Architecture

中国の「最も醜い建物」コンテスト 年末にトップ10発表

Wang HE/Getty Images

今年の「中国で最も醜い建物」を決めるコンテストに、 バイオリンの形をした教会や、「逆さま」の家、ロシアの人形をモデルにしたホテルなどがノミネートされた。

習近平(シーチンピン)国家主席が「巨大で、ゼノセントリック(異種中心主義的)かつ風変わり」な建物に対する禁止令を出してから5年が経過した今年、中国の建築サイト「Archcy.com」は、毎年恒例の第12回「最も醜い建物コンテスト」にノミネートされた約90の建物を発表した。

今回ノミネートされた建物は超高層ビル、博物館、ホテル、スポーツ施設と多岐にわたり、中国の「奇妙な建物が多い国」という評判に貢献してきた珍しい形の建物や眉をひそめたくなるような装飾が施された建物が集まった。

本記事の執筆時点の投票数はすでに3万票を超えている。現在、浙江省の首都杭州にある浙江大学の5つのアーチが連なるゲートが首位に立っており、両端に伝統衣装を着た巨大な男女の像がある四川省のガラス張りの橋が僅差で続いている。

他にも、巨大なカップ麺の器が並んでいるように見える博物館や、1本の波状の屋根でつながっている複数のタワーが1.5キロにわたって連なるG60科創雲廊などがノミネートされている。

建設時の「G60科創雲廊」/Costfoto/Barcroft Media/Getty Images
建設時の「G60科創雲廊」/Costfoto/Barcroft Media/Getty Images

12月に投票が締め切られた後、建築家、評論家、学者で構成される審査委員会による選考が行われ、周囲との「調和が取れていない」か、デザインが盗作と考えられるか、など9つの基準を基に評価される。主催者によると、2021年の「最も醜い」建物トップ10が年末に発表され、一般投票の結果が最終決定に反映される割合は4割だという。

近年、一般投票で選ばれた建物・建造物の中には、カニのような形をした文化センターや6個の特大の「ダイヤモンド」で飾られた歩道橋などがある。

急速に都市化が進み、国内の超高層ビルの竣工(しゅんこう)数が世界の他の国々の竣工数の合計を上回っている中国では、デザインに疑問符が付く建物は枚挙にいとまがない。しかし、たしかに中国には冗談交じりの「最も醜い建物」コンテストの候補に挙がる建物は他にも数多く存在するが、今同国の建築家や開発者らは、より厳格な建築基準法や都市計画規制に直面している。

昆明市にあるリング型の歩道橋/TPG/Getty Images
昆明市にあるリング型の歩道橋/TPG/Getty Images

習主席は長年、中国には奇抜な建築が多いという評判に懸念を示してきた。中国国営メディアの報道によると、習主席は14年に北京で開催された文学のシンポジウムで、変わった建物の建築をあからさまに批判したという。それ以来、習政権は国内で建設される建物の外観の規制に努めてきた。

20年6月、中国の住宅・都市農村建設部と、強い影響力を持つ経済計画機関の国家発展改革委員会(NDRC)が、高さが500メートルを超える「模倣」建築物や超高層ビルの建設中止を呼びかける通知を出した。またNDRCは今年、高さ500メートル以上の超高層ビルの新規建設を認めないと改めて表明し、さらに「醜い」建物の建設を「厳しく禁止」し、「(その場所に)適した、安価で、環境にやさしく、美しい」建物を支持する方針を示した。

高層ビルに関する国際非営利団体(NPO)、高層ビル・都市居住協議会(CTBUH)によると、中国国内には高さが500メートルを超える超高層ビルはわずか5棟しか存在せず、そのような超高層ビルの建設禁止の影響を受ける中国の建築家は実際にはほとんどいないという。しかし、中国政府が新たに出した一連の声明には、あまり目立たないが、影響が広範囲に及ぶ可能性のある数多くの提案が含まれている。

この提案には、多くの欧米諸国で見られるような各都市のチーフアーキテクトの任命、都市計画に関する規制に従わない設計士をブラックリストに載せる仕組み作りなどが盛り込まれている。また中国政府は、歴史的建物の取り壊しをけん制する一方、「中国の特徴を強調する」デザインを奨励している。その一例として、北京市最高層の建築物である「中国尊」の建設を担当した米国人建築士は19年にCNNが行ったインタビューで、建設の途中で副市長執務室から「あまり中国的ではない」との指摘を受け、デザインの修正を余儀なくされたと語った。

リスト入りした博物館のひとつ「襄陽科技館」/Li Fuhua/VCG/Getty Images
リスト入りした博物館のひとつ「襄陽科技館」/Li Fuhua/VCG/Getty Images

無論、中国の官僚が行うことなので、新たな規制が実施されるまで時間がかかる可能性もある。英リバプール大学の建築学教授で都市政策が専門のフェイ・チェン氏によると、新たなガイドラインは各都市に広範な枠組みを示すのみで、詳細は各地域で解決する必要があるという。

チェン氏は、住宅・都市農村建設部から通知が出された当時、「どのようなデザインが優れたデザインかについて(政府から)明確なガイダンスがあれば建築家や都市計画者は助かるかもしれない」と述べた上で、「しかし、そのガイダンスは各地域の実情に沿っている必要があるが、中央政府がそのようなガイダンスを作成できるとは思えない。ある状況で有効なガイダンスが、別の状況でも有効とは限らない」と付け加えた。

全国の建築基準にもかなりばらつきがあるとチェン氏は指摘する。

「東海岸の都市やより発展した地域では、建築家の設計スキルが高いので、質の高い建物を造るが、内陸の都市では依然として他の建物のスタイルや建築言語をまねた建物が散見する。そしてそれが大変素晴らしいデザインが生まれない原因だ」(チェン氏)

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