算数の新規教科書41%不採択、「批判的人種理論」など理由に 米フロリダ州

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米フロリダ州、算数の新規教科書41%を不採択

(CNN) 米フロリダ州教育省はこのほど、50種類以上の算数の教科書について来年度のカリキュラムへの採用を却下したと明らかにした。不採択の理由の一つとして、「批判的人種理論」への言及を挙げている。

教育省は15日の声明で、申請があった132の教科書のうち54種類についてフロリダ州の新たな基準を順守していないか、禁止された話題を含むとの理由から採択を見送ると説明した。

不採択となった教科書の割合は申請数の約41%に上り、フロリダ州で過去最多だという。

不採択の理由としては、批判的人種理論への言及や「コモンコア(全米共通学力基準)の採用、算数の分野での社会感情学習(SEL)の不要な追加」などを挙げた。

CNNが入手した教科書のリストからは、8つの出版社が批判的人種理論やSEL、その他の特殊なトピックへの言及を理由に申請を却下されたことが分かる。このリストには個々の教科書のタイトルや具体的な文章例は提示されていない。

フロリダ州のデサンティス知事は18日、不採択の理由は教科書ごとに異なると述べ、当局は「生徒の実際の学力向上に教育の重点を置く」方針だと説明した。

「算数のような科目にこうした別の概念が導入されるのは望ましくない。効果が証明されていないし、率直にいって焦点がずれることになる」としている。

一方、フロリダ教育協会のアンドルー・スパー会長は州教育省の決定の経緯について透明性を求め、「好ましくない」内容の例や、審査担当者やその能力に関する詳細などを明らかにするよう要請した。

スパー氏はツイッターで「現状、フロリダ州の学区では、幼稚園から小学校5年生まで算数の教科書が全てそろっている出版社は一つしかない。それがなぜなのか我々には詳しく分かっていない」「州は全ての子どもが最高の教材で必要な算数の指導を受けられるようにする義務がある」と述べた。

デサンティス氏によると、州当局は2010年に導入された標準的な指導モデル「コモンコア」を「排除」した。この指導法は算数の問題を解くに当たり、大半の大人になじみのある筆算で「1繰り上げる」ような計算方法ではなく、数をグループ化して解を求めるもので、単純な計算を越えたより深い数学的概念を重視する。

教育省はさらに、却下された教科書の中にはSELや批判的人種理論への言及を含むものもあると指摘した。この2つの枠組みないし思想を巡っては、一部の保守派から生徒の洗脳に使われているとの主張が出ている。

米国の一部の学校では最近、生徒がストレスや新型コロナウイルスの影響に対処するのを助ける目的でSELの戦略を使う動きも出てきた。推進団体はSELについて、「若者や大人が健全なアイデンティティーを育み、感情をコントロールし、個人や集団の目標を達成し、他者への共感を示し、互いに支え合う関係を構築・維持し、責任と思いやりのある決定を下すための知識やスキル、態度を習得・応用する」のを支援する教育枠組みとしている。

全米州議会連盟によると、すでに十数州が小学校でSELを教えるための基準を設けている。ただ、SEL導入を検討する州の増加に伴い、保守派からこの枠組みには批判的人種理論が組み込まれているとの主張が出るようになった。

近年、批判的人種理論は広く政治問題化している。反対派はこの研究分野はマルクス主義に基づくもので、米国人の生活様式を脅かすと主張。一方、この理論を研究する学者らは、格差や人種主義の歴史がいかにして今日の米国社会に影響を与え続けているかを探るものだと説明する。

批判的人種理論の提唱者で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とコロンビア大学で教鞭(きょうべん)を執るキンバレ・クレンショー氏は「批判的人種理論とは一つの実践である。白人至上主義の歴史に立ち向かう一つの方法であり、過去のことは過ぎ去ったことで、過去に生まれた法律やシステムはそこから切り離されているとの考えを否定するものだ」としている。

複数の州の教育関係者は、批判的人種理論は小学校の教育内容に通常含まれていないと語る。

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