Architecture

ヒトラーの生家、警察署に改築

Marte.Marte

オーストリアは、ドイツとの国境近くの町ブラウナウ・アム・インにあるアドルフ・ヒトラーの生家を警察署に作り替える計画を発表した。この建物をめぐっては、長い間、論争や法廷闘争が続いていた。

3階建てのこの建物は、大規模な改築が行われる予定で、オーストリア当局は、改築によりこの場所がナチス・シンパの「巡礼地」となるのを防ぎたい考えだ。

ヒトラーは1889年4月20日にこの建物内の一室で生まれた。ヒトラーの父は町で税関職員として勤務していた。一家はヒトラーが3歳の時、当時オーストリア・ハンガリー帝国の一部だったブラウナウ・アム・インを後にした。

アドルフ・ヒトラーが生まれた建物=2015年/Joe Klamar/AFP/Getty Images
アドルフ・ヒトラーが生まれた建物=2015年/Joe Klamar/AFP/Getty Images

この建物を警察署に作り変える計画が最初に発表されたのは昨年の11月のことだ。オーストリア内務省は同月、この建物のリノベーションをテーマとしたデザインコンペを欧州連合(EU)全体で開始した。当時、オーストリア当局は、ヒトラーの生家の改築プロジェクトは、「国家社会主義活動」の抑止に役立つかもしれないと述べていた。

そして、同コンペで優勝したオーストリアの建築事務所マルテ・マルテ・アーキテクツの設計案が6月の記者会見で発表された。デジタルモックアップ(試作品の模型)を見ると、屋根は広い切妻屋根で、ファサード(建物の正面部分)は近隣の建物との調和を保つために現在の黄から白に変更されている。

現在も続く論争

ヒトラーの生家があるブラウナウ・アム・インの町では、この建物をどうするかについて長い間議論が交わされ、多くの住民は、短期間でもそこにヒトラーが住んでいたことを思い出させるその建物の取り壊しを望んでいる。

この建物は、数十年前からゲルリンデ・ポマー氏という人物が所有している。ポマー氏の家族は、ヒトラーが生まれる前からこの建物を所有していた。オーストリア内務省は1972年からこの建物を賃借し、さまざまな慈善団体に転貸していた。しかし、最後に入居していた障害者施設が2011年に退去して以来、入居者のいない状態が続いている。

改修計画について説明するネハンマー内相/JOE KLAMAR/AFP/AFP via Getty Images
改修計画について説明するネハンマー内相/JOE KLAMAR/AFP/AFP via Getty Images

オーストリア政府は4年前、この建物を取り壊すと発表したが、その後、内務省はこの建物を収用するための「特別法的許可」を行使し、ポマー氏からの強制取得に乗り出した。

この建物の収用と補償について法廷で争われ、その間に建物を取り壊す計画は見送られた。

オーストリア政府は、この建物を確保した後も、この建物がネオナチなど、ヒトラーのイデオロギーを支持する人々を引き付けるのではないかとの懸念を払しょくできなかった。しかし昨年、この建物を警察署に作り替える決定を発表した際、当時のボルフガング・ペショルン内相は、「今後、警察がこの建物を使用するということは、この建物が国家社会主義の記念碑としての役割を果たすことは決してないという明白なメッセージとなるだろう」と述べた。

建物の改築は2023年初頭までに完了する見通しで、改築費用は約500万ユーロ(約6億円)の見込みだ。

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