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貴重な「ガリレオの手稿」、偽物だった 米大学図書館が発表

ガリレオが木星の衛星の発見について記したメモとされてきた手稿が贋作と分かった

ガリレオが木星の衛星の発見について記したメモとされてきた手稿が贋作と分かった/University of Michigan Library

米ミシガン大の図書館に所蔵され、イタリアの著名な天文学者ガリレオ・ガリレイが書いた貴重な品と考えられてきた手稿は偽物だったことが判明した。同大が明らかにした。

声明によると、「ガリレオ手稿」の名で知られる1ページの文書は1930年以前のものとは確認できず、悪名高いイタリアの贋作(がんさく)者トビア・ニコトラの手で書かれた可能性が高いという。

調査が始まったきっかけは、米ジョージア州立大学の歴史学者ニック・ワイルディング氏がミシガン大の学芸員パブロ・アルバレズ氏に連絡を取ったこと。ワイルディング氏は手稿の透かしや出所を疑問視し、手稿が本物かどうか強い疑念があると伝えた。

ミシガン大の声明では「ワイルディング氏は調査の結果、当大学の所蔵するガリレオの手稿は有名な贋作者トビア・ニコトラが偽造した20世紀の偽物だと結論づけた」と説明。「当大学の専門家がワイルディング氏の示した最も有力な証拠(紙や出所についての証拠)を調べ、手稿について再検証したところ、我々も同じ結論に至った」としている。

ワイルディング氏は紙そのもの、特に透かしに入っているモノグラム(文字を組み合わせた文様)を疑問視した。これらのモノグラムの年代を考慮すると、手稿が18世紀より前のものであることは考えられないという。

ニコトラは1934年、ガリレオ関係の複数の文書などを偽造した罪で禁錮2年を言い渡された。

ミシガン大は現在、同大のコレクションにおけるこの手稿の位置づけを見直している。

1636年に描かれたガリレオ・ガリレイの肖像画/Imagno/Getty Images
1636年に描かれたガリレオ・ガリレイの肖像画/Imagno/Getty Images

偽造と確定する前、同大はこの文書を「ミシガン大図書館の至宝のひとつ」と表現していた。

これまで、この文書はガリレオによる木星の4つの衛星の発見について記したメモとされてきた。

ミシガン大の説明では「地球以外の天体を周回する物体について記した初の観察記録」「ガレリオの人生の転換点、宇宙に関する私たちの理解を一変させるきっかけになった出来事を記したもの」としていた。

1642年に死去したガリレオの数ある功績の一つとしては、望遠鏡の製作が挙げられる。木星に衛星があるという発見が可能になったのは望遠鏡のおかげだ。ガリレオはその後、地球が宇宙の中心に固定されているとの見方を否定するコペルニクス天文学の主要な提唱者となった。

ミシガン大が手稿を取得したのは1938年。書物や手稿の収集家だった米デトロイトの実業家、トレーシー・マクレガー氏から寄贈された。同大によると、マクレガー氏が手稿を入手したとき、当時ピサの大司教だったピエトロ・マッフィ枢機卿は「この紙片を自分のコレクションにあるガリレオの手書き書簡と比較して」、本物だと太鼓判を押していたという。

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