米議会襲撃、分刻みで何が起こっていたのか

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米連邦議会議事堂襲撃事件の分刻みの展開が明らかとなってきた/CNN/GETTY

米連邦議会議事堂襲撃事件の分刻みの展開が明らかとなってきた/CNN/GETTY

ワシントン(CNN) 昨年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件から1年半。今もなお当時の分刻みの恐怖と、暴力の扇動でドナルド・トランプ大統領(当時)が果たした役割に注目が集まっている。最近、事件を調査する下院特別委員会が相次いで公聴会を開いているのが主な要因だ。

右派の暴徒が議事堂を襲撃し、ジョー・バイデン候補の当選を正式に認証する議会の手続きが一時的に滞っていたころ、とりわけトランプ政権内部でこの日に何が起きていたのか。CNNや他のメディアの報道からも、こうした重要な細かい点がわかってきている。

つい先日、特別委員会はトランプ政権の側近だったカシディー・ハチンソン氏の爆弾証言を耳にした。暴動が手に負えなくなっていたころ、トランプ氏とマーク・メドウズ大統領首席補佐官がしたこと、しなかったことについて、ハチンソン氏は重大な新情報を暴露した。メドウズ氏の有力なスタッフだったハチンソン氏は、ホワイトハウス内部で交わされた重要な会話を目の当たりにしていた。

以下、CNNや他媒体の報道、議会での証言、司法省の裁判資料などをもとに、議会襲撃事件のもっとも重要な場面の一部を時系列順にまとめた。時間軸はおおよその目安であり、以下の出来事はこの日の事件の一部をとらえているに過ぎない。

2021年1月6日

午前7時30分

CNNが入手したテキストメッセージによると、選挙結果を覆すトランプ氏の取り組みを支持していた共和党のジム・ジョーダン下院議員(オハイオ州選出)宛てに、メドウズ氏がメッセージを送信。ジョーダン議員は前の晩、マイク・ペンス副大統領が選挙人団の結果の認証を執り行う際に選挙結果を覆すべきだと訴えるメッセージを送っていたが、これに対してメドウズ氏は「私もこれを要求している」と返答。メドウズ氏はジョーダン議員に「実現するかどうかはわからない」とも伝えている。

午前9時24分

米紙ワシントン・ポストが入手したホワイトハウスの通話記録によると、トランプ氏がジョーダン議員と10分ほど電話で会話。

午前9時52分

ワシントン・ポストが入手したホワイトハウスの通話記録によると、トランプ氏がスティーブン・ミラー上級顧問と電話で26分間会話。会話後、トランプ氏は間もなく行う演説の草稿を修正し、ペンス氏と上下両院合同会議に関する行を付け加えた。草稿を検証した委員会が明らかにした。

午前10時前

ハチンソン氏の証言によれば、集会会場となったホワイトハウス南側の広場「エリプス」で当局が武器を持った参加者に遭遇したことを、ホワイトハウスのトニー・オルナート次席補佐官がトランプ氏に報告。武器には拳銃、ライフル、催涙スプレー、槍(やり)などがあった。

午前10時15分ごろ

ハチンソン氏の証言によれば、同氏とオルナート氏は武装した群衆がエリプスに集まっていることをメドウズ氏に報告。会場内に武器が持ち込まれたとの報告を伝えると、メドウズ氏はほぼ無反応だったとハチンソン氏は議会で語った。

午前10時47分

トランプ氏の個人弁護士ルディ・ジュリアーニ氏がエリプスの集会で演説を開始。選挙結果を覆すよう議員に迫り、「決闘裁判にかけよう」と群衆に呼びかける。ジュリアーニ氏とともに、同じく右派の弁護士ジョン・イーストマン氏も登壇。選挙人投票の勝者を認定するこの日の両院合同会議で、ペンス副大統領に選挙結果を覆させる計画を立案したのがイーストマン氏だった。この計画はトランプ氏も支持していた。

午前11時20分

トランプ氏はペンス氏と電話で話した。ホワイトハウスの側近は委員会に対し、電話は緊張感がありヒートアップし、ペンス氏は両院合同会議で選挙結果を変えるつもりはないと繰り返したと語った。証人の証言によると、トランプ氏はペンス氏を「意気地なし」と呼んだ。

正午前

ハチンソン氏の証言によれば、トランプ氏が「いまいましいマグ(mag)を取り払え」とスタッフに命じる。マグとはエリプスの集会用に設置されたセキュリティーチェックの金属探知機を指していて、参加者は「私を傷つけるために来たわけではない」というのが理由だった。ハチンソン氏いわく、トランプ氏は群衆の規模を増やしたかった。

正午

トランプ氏がエリプスで演説を開始。選挙にまつわる数々のうそを繰り返し、法的に疑わしいイーストマン氏の策略に従うよう、公共の場でペンス氏に圧力をかける。

午後1時ごろ

極右過激派ブラウドボーイズのメンバーをはじめとするトランプ支持派の暴徒が、議事堂の外に張られていた第一関門のバリアーを突破して、建物に向けて突進を始める。ハチンソン氏の証言によれば、メドウズ氏を含むホワイトハウス高官はただちにシークレットサービス(大統領警護隊)から、議事堂で警察の警戒線が崩れつつあると警告される。

午後1時10分

エリプスでの演説を終えるにあたり、トランプ氏は支持者に「ペンシルベニア大通りを歩いて」連邦議事堂まで行進するよう呼びかける。群衆と一緒に自分も行進するとも発言した。ハチンソン氏の証言によれば、同じころトランプ氏支持のケビン・マッカーシー下院少数党院内総務(カリフォルニア州選出、共和党)がハチンソン氏に電話をかけ、トランプ氏を議事堂に行かせるなと激しく命じる。

午後1時19分

トランプ氏がホワイトハウスに帰還。エリプスから戻る短い道中、激怒したトランプ氏は議事堂へ車を回すよう要求する。だがハチンソン氏によれば、警護チームはこれを拒否。ハチンソン氏はオルナート氏や別の警護メンバーからこの時のやり取りを伝え聞いたと証言した。

午後2時ごろ

暴徒の第一陣の一部が議事堂内に侵入し、議事堂が閉鎖される。ハチンソン氏の証言によれば、ホワイトハウスではパット・シポローニ顧問が、トランプ氏は暴徒を阻止するために対策を講じるべきで、「何か手を打たないと人が死ぬことになる」とメドウズ氏に告げる。

午後2時13分

上院が急きょ休会。バイデン氏を勝者とするアリゾナ州の選挙人の票に共和党が異議を申し立て、これについて議論が行われていた最中だった。

午後2時14分

議会襲撃事件でもとくに有名な場面のひとつ。陰謀論のQアノン信奉者ダグ・ジェンセン被告に威嚇された連邦議会警察のユージーン・グッドマン氏が、機転を利かせてジェンセン被告をすぐそばの上院議場から遠ざける。

午後2時15分ごろ

ホワイトハウスではシポローニ顧問が、トランプ氏介入の必要性を再びメドウズ氏に告げる。ハチンソン氏の証言によれば、これに対してメドウズ氏は、トランプ氏が暴徒に関して「何もしたくなく」、ペンス氏を絞首刑にかけろと呼びかける暴徒に賛同していると返答する。

午後2時24分

トランプ氏がツイートでペンス氏を非難。両院合同会議の進行中、選挙結果を覆すという違法な策略を実行しなかったペンス氏を糾弾した。

午後2時28分

CNNが入手したメッセージによると、トランプを支持する陰謀論者のマージョリー・テイラー・グリーン共和党下院議員(ジョージア州選出)が、「人々をなだめるよう大統領に伝える」べきだとメドウズ氏にテキストメッセージを送信。

午後2時30分

議会警察が、上下院の議場から議員の避難を開始。シークレットサービスは上院で議事を行っていたペンス副大統領を議場から避難させる。

午後2時32分

CNNが入手したメッセージによると、選挙にまつわるトランプ氏のうそを広めていたFOXニュースの司会者ローラ・イングラム氏がメドウズ氏にテキストメッセージを送信。「大統領は、議事堂の群衆に帰宅するよう命じるべきだ」

午後2時35分

トランプ政権のミック・マルバニー元首席補佐官代行がメドウズ氏にテキストメッセージを送信。CNNが入手したメッセージによると、マルバニー氏はトランプ氏が「今すぐこれを阻止すべきだ」と述べ、手を貸すと申し出た。

午後2時38分

暴徒は「平和的であるべきだ」とトランプ氏がツイート。ただし、議事堂から立ち去るようにとは言っていない。

午後2時39分

ブラウドボーイズのメンバーと見られるドミニク・ペッツォラ被告が議事堂の窓を割る(同被告は扇動共謀罪で起訴されているが、襲撃関連の罪で無罪を主張)。これは最初に割られた窓の一つとなった。さらに大勢のトランプ支持者がバリケードを突破し、警察官ともみ合い、就任式用の足場をよじ登った末に議会内部になだれ込む。

午後2時40分

極右過激派オースキーパーズの一行が、軍隊式の編隊で暴徒の集団を通り抜け、議会の建物内に入る。メンバー数人が扇動共謀罪で起訴されている。

午後2時44分

議員らが避難しているころ、暴徒に加わっていたトランプ氏支持者のアシュリー・バビットさんが、下院議場に隣接した議長専用ロビーに侵入しようとしていたところを警察官に撃たれて死亡。同じころ、CNNが入手したメッセージによれば、共和党のバリー・ラウダーミルク下院議員(ジョージア州選出)がメドウズ氏に「議会では大変なことになっている」とテキストメッセージを送信。ラウダーミルク議員はジョージア州でのバイデン氏勝利の無効を支持していた。

午後2時45分ごろ

トランプ氏支持派の暴徒が上院議場に侵入。ナンシー・ペロシ下院議長のオフィスにも押し入る。

午後2時53分

トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏がメドウズ氏にテキストメッセージを送信。CNNが入手したメッセージによれば、「彼はこれを糾弾するべきだ。今すぐに。議会警察のツイートだけでは不十分だ」。これに対してメドウズ氏は、「私もがんばっている。同感だ」と返答。

午後3時より少し前

トランプ氏がマッカーシー下院少数党院内総務と電話で会話。同議員は群衆を解散させるようトランプ氏に懇願したが、CNNの報道によればトランプ氏は暴徒の肩を持ち、群衆はマッカーシー氏以上に選挙結果を気にかけているようだと伝えた。

午後3時ごろ

ハチンソン氏の証言によれば、ホワイトハウスの側近がトランプ氏の声明文の草稿を作成。暴力と暴徒の「違法」行為を糾弾する内容だったが、この声明が発表されることはなかった。

午後3時9分

CNNが入手したメッセージによれば、プリーバス元首席補佐官がメドウズ氏に「彼らに帰宅するように命じろ!」と全て大文字のテキストメッセージを送信。

午後3時13分

議事堂に集まった支持者は「平和的でいるべきだ」とトランプ氏がツイートするが、ここでも敷地を立ち去るよう指示することはなかった。CNNが入手したメッセージによれば、同じころ、プライス元保健福祉長官がメドウズ氏に「大統領はテレビに出演して鎮静化を図るべきだ」とテキストメッセージを送信。

午後3時15分

大統領の娘であるイバンカ・トランプ上級顧問が、ツイートで暴徒を「愛国者」と表現。「暴力は止まらなければならない」と述べたが、議事堂から立ち去るべきだとの言及はなかった。

午後3時31分

CNNが入手したメッセージによれば、選挙にまつわるトランプ氏のうそを広めていたFOXニュースのショーン・ハニティー氏がメドウズ氏にテキストメッセージを送信。「彼は声明を出せるか。ツイートを見た。おとなしく議事堂から去るよう求めろ」。これに対してメドウズ氏は「対応中」と返信。

午後4時5分

CNNが入手したメッセージによれば、トランプ・ジュニア氏がメドウズ氏に「我々は執務室での演説を必要としている。彼が今すぐリードする必要がある。これは行き過ぎて手に負えなくなっている」とテキストメッセージを送信。数分後、トランプ・ジュニア氏が再び「バイデンが先手を打とうとしている」とメッセージを送信。

午後4時15分

バイデン氏がテレビ演説を行い、議事堂襲撃は「反乱と紙一重」だと発言。支持者に「包囲の終了」を命じるよう、トランプ氏に求める。

午後4時17分

トランプ氏が動画をツイートし、暴徒に「今すぐ帰宅するよう」告げる。だが同時に暴徒を称賛し、襲撃の発端となった2020年大統領選挙が盗まれたといううそを繰り返す。

午後6時1分

「神聖で地滑り的な選挙の大勝利が、偉大な愛国者の手から無作法に、悪意をもって奪い取られると、こういう出来事が起こる」とトランプ氏がツイート。

午後7時14分

元トランプ陣営責任者のブラッド・パースケール氏がカトリーナ・ピアソン顧問にテキストメッセージを送り、トランプ氏が「内乱を求めている」との見方を伝え、「私は彼の勝利を支援したことに罪を感じている」とも述べた。委員会が公開したメッセージから明らかとなった。パースケール氏はピアソン氏に、トランプ氏の言葉がその日「誰かを殺した」と述べた。死亡したバビットさんを指した言葉とみられる。ピアソン氏はこれに対し「それはその言葉ではない」と述べ、パースケール氏は「カトリーナ、いや、それだ」と返した。

午後8時ごろ

議事堂の安全が確保されたと議会警察が発表。上院が再招集され、演壇に戻ったペンス副大統領が「今日、我が国の議事堂を混乱に陥れた者に告げる。勝ったのはあなた方ではない」と発言。マコネル上院少数党院内総務は、この日の出来事を「失敗に終わった暴動」と表現する。

午後8時39分

ワシントン・ポストが入手したホワイトハウスの通話記録によると、トランプ氏がジュリアーニ氏と電話で9分間会話。

午後9時2分

下院が再招集される。

午後10時11分

アリゾナ州の選挙人票集計に対する共和党議員の異議申し立てが、上院で否決される。同州では一般投票で勝利したバイデン氏に選挙人の票が与えられていた。

午後10時19分

ワシントン・ポストが入手したホワイトハウスの通話記録によると、トランプ氏がホワイトハウスの元首席戦略官スティーブ・バノン氏と電話で7分間会話。

午後11時8分

ワシントン・ポストが入手したホワイトハウスの通話記録によると、トランプ氏がハニティー氏と電話で8分間会話。

午後11時10分

アリゾナ州の選挙人票集計に対する共和党議員の異議申し立てが、下院で否決される。同州では一般投票で勝利したバイデン氏に選挙人の票が与えられていた。

2021年1月7日

午前0時40分

ペンシルベニア州の選挙人票集計に対する共和党議員の異議申し立てが、上院で否決される。同州では一般投票で勝利したバイデン氏に選挙人の票が与えられていた。

午前3時10分

ペンシルベニア州の選挙人票集計に対する共和党議員の異議申し立てが、下院で否決される。同州では一般投票で勝利したバイデン氏に選挙人の票が与えられていた。

午前3時42分

ペンス副大統領が正式にバイデン氏の勝利を認定。両院合同会議が閉会する。

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