Architecture

アマゾン、第2本社の新計画案を発表

Courtesy NBBJ/Amazon

米アマゾンが新本社の設計案を発表した。屋外円形劇場に農産物を販売するための公共広場の設置、二重らせんからヒントを得た高さ約107メートルのオフィスタワーの建設などが計画されている。

アマゾンが2月に発表し、承認を得るために当局に提出したこの計画書は、同社がバージニア州アーリントン郡で開発を進めている総工費25億ドル(約2700億円)の第2本社(HQ2)建設プロジェクトの第2期の計画案だ。

アマゾンがシアトルの本社に次ぐ第2本社の建設を発表してから3年以上が経過したが、現在、バージニア州の現場(ポトマック川を挟んでワシントンDCの対岸に位置する)では建設が順調に進んでいる。今回新たに発表された「ペンプレイス」と呼ばれる第2期計画案によると、22階建てオフィスビル3棟を合わせたオフィススペースの総面積は約26万平方メートルにも及ぶ。

アマゾンによれば、「ヘリックス」は毎月最低2回の週末に公開される/Courtesy NBBJ/Amazon
アマゾンによれば、「ヘリックス」は毎月最低2回の週末に公開される/Courtesy NBBJ/Amazon

この第2本社の目玉は、「ヘリックス」と呼ばれる木で覆われたガラス張りのタワーだ。このヘリックスでは、屋内庭園や近隣地域から運ばれた木々の間の中に「代替的な職場環境」が設置される。敷地内の植物の手入れは、園芸家のチームが行う。

同プロジェクトを手掛ける建築事務所NBBJによると、ヘリックスの外側には従業員や訪問者が登れるらせん状の歩道が設置されるという。

NBBJの社長で主任建築士を務めるデール・アルバーダ氏はビデオインタビューの中で、「現場では、人々と自然を結び付けるためのさまざまな取り組みを行っている」とし、同社の設計は自然と科学の両方を象徴することを目指していると付け加えた。

さらにアルバーダ氏は「しかし、ヘリックスではその目標に極限まで取り組んでいる」とし、「(ヘリックスの中に)複数のアトリウムや屋内庭園を造っているが、それらは単なる温室ではないし、見物に行く場所でもなく、人々が実際に働きに行く職場だ」と述べた。

公募

ヘリックス自体はたまにしか一般公開されない(アマゾンに確認したところ、毎月最低2回の週末に公開するとのこと)が、敷地のその他の部分はコミュニティーによる利用を目的として作られている。

新しい計画案には、広さ約1ヘクタールの公共広場が含まれ、そこにはアート・インスタレーション(芸術作品が設置された空間)、芝生の共用スペース、250席ある円形劇場が設置される。また屋外広場には、移動式の屋台や農産物市場が並び、1階には店舗やレストランが入る。

敷地内の大部分は一般の人たちも利用可能になる見通しだ/Courtesy NBBJ/Amazon
敷地内の大部分は一般の人たちも利用可能になる見通しだ/Courtesy NBBJ/Amazon

アルバーダ氏は「この計画がうまくいけば、訪れた人は自分がアマゾン本社の敷地内にいることすら気づかないかもしれない」と述べ、オフィスビルのロビーを含め、敷地内の「大部分」は一般の人も利用可能にすると付け加えた。

「(ハイテク企業の)コーポレートキャンパスは常に人々の話題に上るが、コーポレートキャンパスには柵や塀で囲まれた場所(というイメージ)が付き物だ。(中略)しかし、われわれはそういった閉鎖的なキャンパスではなく、『近所』と呼びたくなるような場所を目指している」(アルバーダ氏)

計画案には、歩道網や歩行者専用スペース、950台以上の自転車を収容可能な駐輪場もある。駐車場や荷物の積み下ろしのためのスペースは地下に設置し、周辺エリアに業務用の車両や配送車が入らないようにする。

アマゾンの従業員は、地下鉄で15分以内にワシントンDCの繁華街に出られる。同社の最高経営責任者(CEO)ジェフ・ベゾス氏も2016年に、ワシントンDCに価格が2300万ドルと言われる大邸宅を購入している。

計画案には広さ約1ヘクタールの公共の広場が設けられている/Courtesy NBBJ/Amazon
計画案には広さ約1ヘクタールの公共の広場が設けられている/Courtesy NBBJ/Amazon

本社全体は、約320キロ離れたバージニア州南部にある太陽光発電所で生み出された再生可能エネルギーで稼働する予定だ。その他の環境に配慮した設計上の特徴としては、雨水を再生利用するシステムや自然換気の利用が挙げられる。またアルバーダ氏によると、本社の建物は、差し込む日光の量を最大化し、必要とする人工照明の量を減らす設計になっているという。

長期計画

2017年にアマゾンが第2本社の建設計画を最初に発表した時、米国の多くの都市や州から230件以上の提案が寄せられた。

アマゾンは18年末に、バージニア州北部とニューヨーク市の2カ所に第2本社を建設すると発表した。しかし、ニューヨーク市での建設案(当初はクイーンズ区ロングアイランドシティーでの建設が予定されていた)は、地元コミュニティーからの反発を受け、数カ月後に廃案となった。当時アマゾンは、ニューヨーク州や地元の多くの政治家が、同社の第2本社建設に反対の立場を明確にしたと述べた。

店舗の並んだスペースからみえるヘリックスのイメージ図/Courtesy NBBJ/Amazon
店舗の並んだスペースからみえるヘリックスのイメージ図/Courtesy NBBJ/Amazon

一方バージニア州は、アマゾンを誘致するために寛大な減税や金銭的インセンティブを提示している。アマゾンは、アーリントン郡の本社に勤務する従業員数は最終的に2万5000人に達すると見込んでいる。またテネシー州ナッシュビルのより小規模な施設でも5000人の雇用を生み出す計画だ。

アマゾンと同様にシアトルに本社を置くNBBJは、これまでに韓国のサムスン電子や米マイクロソフトといった大手企業の本社の設計を手掛けてきた。20年6月には、中国のIT大手、騰訊(テンセント)が広東省深セン市に建設する「未来都市」の計画案を発表した。この未来都市は、モナコに匹敵する広さで、敷地の大部分で車の乗り入れが制限される。

アマゾンのペンプレイス案が承認されれば、同プロジェクトの第2期は2022年に着工し、25年までに完成する予定だという。

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