線路上の「指揮所」、戦時下でも運行を続けるウクライナ鉄道の取り組み

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戦時下で重要インフラ支える、ウクライナ鉄道の取り組みに密着

ウクライナ・テルノピリ/リビウ(CNN) 長く黒いカーテンに閉ざされた薄暗い部屋に、くぐもった音が鳴り響く。旧ソ連時代の閉回路電話システムから、ウクライナ語で男性6人に向けてメッセージが響き渡る。6人のうち半数は軍服を思わせる緑色の服を着ているが、彼らは軍人ではない。ウクライナ鉄道の幹部だ。

ボタンやつまみが付いた一見時代遅れのシステムは、幹部らとウクライナ国内の全ての駅をつなぐ役割を担っている。ウクライナ鉄道によると、国内にある駅の数は1450程度。ロシアの侵攻後に携帯電話サービスが使用不能になって以降、この旧式のシステムは現場の状況把握のため1日2回開かれる会議に欠かせない存在になった。

ウクライナ西部のテルノピル駅付近で行われた会議はわずか10~15分で終わり、その後は再び移動する。同社の経営陣は、会議がロシア軍の主要標的になっているとの見方を示す。

ウクライナ鉄道のオレクサンドル・カムイシン最高経営責任者(CEO)(37)はCNNの取材に、「我々の戦略は捕まらないように素早く移動して、1カ所に長くとどまらないことだ」と説明した。ポニーテールと刈り上げを組み合わせた髪型の同氏は、さながら戦場の将官のように室内の注目を集める。1カ所に滞在する時間は長くても「数時間」だという。

侵攻開始から2週間あまり。世界最大規模を誇るウクライナの鉄道網は、生活必需品の輸送や、困窮した市民の避難に欠かせない生命線になった。

同鉄道は開戦以降、国内で210万人を超える乗客を輸送したほか、ポーランドに避難した約25万人を運んだ。前線に医薬品を届けたり、負傷者を病院に搬送したりする目的で改造された列車もある。

約23万1000人の従業員を管理する仕事は、これらの男性に託されている。ゼレンスキー大統領の掩ぺい壕を職場として使うことも提案されたがそれは断り、開戦以来、ほぼ絶え間なく動き続けてきた。同僚の様子を確認したり、ロシア軍の一歩先を行ったりするために国中を移動して回る。危険度の高い地域に踏み込むこともいとわない。

「我々の論理はごくシンプル。もしその駅で働いている従業員がいて、従業員にとって安全だと思うなら、我々もそこに行くべきだ」とカムイシン氏は語る。

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