ANALYSIS

バイデン氏演説で最も重要かつ強力な一節、米議会襲撃から1年

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米議会襲撃から1年の演説で、愛国心に関する極めて重要な指摘を行ったバイデン氏/JIM WATSON/AFP via Getty Images

米議会襲撃から1年の演説で、愛国心に関する極めて重要な指摘を行ったバイデン氏/JIM WATSON/AFP via Getty Images

(CNN) 「自分が勝ったときだけ自分の国を愛するということはできない」

これが昨年の米議会議事堂襲撃事件から1年となる6日朝、事件を振り返る演説を行ったジョー・バイデン大統領だ。これは記憶に残る一節というだけでなく――今日以降最も繰り返される一節になりそうだが――極めて重要な一節となる。もし我々が昨年1月6日に起きたこと、そしてそれにつながるすべてのことを把握したいと願うならだ。

この一節の核心には、愛国心の考えがある。ドナルド・トランプ氏が2016年の大統領選で「米国第一主義」を掲げて立候補したことを思い出そう。選挙戦、そして4年間のホワイトハウスの双方に命を吹き込んだこの主義は、米国は世界で格別な存在であるという考え方であり、また米国の指導者があまりにも長い間、その事実を声高に、誇り高く主張することを恐れ、代わりに世界中のもっと小さな国々に米国を従わせてきたという考え方だった。

「未来はグローバリズムを志向する人々のものではない」。トランプ氏は19年の国連演説でそう語った。「未来は愛国者のものだ」

米国をそれほど特別な存在にしているものとは何なのか。世界の他の大国――中国とロシア――と米国を区別するものとして、4年に一度、平和的な権力移行が行われることへの我々の献身以上のものは存在しない。

自分の好む候補が勝つかにかかわらず、大統領選の結果を自由で公正なものだと受け入れ、勝者を大統領として認める。この考え方は、我々が何者であるかという米国人としての根幹にかかわるものだ。

米国の力――そして独自性――とその平和的な権力移行への献身を理解したければ、00年の選挙に立ち戻ればいい。

勝者がアル・ゴア氏、ジョージ・W・ブッシュ氏のどちらか判明せずに36日が過ぎた後、ゴア氏は最高裁から同氏不利な判断が出たことを受け、選挙の敗北を認めた。

彼が負けを認めたということが重要だった。そして、それをどのように認めたのかはさらに重要だった。

「国民として我々が団結し、我々の民主主義を強くするために、私は負けを認める」。ゴア氏はそう語った。「新しい次期大統領に敬意を表する責任、そして独立宣言が定め憲法が確認し守る偉大なビジョンを実現するため、次期大統領が米国民を団結させるのを全力で支援する責任も私は受け入れる。それは私が無条件で果たす責任だ」

ゴア氏はさらに、1860年、エイブラハム・リンカーンとの選挙戦に敗れたスティーブン・ダグラスの言葉も引用した。「党派的な考え方は愛国心の前に屈しなければいけない。私はあなたに賛同する、大統領閣下。神のご加護を」

ゴア氏(そしてダグラス)が理解していたのは、それは自分たちだけの話ではないということだ。もちろん、彼らは勝ちたかっただろう。彼らは対立候補よりも自分がいい大統領になると考えていた。だが彼らは、愛国心や国への忠誠心とは、国のために正しいことをするために、自分の個人的な考えを棚上げすることを意味すると理解していた。

バイデン氏が、記者団から演説でトランプ氏を名指ししなかった理由を問われて発した答えも、この感覚を示していた。重要な部分を抜粋する。

「これは私に関する話ではない。副大統領に関する話ではない。本当にそうではない。私を最も悩ませているのは、米国の政治にある程度姿を現しつつあるように見える、ある種の姿勢だ。……私に関する話ではない。私が大統領であるかや彼女が副大統領であるかに関する話ではない。それは制度に関する話であり、自分を何者にも超越する存在にしようと試みる誰かに関する話だ」

別の言い方をしてみよう。本当のスポーツマンシップとは、勝ったときに寛大になることではない。それは誰にでもできる。負けたときに寛大になること、それが本当のスポーツマンシップだ。これは誰にでもできるものではない。

同じことが愛国心についても言える。国民が自分を選ぶとき、または自分が望むものを与えてくれるとき、自国を愛することは簡単だ。だが、国民が間違った人物を選んだと考えるとき、または国民が誤った方向に進んでいると思うとき、自国を愛することははるかに難しくなる。

本当の愛国心とは、自分の主張を支える根拠もなく自分が勝利したと言うことではない。本当の愛国心とは、国を可能な限り偉大にするために制度の中で機能するものだ――それがあなたの個人的関心を満足させるものかどうかにかかわらずだ。

ジョー・バイデン氏はその点をわかっている。ドナルド・トランプ氏は一度もそれをわかっていない。

本稿はCNNのクリス・シリザ編集主幹による分析記事です。

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