Architecture

世界の超高層ビル竣工数、コロナ禍で前年比2割減

Courtesy of Rex Zou

2020年に新たに建設された超高層ビルの数が前年から2割以上も減少したことがわかった。国際非営利組織(NPO)高層ビル・都市居住協議会(CTBUH)のデータから明らかになった。

20年に世界で完成した高さ200メートル以上の高層ビルの総数は106棟で、19年の133棟から減少し、14年以降の最少記録だった。

CTBUHは年次報告書の中で、高層ビルの建設が減少した主な原因として新型コロナウイルスを挙げ、集団での作業が制限される中、世界中の高層ビル建設プロジェクトが「停止した」と述べている。CTBUHは、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)が直接の原因で遅延したプロジェクトは9件しか確認できなかったが、パンデミックの結果「困難に直面した」プロジェクトは他にも数多く存在すると推測した。

「セントラルパークタワー」は高さ472メートルと2020年に竣工した高層ビルの中で最も高い/Courtesy of Lester Ali
「セントラルパークタワー」は高さ472メートルと2020年に竣工した高層ビルの中で最も高い/Courtesy of Lester Ali

毎年、世界で建設される超高層ビルの大半は中国のビルだが、その中国でも20年に建設された高層ビルは19年に続き、さほど多くはなかった。中国で20年に建設された高さ200メートル以上の高層ビルは56棟で、19年からわずか1棟しか減少しなかったが、19年は前年から約4割も減少していた。

中国で高層ビルの建設が減少した原因について、CTBUHは、新型コロナウイルスの影響よりも中国で生じている「より広範な変化」によるところが大きいとし、具体例として中国が債務を減らそうとしていること、そして急激に進む「超」高層ビルの建設に対する当局の態度が変化しつつあることの2点を挙げた。中国国務院(内閣に相当)は16年に「高すぎる上に、異様かつ不気味な」建物を建てないよう呼びかけ、さらに20年6月には高さ500メートルを超える超高層ビルの建設を禁止した。

それでもなお、20年に世界で建設された高さ200メートル以上の高層ビルの半数以上は中国で建設された。また、同年に建設された超高層ビルランキングの上位10棟の半数を中国のビルが占め、その中には新型コロナウイルスの世界的流行の震源地である武漢の超高層ビル(高さ339メートル)も含まれている。

2020年に竣工したビルでは5番目の高さを誇る「深業上城」/Courtesy of Dave Burk
2020年に竣工したビルでは5番目の高さを誇る「深業上城」/Courtesy of Dave Burk

ドバイ、ニューヨークはコロナ禍でも活況

中国で超高層ビルの建設が減少した結果、20年の世界の超高層ビル竣工(しゅんこう)棟数ランキングでは他の国・都市の躍進が目立った。20年に超高層ビルの竣工棟数が世界で最も多かった都市はドバイで計12棟が竣工し、15年以降で初めて中国・深セン市から首位の座を奪った。

ニューヨーク市では、20年に世界で建設された高層ビルの中で最も高いビル2棟が建設された。1位は超高級コンドミニアム「セントラルパークタワー」で高さ472メートル、2位はオフィスビル「ワン・ヴァンダービルト」で高さ427メートルだ。世界で竣工した超高層ビルの中で最も高いビルが中国以外で建設されたのは5年ぶりだった。

その他の国では、インドとメキシコでも、20年にそれぞれムンバイとモンテレイに両国内で最も高い高層ビルが完成した。また英国では、欧州連合(EU)からの離脱により景気の先行きが不透明であるにもかかわらず、20年にロンドンで高さ200メートル以上の高層ビルが4棟も建設された。これはロンドンで1年間に建設された高層ビルの最多記録だ。

2020年に最も高層ビルが誕生した都市はドバイだった/Courtesy of Fosters+Partners
2020年に最も高層ビルが誕生した都市はドバイだった/Courtesy of Fosters+Partners

CTBUHは、21年に世界の高層ビル竣工件数は回復すると見ており、同年に全世界で高さ200メートル以上の高層ビルが125~150棟建設されると予想している。

しかし、CTBUHの報告書は、新型コロナウイルスの長期的影響がまだ完全には具現化していない可能性があることも示唆している。高層ビルの建設には数年を要するため、現在の投資の減少が、将来の高層ビルの竣工件数にさらなる影響を与える可能性もある。

CTBUHは報告書の中で「高層ビル(の竣工件数)はさまざまな経済指標に遅れて出てくることが多いため、景気の悪化や(新型コロナウイルスの感染拡大による)建設作業の中断が新規プロジェクトの着工や20年に建設中だったプロジェクトに何らかの萎縮効果をもたらしたか否かは今のところ不透明だ」とした上で、「しかし、08年の経済危機は、竣工率の低下という点では、10年と11年まで超高層ビルの建設に反映されなかったことは忘れてはならない」と指摘している。

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