苦境に陥る中国人キリスト教徒、信教の自由はケニアの地に

信教の自由を求めてケニアに根を下ろした中国人キリスト教徒を追った/Jenni Marsh

信教の自由を求めてケニアに根を下ろした中国人キリスト教徒を追った/Jenni Marsh

ケニア・ナイロビ(CNN) ケニア首都ナイロビの郊外にある裕福な地域。ここのオフィスビルでは毎週日曜日、荘厳な中国語の賛美歌が人けのない廊下に響き渡る。

小さな仮設礼拝堂に入ると、さまざまな中国人移民が集まって祈りをささげていた。下着の輸入業者や医療従事者に加え、中国により建設された38億ドル規模の鉄道の運行担当者も。鉄道敷設はケニア独立後最大規模のインフラプロジェクトで、アフリカで中国の投資や進出が拡大していることの印だ。

移民の中にはケニア人と結婚した人や、子どもが標準中国語と同じくらいなめらかなスワヒリ語を話せるという人もいる。

ただ、彼らにはいずれも2つの共通点がある。どの人も共産党政権下の中国を離れ、キリスト教徒が人口の8割を占めるケニアに生活に根を下ろしたこと。そして、隠すことなくキリスト教の神に身をゆだねる決断を下したことだ。

中国のキリスト教徒は現在、受難の時を迎えている。共産党政府は聖書のインターネット販売を禁じ、教会をダイナマイトで破壊し、「国家転覆を扇動」したとしてキリスト教徒を逮捕している状況だ。

「今の中国でキリスト教徒であることを公表するのは危険だ」。ブレッドオブライフ教会の高位聖職者、ジョナサン・チョウ氏(43)はそう語る。同教会は台湾に本部を置くが、所属する500人の聖職者の多くは西アフリカに派遣されている。

アフリカにある同組織の教会では以前、地元住民が運営や参加に当たることが多かった。しかし、現地の価値観に接する中国人が増えるなかで、中国人主導の集会も増加しつつある。

ナイロビの集会で説教をするジョナサン・チョウ氏/Jenni Marsh
ナイロビの集会で説教をするジョナサン・チョウ氏/Jenni Marsh

山東省出身の中年夫婦は礼拝の間、賛美歌の録音や朗読会の写真を「微信(ウィーチャット)」に投稿していた。ウィーチャットは中国のSNSで、中国政府による厳しい監視を受けている。

チョウ氏は「信徒のほとんどはケニアで神に救われた人たちだ」「前から信仰を持っていたのでない限り、大半の人は中国国内のキリスト教徒の状況をよく知らないのではないか」と語る。

「今話題のケニアの結婚式」

リアン・ヨンギュさん(33)はナイロビの広告会社でカレン・ヌグンジリさん(29)に初めて出会ったとき、将来は自分の妻になるだろうと予言した。

2人は6カ月にわたりデートを重ねたが、やがて壁に直面した。リアンさんはキリスト教徒でなかったのだ。

ヌグンジリさんは「彼が中国人なのは構わない。でもキリスト教徒じゃないのは大きな問題になると思った。一体どうやって子どもを育てればいいのか」と語る。

リアンさんはケニア暮らしが長く、スワヒリ語も多少話せる。キリスト教については友人からいろいろ聞いていた。自問自答の末、「キリスト教が何を与えてくれるか模索する気になった」という。

広東省出身のリアンさんは、広東語で礼拝を行うナイロビの教会に連絡。そして2018年12月、香港出身の聖職者の導きで結婚した。ケニア山のふもとで行われた結婚式には招待客200人が集まった。「ケニアでは小さな結婚式だった」とヌグンジリさんは冗談めかして語る。

結婚式をあげたリアン・ヨンギュさんとカレン・ヌグンジリさん/CNN
結婚式をあげたリアン・ヨンギュさんとカレン・ヌグンジリさん/CNN

その数週間後、「今話題のケニアの結婚式」と題した動画がユーチューブで拡散した。誰がアップロードしたのかは今でも分からない。だが、その後数カ月間、2人はナイロビの通りを歩くと必ず注目を浴びた。ケニア人女性と中国人男性が結婚した例は目新しく、人々の関心を引いたのだ。

動画は後日削除されたが、ピーク時には30万近い閲覧数があった。「(ネット上の)コメントにはひどい内容のものもあった」とヌグンジリさん。「特にケニア人の間では、中国人がここに来る目的は職を盗んだり、植民地支配したりすることだという見方がある。そのため、今度はケニアの女性まで奪っていると冗談で言われた」

中国は2017年にケニア最大の貿易相手国となり、14年時点でのケニアへの移民は4万人に上った。ただ、中国とケニアの関係は時に緊張もはらんでいる。

報道によれば、ある中国人のレストラン経営者は15年、現地の人々が午後5時以降に入店するのを禁止した。昨年は中国人の上司が従業員を「サル」と呼ぶ場面が動画にとらえられ、国外退去処分となる出来事もあった。

世界最大のキリスト教国?

キリスト教を受け入れる中国人はケニア在住者だけではない。中国の宗教に関する著書があるイアン・ジョンソン氏によると、米国やオーストラリア、英国に留学した中国人学生はキリスト教徒になって帰国している。こうした入信の動きは国内の幅広い傾向とも符合する。一部の推計によると、中国は2030年までに世界最大のキリスト教国になる見通しだ。

ケニヤでの鉄道建設には中国が携わった/jenni marsh
ケニヤでの鉄道建設には中国が携わった/jenni marsh

中国国民は20世紀の大部分、共産党創設の父である毛沢東を崇拝するよう教えられてきた。毛沢東は文化大革命の間、仏教や道教の施設を数多く破壊した。

1976年に毛沢東が死去したことを受け、中国は新たな価値体系を模索する必要に迫られた。ジョンソン氏は、都市部に移住した中国人の目にはキリスト教が新鮮でモダンに映ったと指摘する。

米パデュー大学の研究者によると、2017年時点での中国のキリスト教徒は9300万~1億1500万人と人口の5%ほど。ただ、政府公認の教会に通う人は3000万人以下にとどまるという。推計が正しければ、現在の中国には共産党員とほぼ同数のキリスト教徒がいることになる。

こうした状況が政府の怒りを買った。ジョンソン氏によると、習近平(シーチンピン)国家主席の下、西洋的とみなされた宗教の「中国化」の必要性を説く言説が広まった。

今日の中国では、国の認可を受けたキリスト教組織のみが合法となっている。人であふれかえる国営教会では多い日には1日に5回の礼拝が行われ、聖職者の給料は政府が支払っている状況だ。代替となる「家庭教会」は違法運営だが、聖職者と信徒の距離はより近い。

こうした教会は中国で長年容認されてきたが、最近は当局の標的となり、国に登録の申請をしても拒否されることが多い。

中国対神・・・帰国を前に

中国国営メディアでは、宗教への締め付けに関してほとんど報道されていない。キリスト教は「事実上、視界に入らない状態」だという。

ナイロビにあるブレッドオブライフ教会の礼拝者が公然と信仰を共有するのは、まさにそれが理由だ。ここの信徒はより落ち着いている。異国で宗教を見いだし、数年来中国を離れているため、大半のケースでは単に政府による摘発の規模について知らないのだという。

しかし、潜在的な危険を知った一部のキリスト教徒の間では、帰国の妨げになる可能性を口にする人もいる。

ナイロビにある教会で聖書を読む中国人のキリスト教徒/Jenni Marsh
ナイロビにある教会で聖書を読む中国人のキリスト教徒/Jenni Marsh

広東州出身の商人、ジミー・ホン・ゼン・ウーさん(53)は10年に及ぶケニア生活の中でキリスト教徒になった。仕事で定期的に中国に渡っており、帰国すれば2重生活を送らざるを得ないことを意識していると話す。

「中国では公共の場で信仰について話すことはできない」「キリスト教徒であることを口にできるのは友人や家族といる時だけだ」

ケニアで生まれた娘たちは地元のキリスト教社会で育っており、毎週日曜日に教会に通う。家族で中国に戻った時にこうした制約を理解できるだろうか――。その答えはまだ出ていない。

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