著名科学者への暴行疑惑、宇宙遊泳成功に影 中国

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4日に行われた宇宙ステーション「天宮」での船外活動の様子/Jin Liwang/Xinhua/AP

4日に行われた宇宙ステーション「天宮」での船外活動の様子/Jin Liwang/Xinhua/AP

(CNN) 中国は4日、宇宙ステーション「天宮」での初の船外活動を行った。祝賀ムードに沸いた中国だが、国内では主要航空宇宙企業が大きく異なる理由で注目を集めていた。

国営の中国航天科技集団(CASC)への反発が巻き起こったきっかけは、子会社の共産党当局者が著名な宇宙科学者2人に暴行を加えた疑いがあるとの報道が浮上したことだった。被害者の1人は85歳の女性だった。

暴行が起きたとされるのは6月上旬だが、国営誌「中国新聞周刊」の報道により3日に広く注目が集まった。中国の指導者はかねて科学・技術革新を欧米との競争の「主戦場」とみなし、その重要性を繰り返し強調している。習近平(シーチンピン)国家主席自身、有力科学者を「国の宝、人民の誇り、国家の栄光」と称賛してきた。

しかし今回、科学者が良心に欠ける共産党当局者によって踏みにじられる(このケースでは文字通り踏みにじられたようだ)事件がいまだに発生し、当局者本人は何週間も処分されずにいたとみられることが発覚し、怒りと失望、恥ずかしさの入り混じった感情が噴出した。

同誌の報道によると、CASCの投資部門「中国航天国際控股有限公司」の党書記兼会長である張陶氏は、国際宇宙航行アカデミーの会員に推薦してほしいとの要求を断られ、科学者2人に暴行を加えた。

2人のうち呉美蓉氏(85)は脊椎(せきつい)骨折、王晉年氏(55)は肋骨(ろっこつ)骨折と全身の軟部組織損傷を負った。2人が1カ月後も入院したままだったのに対し、張氏は「通常通り出勤」していたという。

中国のSNSでは、事件が何週間も非公表になっていた理由や、張氏が怒りにまかせて暴行沙汰を起こしながら処分を受けていない理由を疑問視する声が多く上がった。

中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」では、ユーザーがCASCの公式アカウントに事件への説明を求める怒りのコメントを寄せた。関連ハッシュタグは1億3000万回以上も閲覧された。

反発が強まる中、CASCは4日午後にようやく短い声明を出し、張氏が「飲酒後」に暴行に及んだ事実を認めて停職処分を発表。暴行に至った経緯などの詳細には触れず、党が調査チームを派遣したこと、「調査結果に基づき厳正に対処する」方針であることを明らかにしただけだった。

この声明で人々の怒りが収まることはなかった。投稿の下には、CASCが事件1カ月後にようやく停職を決めた理由を問うコメントが付き、数万個の「いいね」が寄せられた。

数週間にわたる沈黙の背景には、7月1日の共産党創立100年を前に検閲が強化されていたという事情があった可能性が高い。

事件から1週間後、中国は宇宙飛行士3人を建設中の宇宙ステーションに送ることに成功。国営メディアや大勢の国民から祝福される節目の出来事となった。

習主席の下、党は徹底的な規律強化に乗り出し、数百万人の当局者を汚職や不正で処分してきた。だが、張氏による科学者への暴行疑惑は、党にとって不愉快な現実を浮き彫りにした。すなわち、一部の当局者はいまだ思いのままに権力を振るう資格があると思い込み、敬意や尊敬に欠ける姿勢で他人を扱っていること、もっと悪いことに、彼らに歯止めをかける術はないということだ。

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