「娘は治安当局に殺された」、遺体で見つかった１６歳少女の母が訴え　イラン

アブダビ（ＣＮＮ） イランの首都テヘランで抗議デモに参加した後、遺体で見つかったニカ・シャクラミさん（１６）について、娘は治安当局に殺害されたと母親が訴えている。

ニカさんの母、ナスリン・シャクラミさんはイランの独立系新聞エテマドとＢＢＣペルシャ語放送の取材に応じ、米国が資金を拠出する「ラジオ・ファルダ」を通じてビデオメッセージを発表した。

ナスリンさんは、ニカさんが建物の屋上から転落死したという当局の説明に反論。エテマドのインタビューの中で「娘が抗議デモに参加し、そこで殺されたことは明らか」と訴えた。エテマドは１１日、この内容をウェブサイトから削除した。

イランでは全土で反政府デモが続き、恣意（しい）的な拘束や集団処刑によって反対派が弾圧されていると非難する声が強まっている。

抗議デモに火が付いたのは、９月に道徳警察に拘束された２２歳のマフサ・アミニさんの死がきっかけだった。

イラン政府はニカさんについて、９月２１日に遺体で見つかったと発表。テヘラン市内の建物に入るニカさんと思われる姿が防犯カメラに映っていたと説明し、ニカさんはこの建物の屋上から転落して死亡したと断言した。

政府系のタスニム通信は、検視の結果、ニカさんの骨盤、頭部、手足に複数カ所の骨折が見つかったことから、検察が転落による負傷と断定したと伝えている。

検察は「捜査の結果、今回の事案は抗議デモとは無関係だったことがわかった。体に弾痕はなく、体の傷跡は転落によって死亡したことを表している」と言い添えた。

この事件に関連して、二カさんが入ったとされる建物で働いていた８人が逮捕されたとタスニム通信は伝えている。

しかし母のナスリンさんはそうした当局の発表に反論している。ラジオ・ファルダのビデオ声明の中でナスリンさんは、娘の遺体は頭部にしか外傷がなく、体は良好な状態だったと訴えた。

建物に入る姿が防犯カメラに映っていた少女もニカさんではなかったとナスリンさんは主張。「これがニカだとは誰も証明できない。影がカメラに映っていて、その少女はマスクをしているが、その映像に何が見えるのかはっきりしない。これがニカだとは信じない」とエテマドに語った。

ナスリンさんによると、ニカさんはテヘラン市内で抗議デモに参加した後、行方が分からなくなった。ナスリンさんは、ＳＮＳに掲載された抗議デモの映像にニカさんが映っていることも確認した。

ニカさんが行方不明になってから９日後、ナスリンさんは警察から、遺体安置所にある娘の遺体の写真を見せられたという。

政府系メディアの取材を受けた親族は、ニカさんが転落死したとの見方を肯定しているが、そうした発言は当局に「強要」されたものだとナスリンさんは訴える。

国営イラン・イスラム共和国放送（ＩＲＩＢ）が５日に放送したニュースの中で、ニカさんのおばは、ニカさんが集合住宅の屋上から転落して死亡したと語っていた。

ニカさんのおじもＩＲＩＢのニュースの中で抗議デモを非難して、「公共財産を傷つける行動は一切支持しない」と語った。

しかしナスリンさんはＢＢＣペルシャ語放送とラジオ・ファルダの取材に対し、治安機関がおじとおばを逮捕して、虚偽の証言を強要したと話した。

ナスリンさんの兄弟も、発言すれば妻と４歳の息子を逮捕すると脅されたという。

「彼らは強い圧力をかけられて虚偽の証言をさせられ、それがテレビで放送されている。（治安部隊は）自分たちが罪を着せられないためにはどんなことでもする」とナスリンさんは話している。