疑惑の米共和党議員、「ホームレス男性の愛犬への寄付金を流用」と関係者が訴え

（ＣＮＮ） 経歴の一部詐称を認めた米共和党新人のジョージ・サントス下院議員について、ホームレス男性の飼い犬の治療費として２０１６年にクラウドファンディングで集めた寄付金を流用したという疑惑が浮上した。

サントス議員に対しては経歴詐称の発覚を受けて辞任圧力が強まっている。本人は経歴を「飾り立てた」ことは認めながらも、「犯罪ではない」として強気の姿勢を崩していない。

サントス議員の寄付金流用を訴えているのは元海軍兵のリッチ・オストホフ氏。ＣＮＮの取材に対し、愛犬が２０１５年に腫瘍（しゅよう）を患い、１６年には腫瘍がどんどん大きくなっていったと説明した。オストホフ氏は仕事と家を失ってホームレスになり、テントで暮らしていたという。

オストホフ氏の知人でニュージャージー州の退役軍人支援団体創設者、マイケル・ボール氏は、同団体の活動を通じてオストホフ氏を支援し、愛犬を助けようとしていた。

ボール氏とオストホフ氏は、共通の知人を通じてサントス議員と知り合い、サントス議員が動物の保護活動を支援していると紹介されたという。サントス議員は２人に対して「アンソニー・デボルダー」という別名を使っていた。

ボール氏によると、サントス議員はオストホフ氏の愛犬「サファイア」のために、クラウドファンディングサイトの「ＧｏＦｕｎｄＭｅ」で募金活動を開始。「ジョージ・デボルダー」名のフェイスブックのアカウントを通じ、手術費用の寄付を呼びかけたという。

「サファイアは１０歳の赤鼻のピットブルで、この男性にずっと寄り添ってきました。この子を腫瘍のために死なせるわけにはいきません」「この子とパパがあと数年、一緒にいられるよう、助けてくれますか」。投稿にはそう記されている。

サントス議員は１８日、ＣＮＮに声明を寄せ、「彼が何を言っているのかまったく分からない」と主張。「私には何十人もの支援者がいて、私の尽力で救った犬や猫についての話を共有してくれている」と強調した。

ボール氏によると、クラウドファンディングを通じ、最終的に約３０００ドル（約３８万５０００円）が集まった。

ところがオストホフ氏がこの資金を使おうとしたところで事態が暗転したという。

オストホフ、ボールの両氏によれば、サントス議員は非協力的になって、まずオストホフ氏の愛犬をサントス議員が指定した動物病院に連れて行く必要があると説明。その後、サントス議員の決済手段が別の病院に受け入れられないと主張したという。

オストホフ氏は「何もかも彼の言う通りにしなければならなかった」「彼は本当に難しかった。次から次へと障害を持ちだした」と訴える。

やがてサントス議員はオストホフ氏に対して直接、金は渡せないと告げた。オストホフ氏によると、サントス議員の偽りの慈善活動について問い詰めたところ、サントス議員がけんか腰になったという。「彼は私に腹を立てて怒りを爆発させ、私に金を渡すことを拒んだ。以後は電話に出なくなった」（オストホフ氏）

ＧｏＦｕｎｄＭｅはＣＮＮの取材に対し、１６年に開設されたこの寄付集めに関しては、問題の報告を受けて調査に乗り出し、開設者から返答がなかったために削除したことを明らかにした。

ボール氏は、サントス議員とオストホフ氏の間に入ろうとしたがうまくいかなかったといい、サントス議員について「私の言うことには何もかも不満で、私と話すことさえ嫌がるようになった」と話す。

サントス議員はやがてメッセージにも返事をしなくなり、オストホフ氏は結局、集まった寄付金を受け取ることができなかったと訴えている。

オストホフ氏の愛犬は、サントス議員と連絡が取れなくなってから約半年後に息を引き取った。安楽死のための費用は、物乞いして集めなければならなかったとオストホフ氏は話す。

サントス議員との経緯について警察にも相談したが、どうにもならなかった。

サントス議員が２人に対して別名を使っていたことから、アンソニー・デボルダーとジョージ・サントスが同一人物だとは最近まで気づかなかったという。

１２月にテレビ出演したサントス議員の顔を見て、はらわたが煮えくり返る思いがしたとオステホス氏は振り返る。

ボール氏は「彼が今、何千人もの生活に影響を与える立場にいることを知ってひどく失望している」と語った。