OPINION

勝利を望む共和党員は、トランプ氏の「選挙不正」幻想を真に受けない

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トランプ氏は依然として昨年の大統領選の敗北が不正によるものだとの立場を示している/BRENDAN SMIALOWSKI/AFP via Getty Images

トランプ氏は依然として昨年の大統領選の敗北が不正によるものだとの立場を示している/BRENDAN SMIALOWSKI/AFP via Getty Images

(CNN) ヒューストン、問題が発生した。我が国にとって最も古くかつ近しい同盟国の一つと外交論争が浮上。またある立法議案がインフラ投資の規模をめぐる連邦議会での議論の中で頓挫し、重大な期限にぶち当たろうとしている。南部の国境地帯では正真正銘の危機が起き、パンデミック(世界的大流行)への連邦政府の対応は分かりにくい。信用もしくは能力の危機と認めざるを得ないところだが、どう考えても事態は混沌(こんとん)としている。そしてそれはまさに、バイデン大統領が公約の中で解決策を講じるとしていた状況に他ならない。

ジェフ・ダンカン氏
ジェフ・ダンカン氏

実際のところ、トランプ前大統領の政権に投げかけられた批判の多くは、その後継者に対しても等しく当てはまる。今や現大統領の地位にも危険が迫っている。

野党・共和党には、来年議会の多数派を奪還する政治的チャンスが十分にある。歴史を振り返れば、来年の中間選挙で政権与党は罰を受ける公算が大きいことが分かる。1994年、クリントン大統領が率いた民主党は最初の中間選挙で54議席を失った。2010年、オバマ大統領の民主党は60議席以上減らした。その後14年には、共和党が上院で過半数を押さえ、連邦議会を完全に掌握した。そして18年、上院では共和党が過半数を固守したものの、下院は民主党が支配を回復した。

今年1月に筆者の地元ジョージア州で行われた上院選決選投票の残念な結果を受け、現在民主党は大統領職と議会上下両院のすべてを運営している。権力には責任が伴うが、同党はその試験をパスできていない。

しかし我が共和党も困難を脱したわけではない。週末、トランプ前大統領は筆者の地元で集会を開催した。伝説的なサザン・ロックの歌手、チャーリー・ダニエルズがまだ存命なら、自らのヒット曲をこう書き換えるかもしれない。「大統領がジョージアへやってきた。党の魂を探して盗もうとしていた」

大統領選から1年近くが経過しても、ジョージア州は前大統領の心の中で非常に大きな位置を占めている。トランプ氏は相変わらず痛々しいほど落ち着き払って大規模な選挙不正という根拠のない陰謀論を振りまいている。先週には支離滅裂で子どもっぽい書簡をラフェンスパーガー州務長官に送り付け、大統領選の結果の「承認を取り消す」よう求めた。

数え切れないほど行われた票の再集計や監査などどうでもいい。23日夜にリークされたアリゾナ州マリコパ郡の監査を含め、これらの中でうわさされた不正の証拠が見つかったケースは一つもない。同氏の弁護士チームも証拠は挙げておらず、自ら任命したバー司法長官は「選挙結果を覆す可能性があったほどの規模の不正は確認していない」と宣言した。

保守派がトランプ氏に腹を立てるのは全くもって当然だ。簡単なシュートミスによって勝てたはずの選挙に敗れ、バイデン大統領を誕生させてしまったのだから。不幸なことにバイデン氏の政策提案に関しては、我々の最も恐れていたことが裏付けられる形となっている。

保守派がトランプ政権の掲げる政策課題を強く支持するのを責めているのではない。同氏が大統領だった4年間は、米国史上最も重要な期間の一部に数えられる。減税が行われ、個人の保険加入義務付けを含む医療保険制度改革(オバマケア)の規制は緩和された。また最高裁判事の構成は保守派が3人多い布陣となった。こういった種類の政策は、どの保守派の中核にも迫る重要なものだ。トランプ氏の人格に警戒感を抱く人々でさえもそれは変わらない。

ただ我々がお互い正直になるなら、トランプ氏が敗れた理由は選挙不正でもなければその保守的な政策でもなかった。バイデン氏が現在ホワイトハウスに座っているのは、有権者がトランプ氏の突拍子もない言動にうんざりしたからだ。とりわけ新型コロナのパンデミックの渦中においてはそうだった。

来る選挙で、過去について議論するわけにはいかない。敗北を重ねたいのであれば話は別だが、仮に予備選ですべてのエネルギーをつぎ込み、根拠のない大統領選の陰謀論をめぐるリトマス試験を行うのであれば、共和党の候補者が全国各地の本選に勝利するのは不可能だ。

週末ジョージア州を訪れたトランプ氏が期待するのは、自らの「最大のヒット曲」をパッケージし直し、再び我が偉大な州を己の身勝手な政策課題のため乗っ取ることに他ならない。見世物としては楽しめそうだが、それは保守派の運動を妨害するものだ。このまま行けば、次の4年間もバイデン大統領に意思決定を委ねる事態となるのは目に見えている。

バイデン氏が政権の座に就き、民主党が上下両院を抑える現状にあって、米国は世界の笑いものと化している。我々はアフガニスタンを再びイスラム主義勢力タリバンの手中に戻し、駐留米軍の撤退は唐突で混乱を招く状況だった。20年に及ぶ紛争の結果がこれだ。加えて我々の最古の同盟国が、米国から大使を召還させる事態ともなっている。

共和党が過去にまつわる勝ち目のない戦いを蒸し返している場合ではないのと全く同様に、米国もバイデン氏とその仲間たちに次の4年間を任せる余裕はない。彼らが押し付けてくる損害には、際限というものがないのだ。

共和党、米国ともに大きなリスクを背負った状況だが、ここは常識とより冷静な思考が勝利するのを期待しよう。現行の世代と、その次の世代のためにも。

ジェフ・ダンカン氏は共和党員で、ジョージア州の第12代副知事を務める。記事の内容はダンカン氏個人の見解です。

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