国連気候変動会議COP27が開幕、4つのポイント

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COP27はエジプトの保養地シャルムエルシェイクで開かれる/Mohamed el-Shahed/AFP/Getty Images

COP27はエジプトの保養地シャルムエルシェイクで開かれる/Mohamed el-Shahed/AFP/Getty Images

(CNN) エジプト・シナイ半島の保養地シャルムエルシェイクで6日、国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が開幕した。研究者や支援者、そして国連自身が警告しているのは、世界がこのまま進めば、世界の温暖化を止め気候変動の最悪の結果を防ぐという目標を達成できない未来だ。

COP27には200近い国や地域の代表が集まり、クリーンエネルギーに関する野心を高める議論が行われる。世界の平均気温は産業革命時から既に1.2度上昇している。

各国は最も汚い化石燃料と言われる石炭の利用中止について交渉する。石炭はウクライナでの戦争勃発後、一部の国で利用が増えている。各国はまた、破滅的な天災被害を受ける世界の最貧国の復興支援資金を集めるシステムについても話し合う。

最近では、1.5度を超える気温上昇を防ぐエネルギーの全面的見直しを行う時間がなくなりつつあるとの報告が相次いでいる。科学者は地球の気温上昇を1.5度以内の水準に収めるように警告してきた。

国連などの報告によると、昨年、炭素やメタンの排出量が記録的水準となり、これまで各国が提出した排出削減計画では不十分であることが示された。現在の約束通りに進めば、気温は2100年までに2.1~2.9度上昇する見通しだ。

1.5度の上昇を避けるには、世界は2030年までに化石燃料からの排出量を半分近く削減する必要がある。依然として石油や天然ガス、石炭に大きく依存する経済にとって、これは困難な見通しとなる。

米国のケリー気候変動問題担当大統領特使は先月、記者団に対し「怠慢が許される国はない」と語り、各国が団結して前のめりの姿勢で臨まなければ、増加する酷暑や山火事、洪水など「今起きている事象がさらに悪化すると科学者は言っている」と述べた。

以下、COP27で最も大きな争点となる問題を解説する。

「損失と被害」を巡る闘い

パキスタンでの洪水から急ごしらえのキャンプに避難する人々=8月31日、バロチスタン州ジャファラバード/Fida Hussain/AFP/Getty Images
パキスタンでの洪水から急ごしらえのキャンプに避難する人々=8月31日、バロチスタン州ジャファラバード/Fida Hussain/AFP/Getty Images

発展途上国と先進国の間で近年議論が続いているのが「損失と被害」基金のコンセプトだ。これは甚大な温室効果ガスの排出で最大級の損害を発生させた国が、そうした気候災害から被害を受けた貧しい国に費用を支払うべきだという考え方だ。

米国を含む先進国は、損害について非難を受けるべき国として見られたり、他国に法的な責任を負う存在として扱われるのを嫌うため、これは厄介な問題となっている。ケリー氏もこの問題には慎重な姿勢を示し、米国としては正式な話し合いを持つことに賛成しているものの、合意できる解決策については何ら示していない。

そんな中、小さな島国やグローバル・サウス(主に南半球の発展途上国)は激しい洪水や嵐、記録的熱波などの気候危機の影響を受けている。

今夏パキスタンで発生し1500人以上の死者が出た洪水は、同国の交渉官が指摘する一例となるだろう。ナイジェリアで起きたこの10年で最悪の洪水では、9月以降200万人以上に影響が及び、水系感染症の発生に重大な懸念が示されている。

緊迫した米中関係

米国のケリー気候変動問題担当大統領特使(右)と中国の習近平国家主席/Getty Images/AP
米国のケリー気候変動問題担当大統領特使(右)と中国の習近平国家主席/Getty Images/AP

COP27では、既に毀損(きそん)している米中関係が修復されるかどうかも注目ポイントとなる。昨年は米中両国が気候変動問題で協力すると発表し、世界を驚かせた。

だがそうした協力関係は既に崩れている。中国は今夏、ペロシ米下院議長が台湾を訪問したことに対する報復の一部として、気候に関する協議を停止すると発表した。

ケリー氏は最近、米中間の協議は依然止まった状態で、習近平(シーチンピン)国家主席がゴーサインを出さない限り状況は変わらないとの見方を示した。米国など各国が注目するのは、中国が昨年約束したメタン排出量引き下げの計画を提出するかどうか、また排出の約束を改定するかどうかだ。

米中は世界の2大排出国であり、他国の行動を促す意味でも両国の協力は重要となる。

十分な資金が確保できるか

前述の損失と被害の基金とは別に、いわゆる「グローバル気候ファイナンス」と呼ばれる包括的な問題も存在する。これは途上国が経済発展のために化石燃料を利用せず、クリーンなエネルギーに移行するのを支援するため、裕福な国々が資金を出す仕組みを指す。

09年に表明されたこの約束では、年間1000億ドルの供給を予定していたが、現在でもこの水準には到達していない。米国や英国、カナダなど先進国の一部は、その割り当て量に達していない。

バイデン米大統領は米国が24年までに110億ドルを出すと約束した。だが、最終的には議会の承認が必要な資金となるため、もし共和党が中間選挙で議会の多数派になれば実現しそうにない。

このままでは本当に目標未達に

石炭火力発電所前で石炭を運ぶ船=2021年11月、湖北省漢川市/Getty Images
石炭火力発電所前で石炭を運ぶ船=2021年11月、湖北省漢川市/Getty Images

COP27は化石燃料からの排出で各国に圧力を掛け、気候危機で新たな野心をかき立てる目的で開かれている。だが、各種の報告から示されているのは、世界が1.5度以内の気温上昇を実現するペースにはないという現状だ。

国連の報告書によると、各国の最新の約束に基づけば、気温は2.1~2.9度上昇する結果となる。世界の平均気温は産業革命時から既に1.2度上昇している。

世界気象機関(WMO)によると、昨年は二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素の3つの主要な温室効果ガスすべてが記録的な水準となった。

一方、明るいニュースもある。国際エネルギー機関(IEA)の最近の報告によると、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の採用が増えていて、化石燃料からの排出増を相殺するのを助けている。

だが、さまざまな報告から描き出される全体像は、さらに多くのクリーンエネルギーが、いち早く活用される必要があるという状況だ。国連環境計画(UNEP)のアンダーセン事務局長は、わずかな気温上昇でも厳しい結果をもたらすことになると警告する。

時間は別の面でも刻一刻と進んでいる。来年ドバイで開かれるCOP28では、パリ協定で定めた目標が達成可能な道のりにあるかを検証するため、各国が正式な評価を実施する予定になっている。

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