ANALYSIS

人口増加が必要な中国、産児制限を撤廃しない理由は「新疆」か

中国で、人口動態上の危機を回避するため、夫婦1組につき子ども3人まで持つことを認めるとの方針が発表された/David Liu/Getty Images

中国で、人口動態上の危機を回避するため、夫婦1組につき子ども3人まで持つことを認めるとの方針が発表された/David Liu/Getty Images

香港(CNN) 中国は先月、人口動態上の危機を回避するため、夫婦1組につき子ども3人まで持つことを認めると発表したが、一部の批評家は、中国政府が産児制限を維持したことに疑問を抱いた。

その答えは、少数民族、特に新疆の少数民族に対する中国政府の態度に隠されているかもしれない。

中国政府は2017年以来、新疆の少数民族に対し家族計画政策を厳格に実施しており、政府の取り締まりの結果、2018年の新疆の出生率は前年から3分の1も減少した。また中国政府は、新疆でイスラム教徒が大半を占めるウイグル族に対しジェノサイド(集団虐殺)を行っていると非難されている。

中国政府は、ジェノサイドを強く否定し、ウイグル族の人口抑制策はあくまで国の標準的な産児制限政策の範囲内で実施していると主張する。

専門家らは、中国政府が夫婦が持てる子どもの数の上限撤廃に消極的なのにはいくつかの理由があると指摘するが、重要な要因のひとつとして、産児制限を撤廃すると、多くの子どもをもうける傾向がある少数民族が多く住む新疆やその他の地域で中国政府が実施している人口抑制策の正当化が非常に難しくなることが挙げられる。

人口減少傾向に逆行

中国の出生率は、40年以上前に、貧困の緩和や人口急増の抑制のために夫婦が持てる子どもの数を1人に制限した「一人っ子政策」を導入して以来急速に低下している。

この一人っ子政策により、中国は国が発展する中で出生率の抑制に成功したが、近年、中国当局は、将来、経済成長の維持に必要な若年労働者が不足することを懸念するようになった。急速に高齢化する労働者たちは、将来、約束された年金の受給を期待しており、若年労働者不足解消への圧力は増すばかりだ。

人口動態上の危機に直面した中国政府は、2016年に一人っ子政策を緩和し、子どもを2人まで持つことを認めたが、漢族の中産階級に属する多くの夫婦は、特に都市部での高額な子育て費用を理由に、2人以上の子どもを持つことに消極的だった。2020年の出生率は前年から約15%下落した。

しかし、新生児の数は中国全体では減少したが、北西部の新疆の公式の出生率は比較的高水準を維持した。オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の報告書によると、1991年から2017年までの間、新疆の出生率は中国の他の地域を大幅に上回った。

研究者らによると、新疆のウイグル族は過去数十年間、伝統的に子どもの数が多く、中には子どもが9人や10人もいる家庭もあるという。

ウイグル族を含む少数民族は、一人っ子政策が実施されている間も子どもを3人まで持つことが許されていた。その理由について中国当局は、少数民族の大家族という文化的伝統を尊重したとしている。

ウイグル族の中には子どもを3人以上持つ者もいたが、多くの場合容認されていた。

急速な減少

中国政府は2017年に新疆で取り締まりを開始し、ウイグル族数百万人が大規模な収容施設に送られたとされているが、その際、家族計画政策の強化も同時に実施された。

その結果、2017年から2018年にかけて新疆での出生率(人口1000人当たりの出生数)は15.8から10.7へと約3分の1も減少した。

中国政府は、2020年9月にCNNに送ったファクスの中で、この出生率の減少は「家族計画政策の包括的な実施」によるものだと述べた。

新疆における人権問題を研究するエイドリアン・ゼンツ氏の報告書に引用された中国政府の公式文書によると、中国政府が出生率の引き下げに躍起になっていた時、2018年に新疆で行われた不妊手術の件数は10万人当たり243件に急増した。この数字は、中国の他の地域の10万人当たり33件を大幅に上回る。

また、子宮内避妊具(IUD)の使用率も、中国全体では2016年から2018年にかけて減少したが、ゼンツ氏が引用した文書によると、新疆では同じ時期に10万人当たり963人に増加した。

新疆を離れたウイグル女性らによると、彼女たちは避妊や不妊手術を強要されたという。

ゼンツ氏は自身の報告書の中で、2017年に開始された中国政府の公式の政策指示を引用している。それによると、中国政府は行政当局者に対し「家族計画(政策)に違反する行為を厳しく攻撃する」よう要請したという。また同年以降、少数民族が暮らす地域では「産児制限違反を抑え込む特別な活動」が開始された。

トルコに逃れたあるウイグル族出身のある医師が2020年に語ったところによると、同医師が診察した、新疆を追われたウイグル族の女性300人中約80人が不妊手術を受けていたという。そして、その女性たちの多くは自分が不妊手術を受けていたことを知らなかった。

中国政府は、夫婦1組が持てる子どもの数を3人までに緩和する方針を発表した際にウイグル族を含む少数民族について言及しておらず、当局も避妊や不妊手術の強要疑惑を一貫して否定している。

中国国営メディアは、新疆のかつての高い出生率は宗教的過激主義が原因だとし、出生率の低下は女性の権利にとっての勝利と表現した。

専門家らも、子ども3人までという産児制限が少数民族のためにすぐに緩和される可能性は低いと見ている。

仕事と監視

新疆における出生率を今後も制御し続けたいというのが、中国政府が三人っ子政策を堅持する唯一の理由というわけではない。

専門家らは、中国政府は国の大規模な家族計画政策を監視するために雇っている数万人の新たな役割を積極的に探そうとはしないだろうと指摘する。

また産児制限を撤廃すると、中国政府は全国民を監視する多くの方法の1つを失うことになり、徹底的な国内監視を実施するための別の理由を探す必要に迫られる、との意見もある。

あるいは、やや緩和はしたものの、家族計画政策体制を中国政府がどうしても維持しなくてはならない極めて現実的な理由があるのかもしれない。

中国政府は将来、産児制限の再厳格化を迫られる可能性が出てくるかもしれない。

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