OPINION

ローマ教皇、同性婚を祝福せず 行き詰った寛容さ

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性的少数者への寛容さが話題に上るローマ教皇だが同性婚は祝福しないとする見解を承認/Franco Origlia/Getty Images Europe/Getty Images

性的少数者への寛容さが話題に上るローマ教皇だが同性婚は祝福しないとする見解を承認/Franco Origlia/Getty Images Europe/Getty Images

(CNN) カトリックの聖職者は病人を祝福する。生徒に教師、刑務所の受刑者も祝福する。新しくできたビルや車、果ては銃器や戦艦さえも祝福する。彼らが祝福できないのが、結婚した同性のカップルだ。ローマ教皇庁(バチカン)の新たな公式見解がそう述べている。

ハイディ・シュランプ氏
ハイディ・シュランプ氏

15日朝にバチカンから届いた知らせは、LGBTQ(性的少数者)のカトリック教徒にとって痛ましく、希望を失わせるものだった。彼らの家族や彼らを愛し、支援する人々にとっても同様だ。見解では続けて「罪」や、「客観的に整った」あるいは「無規律な」といった言葉を用い、LGBTQのカトリック教徒に言及したが、そこは特に辛辣(しんらつ)で残酷な箇所だった。

おそらくローマ教会は、世界中の親たちが口にする次のアドバイスを聞くべきだろう。「何もいいことが言えないなら、黙っていた方がまし」。

米世論調査機関のピュー・リサーチ・センターによると、米国のカトリック教徒の約61%は同性婚を認めている。米国内にあるLGBTQのカトリック教徒のコミュニティーは、今回の知らせに落胆と怒りを覚えたが、驚きはなかった。同性愛者のカトリック教徒のグループ「ニュー・ウェイズ・ミニストリー」は、バチカンの決定を「重要なもの」としつつ、「神はすでにそうした結びつきを祝福している」と指摘した。

バチカンの公式見解は、「同性愛の傾向がある」人々も祝福を受けることはできるが、性行為をしないと合意した場合に限るというもので、米国にいる大半のカトリック教徒の期待には沿わない内容だ。

「これは昔から利用されてきた『罪を憎んで人を憎まず』の一つのパターンであり、ローマ・カトリックだけでなく、他のキリスト教の宗派にも登場する考え方だ」。米フォーダム大学で神学を研究するパトリック・ホーンベック教授は、ナショナル・カトリック・リポーター紙の取材にそう答えた。

15日に公表された決定は、専門的にはバチカンの教理省に寄せられた質問への回答で、ローマ教皇フランシスコがこれを承認した。

だが待ってほしい。確か教皇は、同性カップルに法律婚と同様の法的権利を認める「シビルユニオン」について、よいことだとする考えを近く公開されるドキュメンタリーの中で示していたのではなかったか? 有名な話だが、告白に来た同性愛者をどう扱うかと問われた際には「私が裁くことだろうか?」と返したのではなかったか? 性的虐待の被害者、フアン・カルロス・クルスさんに対し、「あなたが同性愛者なのは問題ではない。神はあなたをそのように作り、そのままのあなたを愛している。私には問題ではない」と語りかけたのではなかったか?

答えはすべてイエスだ。どのやり取りにも、信者に一段と寄り添うフランシスコの流儀が表れている。教皇の座に就いてから8年間、フランシスコはLGBTQの人々について言及し、前任者を上回る寛容さを体現してきた。

しかし、いざ実際に教会の教えを変えようという段になると、そうした姿勢は鳴りをひそめてしまった。

これでは人々は混乱しかねず、打ちのめされたとの感情がわいてきてもおかしくない。カトリック教徒として、毎日シビルユニオンに対する前向きな言葉を聞いて喜んでいたと思ったら、別の日には祝福にまつわる弾圧を嘆かなくてはならないのだから。

教理省の公式見解について考え得る一つの説明は、これが一部のより保守的な教会指導者によって出された質問である公算が大きいというものだ。彼らはドイツの教会で起きている動きに懸念を示していた。そこでは複数の司教が「そのような祝福に対し寛容な見方を示唆していた。ドイツでは近く宗教会議が開かれることになっており、それに備える動きだ」と、イエズス会の聖職者、ジェームズ・マーティン氏はツイートした。同氏は執筆などを通じ、カトリック教会におけるLGBTQの人々に対する寛容性を高める活動に取り組んでいる。

すでにドイツからは、教理省の公式見解に対する反応が示された。同国の司教の会議を統括するゲオルク・ベーツィング司教によれば、彼らはその内容に「納得していない」という。

米国にいるほとんどのカトリック教徒もそうだ。教皇フランシスコの小さな歩みは評価するが、今こそとてつもなく大きな歩みを踏み出さなくてはならない。筆者が熱烈に望むのは、教会がいつの日か、同性のカップルを祝福するだけでなく、2人に対して婚姻の秘跡を承認することだ。教皇にはそれを行う権力があり、結局のところ、現在はフランシスコこそがその教皇なのである。

ハイディ・シュランプ氏は、カトリック教会に関する問題を扱う米国の全国紙ナショナル・カトリック・リポーターの編集主幹を務める。記事の内容は同氏個人の見解です。

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