かつての空港が臨海公園に、歴史の一部も再利用 ギリシャ

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(CNN) ギリシャの首都アテネといえば、くすんだ丘の頂にたたずむ代表的な古代建築が有名だが、開放的な緑地とはあまり結びつかない。だが、それも近いうちに変わるかもしれない。市内の旧国際空港および周辺の沿岸地区が、ロンドンのハイドパークをゆうに超える巨大臨海公園に生まれ変わろうとしているのだ。

かつてギリシャの玄関口としてにぎわっていたエリニコン国際空港の敷地は、20年近くも廃墟(はいきょ)の状態だ。2004年の夏季オリンピック期間中にソフトボール競技、ホッケー競技、フェンシング競技の会場として一時期使われたのを除けば、01年に廃業してから建物は放置されたままだった。今では古ぼけたスタンドの合間から、太陽で干からびた赤茶色の草が顔をのぞかせている。過去の栄光とはかけ離れたわびしい光景だ。

来年初頭にエリニコン・メトロポリタン・パークの着工が予定されている。600エーカー(約2.4平方キロメートル)におよぶ復旧計画はこの地域に新たな息吹を吹き込み、公園や遊技場、文化施設として機能する一方、市の気候変動対策強化にも期待が寄せられている。

「ギリシャにとっては一世一代の画期的なプロジェクトだ」と語るのは、ボストンを拠点とするササキ社のランドスケープアーキテクト、マイケル・グルーブ氏だ。この会社がプロジェクトを担当する。アテネ市民は「重要な公共用地が20年間も空き地状態だったことに不満を募らせている」と同氏は付け加えた。景観設計や都市開発で有名なササキ社は、これまでにニューヨークのグリーンエイカー・パーク、チャールストンのウォーターフロント・パーク、08年の北京五輪のオリンピック公園を手がけている。

過去に目を向ける

空港の歴史の一部は、新たな姿に生まれ変わって保存される。フィンランド系米国人の有名建築家エーロ・サーリネン氏が1960年代に設計したターミナルホールは、そそり立つ滑走路の照明塔とともにそのまま残される。滑走路に使われていた30万平方フィート(約2万8000平方メートル)を超えるコンクリートとアスファルトは、ベンチや道路の舗装など様々な用途に再利用される。

グローブ氏は、こうした「アップサイクリング」的なアプローチが、公園の環境貢献度の上昇に役立っていると語った。「敷地内にあるものを利用する。こんなに美しいコンクリートがそこら中にごろごろしている。ゴルフボール大の大理石の骨材が入った厚さ30インチ(約76センチ)のコンクリート片だ」。グローブ氏は、公園が一般公開されたあかつきには、メンテナンス用の車両を電気自動車(EV)化し、有機肥料や有機殺虫剤を使い、二酸化炭素排出量を最小限に抑えるつもりだと付け加えた。

公園全域には、86種の樹木3万1000本と300万本以上の植物を含むギリシャ原産種のみを植樹する。設計者はギリシャの種苗園と協力して、環境保護に有益で、乾燥化が進む現地の気候でも繁茂する複数の原産種を調達した。

すでにアテネでは、気温上昇や異常気象の頻発など、気候変動の影響が感じられる。18年にニューキャッスル大学が欧州571都市を対象に気候変動のリスクの分析調査を行ったところ、アテネでは50年までに、最悪の水準の深刻な旱魃(かんばつ)と熱波を何度か経験するだろうとの予測が出た。

都市部ではヒートアイランド現象により気温上昇はさらに悪化しているが、それは市内のコンクリートや石やアスファルトが熱を吸収・保持するためだ。こう説明するのは、アテネ市の猛暑対策主任で、米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」のアーシュロック・レジリエンス・センターの上級顧問を務めるエレーニ・ミリビリ氏だ。ミリビリ氏は「アテネは建物が非常に密集している。建物の表面がまちまちな状態は気温上昇にまったく適さない」と言い、建物の表面が水を吸収しないため、日常的になりつつある土砂降りの際には河川が氾濫(はんらん)する場合もあると付け加えた。

緑地があれば、こうした影響にも対処することができる。「基本的に、我々は80%ハードスケープの土地を80%ソフトスケープの土地に変えようとしている」とグローブ氏は言う。コンクリートや石を樹木や低木に置き換えれば、雨水を吸収し、冷却効果のある木陰を作ることが可能だ。

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