パンデミックで貧富の差が拡大 世界不平等レポート

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歩道で横たわるホームレスの男性=5月3日、ブラジル・サンパウロ/Igor do Vale/Sipa USA/AP

歩道で横たわるホームレスの男性=5月3日、ブラジル・サンパウロ/Igor do Vale/Sipa USA/AP

ニューヨーク(CNN Business) 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)により、世界の富裕層と貧困層の差はますます拡大したことが、新たな報告書で明らかになった。

1995年から調査を続ける「世界不平等レポート」の最新版が、7日に公表された。

それによると、世界の富豪が保有する純資産の合計は昨年1年間で3.6兆ドル(約410兆円)増え、世界の全世帯が持つ資産の合計に占める割合は3.5%に上昇した。

一方でパンデミックにより、新たに約1億人が極度の貧困に追い込まれた。報告書が引用した世界銀行の推計によると、世界で極度の貧困に分類される人は今年、7億1100万人に達している。

先進諸国がパンデミックから国民を守るために実施した経済支援策がなければ、極度の貧困層はさらに拡大していたとみられる。

報告書をまとめた責任者のルカ・シャンセル氏は、「富裕国は政府の介入によって貧困層の大幅な増加を免れたが、貧困国ではそうはいかなかった」と指摘する。

報告書は、100人あまりの研究者らが4年以上かけて集めた世界のデータに基づいている。責任者のルカ・シャンセル氏以下、経済格差の専門家である米カリフォルニア大学バークレー校のエマニュエル・サエズ、ガブリエル・ズックマン両氏、パリ経済学院のトマ・ピケティ氏がまとめた。

世界の貧富の差は現在、欧米の帝国主義が全盛期を迎えていた20世紀初頭に近い状況とされる。シャンセル氏は、「富裕層がさらに富めば貧困層にも自然に富がこぼれ落ちる」という「トリクルダウン」説は成立せず、富裕層への減税が全体の繁栄にはつながっていないことが分かったと指摘した。

報告書ではこのほか今年のデータとして、世界人口のうち保有資産が上位10%に入る富豪が世界の富全体の76%を独占していること、中間層の40%が保有するのは世界の富の22%、下位50%は同2%にとどまることが明らかになった。

世界全体の所得に占める割合は、上位10%の富豪が52%に上り、下位50%はわずか8%だった。

95年から今年までの間に増えた世界の富のうち、38%を上位1%の大富豪が確保し、下位50%が手に入れたのは2%にすぎなかった。

貧富の差が特に大きいのは中南米で、上位10%が富の77%を握り、下位50%が保有するのはわずか1%だった。

これに対して格差が最も小さいのは欧州。上位10%が握る富は全体の58%で、下位50%が全体の4%を保有していた。

世界の国々の所得格差は80年以降、中国やインド、ブラジルなど新興諸国の平均所得が欧米のレベルに追い付くにつれて縮小傾向にある。

ただし中国やインドでは国内の格差が拡大し、これが世界の格差や貧困層の縮小に向けた動きの妨げになっている。

今回の報告では、男女間の所得格差も初めて取り上げられた。2015年から昨年までに女性が働いて得た所得のシェアは平均35%弱だが、旧ソ連諸国で特に大きく、サハラ以南のアフリカや中東では小さかった。

このペースでは、女性の所得が男性と並ぶまでに100年以上かかると、報告書は結論付けている。

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