住まいをクルーズ船に移した米国人女性、15年間の世界周航へ

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シャロン・レーンさん。30年前に建造され改修が行われたクルーズ船「ビラ・ビ・オデッセイ」の船上での1枚/Sharon Lane

シャロン・レーンさん。30年前に建造され改修が行われたクルーズ船「ビラ・ビ・オデッセイ」の船上での1枚/Sharon Lane

貯蓄の大半をキャビンの購入に充てたレーンさんだが、お得な買い物だと感じている。食事とソフトドリンクに加え、夕食時のアルコール、WiFi(ワイファイ)、医師による診察(治療や薬は除く)も月額使用料に含まれる。ルームサービスは24時間利用可能で、週1回の清掃、隔週のランドリーサービスも追加料金なしで利用できる。

「もう自分で洗濯しなくていいし、買い物にも行かなくていい。南カリフォルニアで暮らすよりも、船上生活の方がずっと安く済む」とレーンさんは話す。

エンターテインメントも充実しており、寄港地では地元のパフォーマーが招かれる。定期的に行われる「スピーカーズ・コーナー」では、居住者が独自のイベントを開催することもできる。

ペッターソン氏によれば、船にはノーベル平和賞受賞者、ホワイトハウスの元首席補佐官、宇宙飛行士、科学者や医師など、さまざまな居住者が乗船し、知識や経験を共有しているという。

オデッセイは今後15年かけて世界を巡り、周回ごとに異なる目的地に寄港する。

船は8階建てで、現在の総キャビン数は約450室。同社の発表によると、昨年11月時点で乗船した50%が単独旅行者だった。現在その割合は約55%で、レーンさんもその一人だ。

レーンさんによれば、人数に対して、船内はとても広々としているという。

キャビン所有者の80%は米国人とカナダ人。次に多いのがオーストラリア人、ニュージーランド人だ。

波乱の船出

オデッセイは当初、昨年半ばに出航する予定だったが、安全認証を待つために北アイルランドのベルファストに4カ月間停泊することになった。

出航後も一部の寄港地には寄れず、航路変更も余儀なくされた。ガラパゴス諸島、南大西洋のフォークランド諸島、南極といった目的地に寄港できなかったことで、乗客からは失望の声も上がった。

寄港地に寄れなかった原因は、悪天候や煩雑な手続き、小型の上陸用ボートが必要となる目的地でのロジスティクス上の問題によるものだ。

「ガラパゴス諸島に行くには、乗組員全員がエクアドル国籍である必要があった。フォークランド諸島では50ノット(時速約92.6キロ)の強風が吹いていた」(ペッターソン氏)

南極に関しては、「必要な認証が期限に間に合わず、天候も免除条件を満たさなかった」という。

こうした問題は、ビラ・ビ・レジデンシズが経験を積むことで克服されていくとペッターソン氏は見ている。

現在ビラ・ビは、船と上陸用ボートをつなぐ専用通路を建設中だ。これにより波やうねりによる影響が軽減され、寄港地のキャンセル減少につながる見込みだという。

上陸できなかった寄港地の埋め合わせとして、新たに南極、フォークランド諸島、グリーンランド、北欧などの寄港地が追加された。船は、アルゼンチン最南端にある港町ウシュアイアに長期滞在する。

「今回は1カ月間ウシュアイアに滞在するため、天候を見ながらフォークランド諸島と南極を確実に訪れることができる」とペッターソン氏は述べた。

長い旅路

レーンさんの船上でのお気に入りの場所はデッキ。そこから海と景色を眺めるのがお気に入りだ/Sharon Lane
レーンさんの船上でのお気に入りの場所はデッキ。そこから海と景色を眺めるのがお気に入りだ/Sharon Lane

レーンさんはクルーズ業界の不確実性を身をもって経験してきた。当初レーンさんは、居住型クルーズ「ライフ・アット・シー」が企画した3年間の長期クルーズに参加を決め、数千ドルを支払った乗客の一人だった。

しかし、度重なる延期の末、この計画は頓挫。運営会社のミライ・クルージズが航海を行うための船を確保できなかったためだ。

レーンさんは払い戻しを受けたものの、その時点ですでに賃貸契約を解消し、多くの私物を処分していた。その後、カリフォルニア州オレンジ郡の高齢者住宅に移り住んだが、そこでの生活には満足できなかった。

「2年間ずっと、どこか他の場所に行きたいと思っていた。なぜなら、それは私が望んだ人生ではなかったから」

そして、オデッセイが昨年秋に出航したニュースを見た瞬間、レーンさんの心は決まった。

「すぐに電話して、その日のうちにお金を振り込んだ」と振り返る。

ペッターソン氏によれば、ライフ・アット・シーに乗船できなかった人の約半数が、現在オデッセイに乗船しているという。

レーンさんは今のところ、15年間の航海を全うし、夢の人生を送るつもりだ。

「終わりなんてない。でも15年経ったら、地上で暮らしてもいいかもしれない。もしくは、次の船に乗ってもいい。そのときが来たら考える」

「船のデッキは私にとっての幸せな場所。天気が良ければ、いつもデッキにいる。天気が少し悪くても、厚着をしてデッキに出る。立っていてもいいし、座っていてもいい。誰かと話してもいいし、本を読んでもいい。潮風を感じて、海の空気に包まれるの」

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