えるかどうか、NATO外交筋の間では意見が割れている。いずれの側でも焦点になっているのが、今年のトルコ大統領選だ。エルドアン氏にとっては近年最大の政治的な脅威とみられている。

中東研究所のトルコ部門を担当するグーノル・トール氏は「エルドアン氏が築き上げてきた、トルコ国民のために結果を出す実力者というイメージは砕け散った。現在トルコでは、西側やクルド勢力に対する反感が膨れ上がっている。エルドアン氏にしてみれば、大々的にアピールする格好の話題だ。立場を180度翻せば、弱腰と映ってしまうだけだろう」と語った。

トール氏の考えでは、エルドアン氏にはロシアのプーチン大統領を怒らせたくない理由が他にもあるという。

「シリアでの活動やロシアとの軍事協力、その他の敵対行為が理由で他国から制裁を科されてからというもの、トルコにとってロシアは経済的な命綱だ」とトール氏は説明する。「ロシアの資金がなかったら、エルドアン氏は賃金の引き上げも学生への財政援助も成し遂げられなかっただろう。現在は地震からの大規模な再建を約束しているが、エルドアン氏にとってロシアは今もなお魅力的な友好国だ」

西側当局者と同じくトール氏も、スウェーデンとフィンランドがテロリストをかくまっているというトルコの主張について、エルドアン氏にとって、政治的に都合の悪い時期にNATOの問題に関与しないための口実になっているとの見方を示す。

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