中国国内の親ロシア感情、匿名ツイッターが暴露 政府は不満募らす

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中国国内のネット世論の実態を晒すツイッターアカウントの存在が物議をかもしている/Adobe Stock

中国国内のネット世論の実態を晒すツイッターアカウントの存在が物議をかもしている/Adobe Stock

香港(CNN) 匿名のツイッターユーザーらの暴露により、過度な国家主義と親ロシア感情が蔓延(まんえん)する中国のネット状況が明らかになりつつある。中国政府はこうした状況に不満を募らせている。

この数週間、中国で最も人気のあるソーシャルメディアプラットフォームの画面の画像が多数翻訳され、ツイッターで共有された。西側のユーザーにとっては、中国のネットの実態を垣間見る珍しい機会となっている。

代表的な投稿は以下のような内容だ。

有力な軍事関係のブログが誤った主張を展開し、ウクライナ東部クラマトルスクの鉄道駅に対するロシア軍による攻撃は実際にはウクライナ側が行ったと述べる。よく知られたメディアコメンテーターがウクライナ首都キーウ(キエフ)郊外の町ブチャでの残虐行為を否定する。数十万人のフォロワーを抱える動画版ブロガー(ブイロガー)が、ウクライナに向けて女性蔑視的発言をする。

こうした投稿を行っているとみられる匿名のツイッターユーザーらは、自分たちの目的について、西側の閲覧者たちに対し中国のネットの実態を明らかにすることだと説明。厳しい検閲を受ける同国のプラットフォームで、本当はどれほど親ロシア的もしくは国家主義的な内容が語られているかを暴露するための行動だと述べている。

投稿はたいてい「大翻訳運動」のハッシュタグを伴い、同名のアカウントにより共有される。アカウントの管理者の1人はCNNの取材に答え、ウクライナ情勢など注目の話題に関する人気の高い投稿をクラウドソーシングにより収集・翻訳していると説明した。すべてではないまでもそれらの多くは中国国内で広く好感、共有されているものであり、管理者側もそうした反応を投稿の選択基準にしているという。

アカウントを立ち上げた3月初旬以降、運動はすでに数多くの味方と敵を作ってきた。現時点で12万人のフォロワーを抱える一方、中国の国営メディアからは盛んに批判を浴びている。

そもそも運動を立ち上げた背景には、中国がウクライナ問題で取った偽善的ともとれる姿勢にあると、上記の管理者は明かす。中国は自らの立場を中立としたが、国営メディアやSNSでは親ロシア的な言説が広まっていた。

安全上の懸念から匿名で取材に応じたこの管理者は「外の世界には、少なくとも中国国内で何が起きているのかを知ってほしかった。国の中からは何も変えられないと思ったから」と話した。

中国国営メディアは問題の投稿について、「都合の良い内容だけを選んでいる」と非難。中国共産党機関紙、人民日報の海外支局は、翻訳者たちが一部ユーザーの「極端な意見」を「国全体の」見解のように捉えていると糾弾した。

国営紙の環球時報も、運動に携わるグループを「中国語を操る邪悪な活動主体」と断じた。また論説記者の一人はグループの中に「外国の敵対勢力」が入り込み、「中国に対する心理的な戦争を仕掛けてきている」と主張した。

国営メディアによるこうした反発は、中国が国際舞台で自国をどのように見せるかについていかに神経をとがらせているかを浮き彫りにする。特に現在はウクライナを巡り、ロシアと西側の間で微妙な外交的バランスを取らなくてはならない状況だ。

中国はしばしば、国内向けと国外向けに用意された2つの異なる言説を発信しようとする。それを可能にするのは言語の違いから生じる障壁と、米国のSNSの利用を禁止した国内のネット環境だ。大翻訳運動は、これら両方の壁を突き崩した。

香港大学で中国メディアに関する研究プログラムを統括するデービッド・バンドルスキー氏によれば、ソーシャルメディアの時代以前から、中国にとって国営メディアを通じ国内で発信する内容が世界に向けて翻訳されるのは好ましいことではなかった。

ウクライナ問題について言えば、少なくとも国外の人々に対しては、どちらの側にもつかず和平を呼び掛ける立場を示すというのが中国の望んでいることだが、(国営)メディアの実際の報道は中立とは言い難く、ロシア寄りの内容だとバンドルスキー氏は指摘する。

とはいえ状況は複雑だ。中国政府は超国家主義的な思想にも警戒感を抱いており、プラットフォーム上ではそうした意見に検閲がかかることもある。また国家主義的コメントがネットを席巻していたとしても、それらが実際に多数派を形成しているとは限らない。

バンドルスキー氏は似たケースとして米国のメディア環境に言及。一部の超保守的な意見を目にしたときにそれが米国全体を代表するもののように思えることがあるが、中国の場合もこれと同じで、実態はもっと込み入っていると指摘する。

大翻訳運動の管理者は、自分たちの取り組みを契機に中国政府には各種プラットフォームでの言説を和らげてほしいと期待を寄せる。そうなることで、より多くの意見を語る余地が生まれると考えるからだ。

「今の中国では、主流の言論空間で理性的に発言できる場があまりにも限られている」「発言が削除されずに残ったとしても、非難のコメントを浴びせられ、スパイ呼ばわりされるようになる。声を上げた人自身の尊厳が破壊される」(同管理者)

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