トラス英首相の後任は誰? 主な候補者を見る

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左からリシ・スナク氏、ボリス・ジョンソン氏、ペニー・モーダント氏、グラント・シャップス氏/Getty Images, Shutterstock

左からリシ・スナク氏、ボリス・ジョンソン氏、ペニー・モーダント氏、グラント・シャップス氏/Getty Images, Shutterstock

ロンドン(CNN) 英国のトラス首相は20日に首相官邸前で行った辞任演説で、新たな指導者選びが1週間以内に行われると明らかにした。

このプロセスを仕切る保守党のグラハム・ブレーディー氏によると、トラス氏の後任候補は保守党の下院議員少なくとも100人の推薦が必要となる。

複数の候補がこの基準を満たした場合、保守党員によるオンライン投票が行われる。新首相は28日に発表される見通しだ。

保守党所属の首相はわずか6年間で5人目、いまの議会会期中では3人目となる。だが、次の指導者になるのは一体誰だろうか。以下に主な候補者をまとめた。

リシ・スナク氏

リシ・スナク氏/Peter Nicholls/Reuters
リシ・スナク氏/Peter Nicholls/Reuters

スナク氏は今夏の党首選でトラス氏の経済政策について予想した内容が現実のものとなり、政府崩壊の予言者のような存在となった。

元財務相のスナク氏は党首選で、財源の裏付けのないトラス氏の減税策はポンド売りや債券市場のパニック、国際通貨基金(IMF)からの懸念を招くと警告した。だが、そのスナク氏も自らの主張の正しさが証明されるスピードには驚いただろう。

スナク氏は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)中に英国を先導した人物で、経済危機に対処した経験を持つ。

前回の党首選では最多の議員票を獲得。今回の新基準を大きく上回る137票だった。最終的にはトラス氏が党員投票で勝利し、スナク氏は得票率43%と僅差(きんさ)で敗れた。

下院議員からの信頼が厚いこと、同氏の予想の正しさが証明されたことを踏まえると、英国の次のかじ取り役として最有力なのはスナク氏かもしれない。

ペニー・モーダント氏

ペニー・モーダント氏/HENRY NICHOLLS/REUTERS
ペニー・モーダント氏/HENRY NICHOLLS/REUTERS

モーダント下院院内総務は今週の議会審議中、席を外していたトラス氏に代わって発言した。首相就任に備えてリハーサルを行っていたのかもしれない。

「首相は机の下に隠れているわけではない」。そう主張したモーダント氏は、首相に助け船を出すとともに、自らを売り込んでいるようにも見えた。

モーダント氏は先の党首選で3位に終わり、僅差で党員投票に進むことができなかった。この時の投票では105人の議員票を獲得しており、モーダント氏も今回の新たな基準クリアできるとみられている。

モーダント氏は党員投票で多くの支持を集めることが予想されるが、その理由の一つは軍関係の経歴だ。モーダント氏は英海軍の予備役で、国防相を短期間務めたこともある。

スナク氏と同様、党の穏健派に属する。議員の間では2人が「ドリームチーム」を結成すればとの声も出ているが、まだ実現はしていない。その場合でも、どちらが首相職を譲って財務相を受け入れるのかは定かではない。

ケミ・ベイデノック氏

ベイデノック氏は今夏の党首選で獲得した議員票が59票にとどまり、4位に終わった。しかし世論調査では常に、保守党の草の根党員の間での高い人気が示されていた。

候補者の中で比較的若手のベイデノック氏に対し、保守党の重鎮マイケル・ゴーブ氏はすぐさま支持を表明。ベイデノック氏を党の「並外れた才能」と称賛した。

ベイデノック氏は保守党内の右派に属する。以前党首選に出馬した際には、気候変動関連の目標について費用が高くつきすぎるとの考えを示唆した。

ボリス・ジョンソン氏

ジョンソン氏に近い複数の関係者からは、ジョンソン氏が国に安定をもたらす統一候補になる可能性を指摘する声が上がっている。わずか数カ月前に相次ぐスキャンダルで首相続投が不可能になり、不名誉な辞任に追い込まれたにもかかわらずだ。

ジョンソン氏の首相再登板をどうやって正当化するのかとのCNNの質問に対し、2019年の党首選でジョンソン氏を支持したある議員は、「社会主義者は我が国の経済を壊滅させる。もしあなたがそれを理解していないなら、我が国の将来が本当に心配だ」と語った。

19年にジョンソン氏を支持した別の議員は、保守党議員と保守党員の双方から高い支持を得られる候補はジョンソン氏しかいないと語った。

ジョンソン氏は官邸前で行った首相として最後の演説で、いかにも同氏らしく古代史に言及。古代ローマの政治家キンキナトゥスのように「自分の畑を耕しに戻る」と述べ、議会の後方の席で静かな生活を送る考えを示唆した。だが、キンキナトゥスは畑を耕して晩年まで過ごしたわけではない。彼は2期目を送るためにローマに呼び戻されたのである。この時は独裁者として。

新たに設けられた100票の基準をめぐり、一部ではジョンソン氏の再登板を不可能にするためではないかとの見方も出ている。ジョンソン氏は党員投票で極めて良い結果を残すだろうが、議員票100票という高いハードルが設けられたことで、同氏が党員投票に進む見込みは少なくなった。

グラント・シャップス氏

グラント・シャップス氏/Phil Noble/Reuters
グラント・シャップス氏/Phil Noble/Reuters

トラス氏がシャップス氏を内相に昇格させたのは、トラス政権末期の混乱ぶりを物語る兆候だった。

シャップス氏はジョンソン政権で運輸相を務めた。前回の党首選ではジョンソン氏の後任に名乗り上げたものの、次ラウンド進出に必要な議員票20票を確保できず、わずか3日後に出馬を取り上げた。

今回の新たな基準はシャップス氏にとって高すぎるとみられるが、トラス政権の発足当初から批判を展開していたため、前回よりは議員票の上積みがあるかもしれない。

他の候補者

この他の候補としては、19日夜に内相を辞任したスエラ・ブラバーマン氏、前回の党首選で5位に終わったトム・トゥゲンドハット氏、ベン・ウォレス国防相がいる。テリーザ・メイ元首相の名前も取り沙汰されている。

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