感染拡大で米国に置き去りの飼い犬、1万6000キロ移動し飼い主と再会 豪

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5カ月間の紆余曲折を経て、米国から豪州への帰還を果たしたダックスフントのピップ/Courtesy Zoe Eilbeck

5カ月間の紆余曲折を経て、米国から豪州への帰還を果たしたダックスフントのピップ/Courtesy Zoe Eilbeck

(CNN) 新型コロナウイルスの感染拡大により、旅行先の米国に一時取り残されることになった豪州の家族の飼い犬が、5カ月近くにわたる紆余(うよ)曲折を経て豪州まで1万6000キロの距離を移動し、飼い主らと再会を果たす出来事があった。ペットに対する家族の愛情と、協力を申し出た人たちの善意が実を結んだ形だ。

豪州に暮らすゾーイさんとガイさんのエイルベック夫妻は今年、2人の息子とダックスフントのピップを連れ、ヨットによる世界一周の旅に出た。ところが新型コロナの感染拡大を受け、航海の継続を断念せざるを得なくなった。

3月27日、一家は米カリフォルニア州南部に寄港。米国による国境閉鎖が迫る中、大急ぎで豪州への帰国準備を整えた。

豪州は動植物の持ち込みに対する規制が厳しいためピップを連れての入国は出来ず、ゾーイさんたちはノースカロライナ州に住む友人にピップの世話を頼み、空路で帰国の途についた。その友人もピップの面倒を長期にわたって見ることは難しかったため、広告を出して新たな世話役を募集。同じ州に住むエレン・スタインバーグさんがこれに応募して、ピップを預かった。

エイルベックさん一家は帰国した後も、渡航制限の発動により、ピップを引き取りに米国へ戻ることはできなかった。このため、ピップは豪州へ帰る長旅を単独で行わなくてはならなくなった。

ピップの豪州への入国を可能にするべく、前出のスタインバーグさんは地元の動物病院へ出向き、必要な書類の作成やワクチン接種、血液検査を行った。

こうして入国の承認は下りたものの、豪カンタス航空が犬は搭乗させない方針を表明していたため、飼い主のゾーイさんは別のルートを探さなくてはならなかった。方々に問い合わせた結果、ニュージーランド経由での入国が可能であることを突き止め、ペットの輸送を専門とする航空会社ジェットペッツが運航する機体に乗って、ロサンゼルスからニュージーランドのオークランドまで移動させる手はずを整えた。

ノースカロライナ州のスタインバーグさんがピップを預かってから、この時点で3カ月が経過していた。ニュージーランド行きの便に乗せるには、同州からロサンゼルスまでピップを運ぶ必要がある。

ゾーイさんはソーシャルメディアへの投稿で、ピップと一緒にロサンゼルス行きの飛行機に乗ってくれる人を探した。すると犬の保護団体で働くメリッサ・ヤングさんが名乗りを上げ、ピップと仲良くなったうえでともに飛行機に搭乗。ノースカロライナ州シャーロットからロサンゼルスまでピップを送り届けた。

ロサンゼルスではジェットペッツが一晩かけて書類作成などの手続きを行い、ようやくピップはオークランドへ向かう機上の犬となった。

移動に関わった人たちが固唾(かたず)をのんで見守る中、太平洋を飛び越えてピップがオークランドに到着したのは7月23日。そのまま一晩隔離された後、豪メルボルンに移動した。そこでは豪州の規定に従い、さらに10日間の隔離措置を施された。

ピップは8月3日に飛行機でシドニーに向かう予定だったが、ちょうどメルボルンのあるビクトリア州が州境の封鎖に踏み切ったタイミングと重なり、シドニーのあるニューサウスウェールズ州への移動ができなくなった。メルボルンに住むゾーイさんの兄弟が数日の間ピップを預かることになったものの、シドニー行きの便はことごとくキャンセルされ、足止めの状態が続いた。

ここに至って地元メディアがピップの窮状を報道。事態を知ったヴァージン・オーストラリアが、ピップをシドニーに送り届けることを申し出た。

8月11日、テレビのカメラやリポーターが待ち構える中、ピップはシドニー空港に到着し、ついにエイルベック一家との再会を果たした。カリフォルニア州で離ればなれになってから5カ月が過ぎていた。

ピップが自分たちのことを忘れてしまっているのではないかと不安で仕方なかったというゾーイさんだが、家族の声を聞いたピップは、すぐ飼い主の腕に飛び込んできた。「これだけの月日を経て戻ってきてくれたのは、本当にすばらしいこと」とゾーイさんは感慨深げに語った。

ヨットの「クルー」の一員に戻ったピップは現在、家族が所有する船のデッキに寝そべり、楽しい日々を送っているという。

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