OPINION

市民権を持たない人に投票を認める理由

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ニューヨーク市ブルックリンに設置された期日前投票の会場=2021年10月25日/Spencer Platt/Getty Images

ニューヨーク市ブルックリンに設置された期日前投票の会場=2021年10月25日/Spencer Platt/Getty Images

(CNN) ニューヨーク市議会に喝采だ。多様性の受け入れや代議制に向けた意義ある一歩を踏み出した。

12月9日、ニューヨーク市は市民権のない人に自治体選挙での投票権を与える全米最大の都市となった。ニューヨーク市は「Our City, Our Vote(我々の都市、我々の投票)」条例案を3分の2を超える賛成多数で可決した。この条例では、合法的な永住者で30日以上同市に在住する人は、市長や市政監督官、市議会などの自治体の公職選挙で投票権が認められる。条例は2023年1月に施行される。

ロール・A・レイエス氏
ロール・A・レイエス氏

市民権を持たない人々に自治体選挙で投票権を認めるのは法的に健全で賢い政策だ。これは地域社会を強化し、より多くの住民に対し自分の生活に影響を与える政治への投資を認めることになる。そして市民権を持たない人に投票権を認めることは、米国の伝統と理想に根ざしたものとなる。

誤解のないように言っておくが、ニューヨーク市の動きは不法滞在者に投票を認めるものではない。この条例が主に対象とするのは、グリーンカード(永住権)や就労許可証の保持者、不法入国した若者を救済する制度「DACA」の適用を受ける者などの合法的な移民だ。また、この新条例は市民権を持たない人に連邦選挙の投票権を認めるものでもない。

市民権のない人々の投票を認める最も強い根拠は、理解が最も簡単なものだ。米国では市民権のない人々約1500万人が合法的に暮らし、ニューヨーク市には約80万人が存在する。こうした我々の隣人は税金を払い、子どもを学校に通わせ、商売を始め、地域社会に貢献している。彼らも他の人々と同様に、リーダーを選び、自治体政治での発言権を得ることができてしかるべきだ。

市民権のない人に投票権を与えれば、市民活動への参加を促すこととなり、結果それを認めた都市を強化することにつながる。投票する人が増えるほど、リーダーや政策はその選挙区を正確に反映したものとなる。

ニューヨーク州の共和党はこの条例に対抗措置をとると誓い、「条例案が法令となるのを阻止するために必要なあらゆる法的措置」をとると述べてきた。だが、合衆国憲法は市民権のない者による投票を禁じていない。連邦最高裁は1874年、マイナー対ハッパーセットの裁判で「市民権は、すべての場合において投票権を持つための前提条件とされているわけではない」と確認している。

市民権のない人に投票を認めることは、新しいことでも、急進的なことでもない。そう知ったら人々は驚くかもしれない。市民権のない人々による投票は米国の建国にまでさかのぼる歴史がある。サンフランシスコ州立大学のロン・ヘイダック教授によると、1776~1926年まで、米国の自治体や州、一部の国の選挙で市民権のない人が投票でき、中には公職に就ける人もいた。

今日でも、ニューヨーク州の憲法は「すべての市民はすべての選挙で投票する権利がある」と定めているものの、市民権のない人は投票することができないとは言っていない。この区別は、今後予想されるニューヨーク市の条例に対する法廷闘争で重要となるだろう。

有権者の拡大に向けた、ゆっくりとしながらも成長しつつあるうねりがあり、同市の動きはその一部を形成するものだ。米国で市民権のない人に投票を認めているのはメリーランド州の9つの市、サンフランシスコ市などわずかな法域だ。マサチューセッツ州やイリノイ州、コロンビア特別区でも市民権のない人の投票に関する条例が検討されている。今回ニューヨーク市が投票を認めたことは、もっと多くの自治体が同様の措置を進める上で道を切り開く可能性がある。

市民権のない人に投票を認める根拠には実務的な部分もある。もし永住権保持者が国籍を取得して市民になろうとしたら、手数料や法的費用の金銭がかかるほか、時間を要する点が特に重要となる。米紙ニューヨーク・タイムズは2019年、国籍の取得希望者がそのプロセスにかかる時間は平均で10カ月だと報じた。それはグリーンカード保持者が国籍取得の申請にかかる最低5年間の期間に上乗せするものになるという。市民となりうる人々の案件が、滞留する我々の移民システムを通過する間、一切市民としての声を上げられないという状況は公正ではない。

米国が「代表なくして課税なし」という考えや、「政府は人々の間に樹立され、その正当な権力は統治される人々の同意に由来する」とする独立宣言の考えに基づいて建国されたことを考えてみよう。市民権を持たない人の投票を禁止することは、どちらの原則にも反しているように見える。

予想できたように、共和党はニューヨーク市の条例に素早く反対を表明してきた。共和党全国委員会のロンナ・マクダニエル委員長は「外国人の市民に我々の選挙を決めさせることは容認できない。共和党全国委員会はあなたの投票を守る闘いを続ける中で、法的な手段を入念に検討する」と声明で述べた。

彼女の言葉はほとんど笑い草だ。なぜなら共和党が全米で主導している立法は一貫して、投票へのアクセスを制限する方向に向いているからだ。ニューヨーク大学の非営利機関「ブレナン司法センター」の分析によると、今年に入り19の州が投票をより困難にする33の新法を通過させた。共和党が任命した保守派判事が多数を占める米最高裁は、何年もかけて投票の権利を少しずつ崩してきた。法律上も、道徳上も、共和党に投票権の保護で愚痴をこぼすゆえんなどないのだ。

ニューヨーク市は、市民権のない人に投票権を認める方向に向かう正しいことをした。これは同市にとって、そして民主主義にとって良いものとなるだろう。

ロール・A・レイエス氏は弁護士で、米紙USAトゥデイの寄稿者委員会の一員。記事の内容は同氏個人の見解です。

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