ロシアのエネルギー供給削減は「最も恐れていたこと」 米政府、対応に奔走

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ノルドストリーム1の関連施設=ドイツ北東部ルブミン/Edouard Merlo/AFP/Getty Images

ノルドストリーム1の関連施設=ドイツ北東部ルブミン/Edouard Merlo/AFP/Getty Images

(CNN) ロシアが欧州へのエネルギー供給をさらに削減したことを受け、米政府は欧州の同盟国が対ロシアで結束するよう水面下で奔走している。複数の米当局者が明らかにした。ロシアの動きは冬に向けて深刻な天然ガス不足を引き起こす可能性があり、欧州と米国の両方でパニックを引き起こしている。

ロシア国営エネルギー会社ガスプロムは25日、ドイツにつながる「ノルドストリーム1」パイプラインの流量を半分に減らし、輸送能力のわずか20%にすると発表した。米当局者はこの動きは欧米の制裁に対する報復で、欧州が冬を越すのに十分な天然ガスを確保できるかどうかという点で西側諸国を「未知の領域」に追いやるものだと述べた。

この問題で米政府は26日、グローバルエネルギー担当のホクスティン大統領調整官を欧州に派遣した。ホクスティン氏はパリとブリュッセルを訪問し、ロシアのウクライナ侵攻から1カ月後の3月に発足した米欧エネルギータスクフォースと対応策を協議する。

「これは我々が一番恐れていたことだ」と前述の米当局者は語り、欧州への影響は米国にブーメランのように降り掛かり、天然ガスや電力の価格を高騰させる可能性があると指摘する。また、ロシアがウクライナから撤退する気配がない中、ロシアに対する欧州の回復力と団結力が試される大きな試練ともなる。

米国と欧州連合(EU)はEU加盟国に対し、冬に備えてガスを節約して貯蔵するよう求めており、加盟国のエネルギー相は26日に8月から来年3月まで天然ガスの使用量を15%削減することで原則合意した。

また複数の当局者によると、天然ガス不足を補うために欧州全域で原子力発電を増やすことについても、今後議論される予定だという。ドイツは今年末までに原子力発電を完全に停止する予定だったが、米当局はドイツに残り3基の原子力発電所の稼働を延長するよう説得しようとしているとある当局者は述べた。

この件で特にドイツやフランスの当局者と緊密に連絡を取り合っている米当局者は、欧州が冬に向けて深刻な天然ガス不足に陥る可能性があることを非常に懸念している。というのも、ノルドストリーム1がその輸送能力の一部しか天然ガスを供給しないため、欧州は今後数カ月にわたって貯蔵量を増やすのに苦労することになるからだ。

関係者によると、天然ガス使用量の15%削減と、米国からのものを含む欧州への世界の液化天然ガス(LNG)輸出の急増を合わせても、不足を補うには十分でなさそうだという。

ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、「これはロシアが公然と欧州にしかけている天然ガス戦争だ」と述べた。

米政府当局者も、ロシアがウクライナで目標を達成できないために「激しく攻撃」して「欧州を不安定に」しようとしていることは明らかだと非難した。

米国家安全保障会議(NSC)の報道官は、ロシアの動きは「天然ガスを政治的・経済的武器として使おうとしている」最新の試みにすぎないと指摘。「ロシアのエネルギー抑圧はエネルギー市場に圧力をかけ、消費者向けの価格を引き上げ、世界のエネルギー安全保障を脅かしている。これらの行動は、ロシアのエネルギーへの依存を解消するために米国と欧州委員会が行っている活動の重要性を示すものだ。我々は、ロシアのエネルギーへの依存を減らすために欧州のパートナーと協力し続け、ロシアによるエネルギー市場のさらなる不安定化に備える欧州の努力を支援する」と述べた。

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