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青色から変更に――エアフォースワンの傑作デザインを振り返る

米大統領専用機「エアフォースワン」の現在の外観はまさにデザインの傑作といえる。その採用は1962年にさかのぼり、ジョン・F・ケネディ元大統領と産業デザインの開拓者のひとりであるレイモンド・ローウィ氏の共同作業が結実したものだ。

しかし、11の歴代政権のもとで50年以上が経過した今、エアフォースワンのエレガントな塗装は模様替えの動きが進んでいる。トランプ大統領は現在の外観が好きではないとして、青い色を変更する意向を表明。米ニュースサイト「アクシオス」によると、「より米国的な」外観にしたい考えだという。

現在の機体が寿命を迎え、新たな技術の出現で代替わりが必要となる中、トランプ氏の構想いかんにかかわらず、次期大統領専用機は異なった装いをまとう可能性が高い。

1機だけではない大統領機

「エアフォースワン」は厳密には航空機の名称ではなく管制官が使うコールサインで、大統領を乗せたあらゆる機体を指す。ただ一般的には、ボーイング747-200B型機の改造モデルにこの名前が適用されている。少なくとも1機が常に態勢を整えておけるよう、ほぼ同一の機体が2つ存在する。違うのは尾翼に付されるテールコードだけで、1機が「SAM28000」、もう1機は「SAM29000」となっている。

「エアフォースワン」のコールサインが採用されたのは1953年。同一のテールコードを持つアイゼンハワー大統領の搭乗機と商用機が同じ空域に入ってしまい、危険な事態を招いたのを受けてのことだった。この時の大統領機はロッキード社のプロペラ機「C121コンステレーション」だったが、最初の大統領専用ジェット機に搭乗したのもやはりアイゼンハワー氏で、59年にボーイング707の改造機が就航した。当時の機体はまだ完全な軍用機であり、空軍のデザインによる赤とオレンジ、黒の色彩構成を取っていた。

ローウィ氏による現行デザイン以前の大統領機からジョン・F・ケネディとリンドン・ジョンソンの両元大統領が降機する様子/Michael Rougier/The LIFE Picture Collection/The LIFE Picture Collection/Getty Images
ローウィ氏による現行デザイン以前の大統領機からジョン・F・ケネディとリンドン・ジョンソンの両元大統領が降機する様子/Michael Rougier/The LIFE Picture Collection/The LIFE Picture Collection/Getty Images

今日まで続く革新的なデザインが導入されたのは、テールコード「SAM26000」の新型ボーイング707でのことだ。同機は62年10月に就航している。

エアフォースワンの歴史の専門家、ボン・ハーデスティー氏はこのデザインについて「ジョン・F・ケネディとジャッキー・ケネディ、そして高名な産業デザイナーであったレイモンド・ローウィの興味深いやり取りから生まれた」と指摘する。

フランス生まれのローウィ氏は当時大きな成功を収めていたデザイナーで、ラッキーストライクのたばこの箱やコカコーラの自販機など、数々の象徴的なデザインを手がけていた。「彼は大統領機が派手なオレンジ色の機首を備え、あまりに軍用機風の外観をまとっていることを批判していた。大統領の地位を反映するようなものにしたいと考えており、これを真に魅力的なデザインを作る好機と捉えた」

新デザインを最初にまとったエアフォースワン「SAM26000」/National Museum of the U.S. Air Force
新デザインを最初にまとったエアフォースワン「SAM26000」/National Museum of the U.S. Air Force

「海の泡」のような青

ローウィ氏の当初のスケッチには赤をあしらったものもあったが、最終デザインでは除外された。基調となる青の塗装はケネディ氏の要請を受けて採用されたものだ。「機体の下半分にシーフォームブルー(海の泡のような青)と銀色を配したのは天才的なひらめきで、より水平的でなめらかな外観を実現した」。こう語るのは米グラフィックアート協会のショーン・アダムス元会長だ。

退役直前に滑走路に駐機する「SAM27000」=2001年、テキサス州/PAUL BUCK/AFP/AFP/Getty Images
退役直前に滑走路に駐機する「SAM27000」=2001年、テキサス州/PAUL BUCK/AFP/AFP/Getty Images

「シーフォームブルーは驚きの選択だが、機体を洗練されたモダンなものとし、アイゼンハワー時代の軍用機風の外観から離れるうえでは見事な解決策だった」

米国立空軍博物館に展示されている「SAM26000」=オハイオ州デイトン/Matt Sullivan/Getty Images North America/Getty Images
米国立空軍博物館に展示されている「SAM26000」=オハイオ州デイトン/Matt Sullivan/Getty Images North America/Getty Images

この航空機はクリントン政権時代まで現役を続けたが、大統領用の主力機としては72年に別のボーイング707型機に取って代わられた。「SAM27000」のテールコードを持つ同機はニクソン氏からジョージ・W・ブッシュ氏に至る7代の大統領のもとで任務をこなし、2001年に退役している。

赤、白、青

レーガン政権時代には、新世代のエアフォースワンを開発する作業が始まった。内装デザインを取りまとめたのはナンシー・レーガン夫人だ。しかし幾度にもわたる遅れの末、やっと就航したのはジョージ・H・W・ブッシュ政権下の1990年のことだった。ほぼ全てのシステムが更新されたが、塗装はそのままだった。ハーデスティー氏は「良いデザインには一種の惰性が生じ、変更に当たりやむを得ない理由が必要になる。当時は既に、このデザインが広く受け入れられ称賛を集めていたため、新しい747型機でも同様にしたいという声が強かった」と話す。

これらの機材は今日でも使われている。ローウィ氏のデザインは大型機である747の採用に伴い、若干の調整を経ただけだ。

テーゲル空港に駐機する「SAM28000」=2013年、ベルリン/Sean Gallup/Getty Images Europe/Getty Images
テーゲル空港に駐機する「SAM28000」=2013年、ベルリン/Sean Gallup/Getty Images Europe/Getty Images

ボーイングは昨年7月、新たな大統領専用機2機の開発で39億ドル規模の契約を受注したことを明らかにした。老朽化しつつある747型機は民間航空会社では引退が進んでいるが、新たな大統領機もベースは747となる見通しだ。

航空専門家のジーン・アイスマン氏はこの理由を「シークレットサービス(大統領警護隊)は安全面を考慮して、大統領には4発エンジン機以外に乗らないよう求めている」と説明。複雑な通信機器などを搭載するためのスペースの広さにも言及した。

ただ、最も重要なのは新しい外観だ。トランプ氏は米CBSテレビのインタビューで、新たなエアフォースワンについて「世界最高のものになる。赤、白、青が適切だ」と語った。

もっとも、実際にどういう展開になるかはまだ不透明だ。可能性としては低いが、新たな機体の就航を2024年まで待つよりも、現行機を塗り替える決定をトランプ氏が下すこともあり得る。

ボン・ハーデスティー氏によれば、エアフォースワンのデザインの実装に関して決まったルールはないことから、あらゆる展開が考えられる。「私は現行のデザインが好きだ。だが大統領の考えはおそらく、専用機はより明確な形で米国の愛国心を反映するべきだ、というものだろう。赤、白、青はもちろん愛国心と同義だ。大統領が塗装の見直しや変更を望むのであれば、それを妨げる歴史上の前例はない」

ただ、ハーデスティー氏はこうも付け加えた。「あらゆる人が満足できて受け入れられる形にしてほしい。とにかく見苦しい論争にならなければいいのだが」

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