ギャラリー大久保 300万円以上する茶わんで茶道を体験

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ギャラリー大久保では、年代物の茶わんで茶道を体験できる/Brad Lendon/CNN

ギャラリー大久保では、年代物の茶わんで茶道を体験できる/Brad Lendon/CNN

(CNN) 古代からの日本の伝統に参加し、2万5000ドル(約360万円)もする骨董(こっとう)品の茶わんでお茶をいただき、さらに1970年代の「オースティン・パワーズ」の雰囲気も味わえる。

古物商の大久保満さん一家が東京都台東区谷中で営むギャラリー大久保では、古物商ならではの変わった方法で伝統的な日本の茶道を体験できる。客は使う茶わんを新品から300年以上前の年代物までそろった中から選ぶことができる。中には2万5000ドルもする博物館に展示されるレベルの貴重な茶わんもある。

このギャラリーでは、客に日本の茶道の達人らが望んだであろう方法で、しかも手頃な価格で、茶わんを感じ、茶を味わってもらおうと考えており、一般大衆でも体験可能な芸術と歴史がそこにある。

無論、300万円以上もする18世紀の高価な茶わんを誤って落としたらどうしようと冷や汗をかく人もいるだろう。そんな人のために、現代に作られた(比較的安価な)茶わんも用意されている。

ギャラリーの中に入ると、狭い1階にさまざまな茶わんや皿が展示されている。そして隣室にいた大久保さんの娘の敦子さんが客を出迎え、狭い階段を上って、2階の畳の茶室に案内する。

茶室には、西洋人の客が日本の伝統に倣って正座をしなくてもいいようにいすが用意されている。正座は慣れていないと足が非常に痛くてつらい。

茶室の脇の小部屋(水屋)には4段の棚に茶わんが置かれていて、客はこの中から好きな茶わんを選択する。茶わんを選ぶ前に、茶わんが作られた年代、産地、その茶わんを好んでいた茶人など、茶わんに関する興味深い情報を敦子さんが英語で説明してくれる。

敦子さんは、年代物の茶わんを見せながら客に茶道で使用する茶わんを選んでもらう/Brad Lendon/CNN
敦子さんは、年代物の茶わんを見せながら客に茶道で使用する茶わんを選んでもらう/Brad Lendon/CNN

古物商である敦子さんの父、満さんは、数多くの茶わんを取りそろえていたが、ギャラリーでの売り上げは低迷し、大半の茶わんは日の目を見ることなく、箱はほこりをかぶり、誰一人喜ばせることはなかった。敦子さんは、茶道体験でこの茶わんを使えば、日本を訪れる外国人旅行者に茶道体験を提供している他の業者との差別化が図れると考えた。

しかし、満さんは茶わんの収集・整理を続け、茶わんについて詳しく説明するのを楽しみにしている。満さんが集めた茶わんの中に、色が濃く、幅の広いベルギー製の茶わんがある。この茶わんはもともと他の用途のためにデザインされたが、ある茶道家が茶道に適していると判断した。

また色鮮やかな円、四角形、三角形の模様のある明るい色の茶わんもある。70年代に作られた茶わんにも見えるが、一方で米国映画「オースティン・パワーズ」の主人公で英国のスパイのオースティンがこの茶わんで茶を飲んでいる姿も目に浮かぶ。

それこそまさにこの茶わんが特別である理由だと満さんは言う。つまり、古代と現代の融合だ。この茶わんはわずか50年ほど前に作られたものだが、およそ1万5000ドルの価値があるという。

茶をたてる敦子さん/Brad Lendon/CNN
茶をたてる敦子さん/Brad Lendon/CNN

次に見せてくれたのは200年ほど前に作られた年代物だ。しかし素人目には左右非対称で、染みや汚れがあるなど、いくつか不完全な点があるようにも見える。

満さんは、この不完全さこそが人間(が作った作品)の証しだとし、だからこそ数千ドルもの高い値が付くのだという。

満さんは現代に作られた茶わんも見せてくれた。この茶わんは見た目が美しく、完璧だが、値段はわずか100ドルほどだ。

完璧というのはロボットのための言葉で、この茶わんはロボットだと満さんは言う。

しかし、ロボットの茶わんはいくらでも交換可能なので、2万5000ドルもする高価な茶わんを落としてしまわないかと不安な人はこの茶わんを選べばいい。またこの茶わんは子ども向きでもあり、両親は数千ドルの賠償の心配をすることなく、子どもたちといっしょに茶道を体験できる、と敦子さんは付け加えた。

この日の客たちが茶わん(300年前の茶わんと70年代の茶わん)を選ぶと、着物姿の敦子さんがお点前(てまえ)を始めた。

出されたお菓子/Brad Lendon/CNN
出されたお菓子/Brad Lendon/CNN

敦子さんは、客席に直角にひざをつき、念入りに、そして慎重にお茶を点てた。

長い棒の先についた木製の柄杓(ひしゃく)で釜から湯をくみ、その湯を茶わんに入れ、茶筅(ちゃせん)で茶をなじませる。聞こえてくるのは、敦子さんがかき混ぜる水の音と外にいる鳥の鳴き声だけだ。

アジサイの花の形をしたゼリーとあんこのお菓子が出された後、客が自ら選んだ茶わんに、泡立てられた熱い茶がたてられる。

客は決められた作法に従い、自ら選んだ高価な茶わんを手に取り、片方の手を茶わんの横、もう片方の手を底面に添える。

お茶の味は格別で、数万ドルの価値のある陶器を手に持っていることを忘れてしまうほどだ。日本でもこれほどの体験はなかなかできない。

敦子さんが備品や茶わんを丁寧に片付けていると、満さんが客に渡す土産を持って階段を上ってくる。土産は、それぞれの客が使った茶わんと食べたお菓子の手描きの彩色画で、茶わんの由来や重要性の説明も書かれている。

驚くことに、満さんが記憶のみを頼りに描いた絵には、70年代に作られた茶わんの幾何学模様が正確に再現されていた。これは(茶わんに精通している)満さんならではの芸術だ。

90分ほどの充実した時間を過ごしたが、ふと数万ドルもする茶わんが並ぶ棚の方を振り返ると、ここが地震国であることがどうしても気になってしまう。実際、地震の激しい揺れで棚から落ちて粉々に割れた茶わんや皿の写真や映像をよく目にする。

だからこそ、地震が起こったらまず茶室に駆け付けると敦子さんは言う。

営業時間は水曜日から日曜日の午前11時から午後6時まで。住所は東京都台東区谷中6―2―40で、複数の主要路線が乗り入れる日暮里駅から徒歩約15分。

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