OPINION

ペンス氏は共和党の尊敬を集めるに値する しかし共和党の票は集まるか?

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共和党への貢献に疑いの余地はないペンス氏。大統領選での党指名獲得の可能性は?/Patrick Semansky/AP

共和党への貢献に疑いの余地はないペンス氏。大統領選での党指名獲得の可能性は?/Patrick Semansky/AP

(CNN) 米国のペンス前副大統領が今週、首都ワシントンを訪れた。あるメッセージを携えて。共和党は前を見据えなくてはならない。2024年にホワイトハウスを奪還するつもりなら、後ろを振り返ってはならない。それがメッセージの中身だ。

スコット・ジェニングス氏
スコット・ジェニングス氏

割にあからさまな皮肉は、かつてともに選挙戦を戦ったトランプ前大統領に向けたものだ。トランプ氏が次の選挙に臨む動機は、敗北に終わった20年の大統領選を蒸し返し、当時同調しなかった者たちへの復讐(ふくしゅう)を果たすことだと言えるだろう。こうした敗北についての沸き立つ怒りは平均的な有権者にとって全く問題にならないが、トランプ氏が1つの政治基盤をまとめ上げるのには確実に寄与する。この基盤は、多数の候補者が争う予備選挙で相当にものを言う。

ペンス氏は当然ながら正しい。一般選挙で大事なのは未来であり、20年共和党で働いてきた同氏には自身の主張を述べる権利もある。同氏が26日、保守系団体の青年アメリカ財団(YAF)に向けて行った演説は、保守層が望むであろうあらゆる項目にチェックマークが入る内容だった。例えば経済の自由、強い国防、プロライフ(人工妊娠中絶に反対)、公立学校選択制などがそうだ。さらに自身の所有するジョンディア製ゼロターン芝刈り機(その場で旋回できる芝刈り機)の名まで口にした。筆者のような郊外に暮らす父親にはアピールポイントだ。

しかし問題は、果たしてペンス氏の政治家としてのスタイルや政界の状況が、来る共和党の予備選挙での躍進を可能にするのかどうかだ。

現行の世論調査によると、トランプ氏を除く候補者の中でペンス氏はフロリダ州のロン・デサンティス知事にリードを許している。全ての敵を正しく見極める才覚(近頃の共和党の政局では極めて重要な特質)にものを言わせ、同知事は現在上記の候補者リストのトップに位置する。最近のミシガン、ニューハンプシャー両州での世論調査では実際のところ、トランプ氏と並ぶ結果が出た。ただ全国規模では前大統領に軍配が上がる。

多くの共和党支持者は、一段と24年に照準を合わせ、トランプ氏以外の候補者を探している。彼らが気をもむのは、一か八かの勝負で再度同じ候補者に賭けるのかどうかという点だ。何しろその候補者は全米の一般投票に関して、2度の大統領選で連敗している。大統領選に臨む共和党の候補者の中で、トランプ氏がバイデン氏に敗れたと指摘する人物が1人以上いるかどうかは疑わしい。バイデン氏は、右派の多くに関する限り、最近の記憶の中で最も無能な大統領だ。共和党支持者らは引き続きトランプ氏に親しみを覚えていられる一方、依然としてインフレの過酷さを認識してもいる。この状況はトランプ氏が引き起こしたもので、それは20年大統領選でのバイデン氏に対する敗北並びにジョージア州での共和党の上院2議席の喪失によっている。

もしトランプ氏が選挙に敗れた後全く何もせず、ただゴルフコースに向かっていたなら、今ごろ同氏はすでに自身の次の閣僚を選んでいただろう。だが実際には自ら行った就任の宣誓に違反し、21年1月6日には国を危機に叩き込むところだった(ペンス氏の決意のおかげでそれは免れた)。もしトランプ氏が選挙に敗れた後で人前から姿を消していたなら、今ごろは支持率でバイデン氏に20ポイント差をつけていただろう。だが実際のところ国はどちらの党に対しても、この2人以外の候補者(誰でもいいから!)を指名するよう強く求めている。

トランプ氏の優位は資金力と政治基盤、そして強固な中核を構成し、どんな困難もともに乗り越える支持者たちにある。最も重要なことに、同氏が出馬しようとする党では勝者総取り方式を採用する。これは単純に得票で上回れば、当該の州の選挙人を全員獲得できる仕組みだ。16年、トランプ氏の本選挙での得票率は46%だったが、それでも党の指名は楽々と勝ち取った。候補者の数が多く、票が分散したためだ。もし現在出馬を検討中の共和党候補者らが全員出馬したとすると、24年にも同じことが起きる可能性がある。当該の候補者は現時点で少なくとも10人。もっと増えるかもしれない。非常に適任かつ成功の見込みの大きい候補者が出馬を視野に入れている。

ペンス氏はこうした非常に適任な選択肢の一人だが、成功できるかどうかは疑わしい。必ずしも人の心を揺り動かす演説をするわけではなく、それはYAFでの無表情の演説を見ても明らかだ。加えてパフォーマンスにものを言わせるけんか腰の政治活動の資質は持ち合わせていない。トランプ氏のそれは完成の域に達しており、デサンティス氏をはじめとする他の候補者らも今やそこを目指そうとする水準にある。

個人的にはペンス氏が24年の指名争いで上位につける候補者となるのか疑念を抱いているが、こればかりはふたを開けてみなければわからない。退屈ではあっても安定的で、意思の固い候補者が次の選挙では人気を集めるのかもしれない。

ペンス氏が大いに尊敬されて当然の人物だということはよくわかっている。我が国と我が党に対する働きのほか、連邦議会議事堂襲撃の際には暴徒にも立ち向かった。同氏が24年に共和党を救うことはないかもしれないが、そのメッセージは道をならす助けになりそうだ。指名を獲得した別の候補者がその道を進み、党を、そして国を、前へと動かしていくだろう。後退はない。

スコット・ジェニングス氏はCNNへの寄稿者で、共和党の選挙対策のアドバイザーを務める。過去にはジョージ・W・ブッシュ元大統領の特別補佐官やミッチ・マコネル上院議員の選対アドバイザーを歴任。ケンタッキー州ルイビルにあるランスイッチ・パブリック・リレーションズのパートナーでもある。記事の内容は同氏個人の見解です。

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