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ダビンチ作のクマの素描が競売へ、予想落札価格17億円超

7月にオークションにかけられるダビンチの素描「クマの頭部」

7月にオークションにかけられるダビンチの素描「クマの頭部」/Courtesy Christie's Images Ltd

イタリアの巨匠レオナルド・ダビンチが描いたとされる小さなクマの素描が競売にかけられる見通しとなった。落札価格は1600万ドル(約17億円)を超えると予想されている。

オークションを運営するクリスティーズは同作について、現在民間が所有するダビンチ作のわずか8枚の素描の一つと説明する。

大きさは52平方センチメートルに満たない小さな素描で、淡いピンクがかったベージュの紙に銀筆で描かれている。この技法はダビンチが師であるアンドレア・デルベロッキオから学んだもの。化学処理した紙の上に細い銀の棒や芯を用いて絵を描いていく。

実際のところ、素描の持ち主は数世紀の間に何度か変わっている。1860年にはクリスティーズで競売にかけられ、わずか2.5ポンドで落札されたこともあった(現在の貨幣価値で4万8000円ほど)。その後はロンドンのナショナル・ギャラリー、ルーブル・アブダビ、ロシア・サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館といった主要な施設が「クマの頭部」と題されたこの素描を展示してきた。

クリスティーズ・ニューヨークの巨匠による絵画の担当者はプレスリリースで、素描を「ルネサンス期に描かれ、今なお民間の手にある最も重要な作品の一つ」と形容。「過去の所有者には巨匠絵画の分野で最も著名な部類のコレクターが名を連ねる。そうした人々の下を何世紀もの間渡り歩いてきた」と付け加えた。かつての所有者には画家のトーマス・ローレンスや美術収集家のノーマン・ロバート・コルビルが含まれる。

素描は画家のサイン入りで、今月香港で展示される予定。その後ロンドンに運ばれて7月にオークションにかけられる。予想落札価格は800万~1200万ポンド(約12億~18億円)。

解剖学に精通

ダビンチの素描として過去のオークションで最高値を付けたのは「馬と騎手」と呼ばれる作品で、2001年に800万ポンドで落札された。

クリスティーズ・パリで巨匠作品部門の国際責任者を務めるステイン・アルステーンス氏は、「7月のオークションで『クマの頭部』が新記録を達成すると信じるに十分な理由がある」言い切る。同氏が声明で明らかにしたところによると、この作品は「ダビンチの描いた素描として、市場に出回る可能性のある最後の部類に入る」という。

ただ落札価格は、巨匠絵画全体での現在の最高記録には届かない公算が大きい。2009年にはラファエロの「ムーサの頭部」がロンドンでのクリスティーズのオークションで約4900万ドルで落札された。これはローマ教皇ユリウス2世の依頼でバチカン宮殿の署名の間に描かれたフレスコ画のための習作だ。

ダビンチは「モナリザ」や「最後の晩餐(ばんさん)」などの油彩で最もよく知られているが、解剖学的な素描でも名声を博した。数学的な正確さを伴って男性の裸体を描いた「ウィトルウィウス的人体図」はしばしばダビンチの最高傑作の一つと評されている。

自然界に魅了されていたダビンチは、その生涯でクマのほかにも数多くの動物の素描を完成させた。猫や犬、歩くクマなどを描いた素描は大英博物館やメトロポリタン美術館といった施設で展示されている。

他には宗教上の人物や聖書の場面を題材にした素描もある。16年、「聖セバスティアンの殉教」と題された素描はオークションで1500万ユーロ(現在のレートで約19億8000万円)の予想落札価格をつけたが、フランス政府が同作を国宝と宣言したため競売にはかけられなかった。

今年7月のオークションでは、18世紀に作られた太陽系儀付きの時計や、アメジストとオルモルで装飾した同じく18世紀のポプリ壺(つぼ)が目玉として出品される。

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