Architecture

ソビエトモダニズム――中央アジアの壮麗な建築様式を探る

Stefano Perego

ウズベキスタンの首都タシケントにあるチョルスー・バザールは、アーチ形の天井が特徴の頑丈なコンクリート造りの建物だ。ソビエトモダニズム特有の「飾り気のない」建物だが、円天井に使われている青や青緑色のタイルは見るからにイスラム的だ。

こうした2つの建築様式の融合は見た目に非常に魅力的で、ソビエト時代の建築を連想させる単調で面白みのないデザインとは大違いだ。

1980年に建てられたこのバザールは、20世紀後半にソビエト体制下の中央アジアに建てられた数多くの建造物の1つだ。

これらの建造物の大半は、複合的な美しさ、色彩、モチーフがあり、各建造物には旧東欧圏の標準的な社会主義建築に対する解釈の違いが見られる。書籍「ソビエトアジア」には、旧ソ連時代に建てられたそれら建造物が多数掲載されている。

Avicenna mosaic(1988年)=タジキスタン・ドゥシャンベ/Roberto Conte
Avicenna mosaic(1988年)=タジキスタン・ドゥシャンベ/Roberto Conte

イタリア人写真家ロバート・コンテ氏とステファノ・ペレーゴ氏の2人は、旧ソ連を構成していた中央アジアの共和国を旅しながら、その地域で都市開発が行われた1955~91年に建てられた集合住宅、博物館、図書館、庁舎など、ほとんど知られていない近代建築物の写真を撮った。

「各共和国においてソビエトモダニズムがいかに独特な解釈のされ方をしたかを分類するとともに、各国の建築の規範や基準が、より大きな建築上の社会的な動きの中にいかに組み込まれたかを明らかにしたかった」とペレーゴ氏は述べた。

実際、2人が撮影した建造物には、多色のタイルや人目を引くようなモザイクの使い方など、東洋の要素や特徴が見られる。

「ソビエトアジア」向けにエッセーを執筆した建築家でミラノ工科大学の建築・都市史の教授でもあるアレッサンドロ・デ・マジストリス氏によれば、最近までソ連時代の建築物は西側からの視点でしか注目されてこず、同質的で直線的な事象とみなされていた。しかし、今回の「ソビエトアジア」はこれとは違った語り口を提供してくれるという。

マジストリス氏は「建造物の建造は、ソ連の社会計画の遂行が目的だった。各建造物の記念碑のような巨大さがその証拠だ。しかし、その目的の表現法は極めて独創的で、非常に表現力を問われる、実験的なプロジェクトだった」と語る。

現代的なスターリン様式は標準化を原動力としている一方で、設計者は往々にして建築物の中に装飾的な脚色や地元の伝承などを盛り込んだ。「(建造物に)個々の芸術的要素や流行が用いられたケースは多いが、欧米は中央アジアなど、欧州から地理的に遠い地域の建造物にはほとんど関心を示さなかった」(デ・マジストリス氏)

レーニン像(1965年)=タジキスタン・イスタラフシャン/Stefano Perego
レーニン像(1965年)=タジキスタン・イスタラフシャン/Stefano Perego

旧ソ連の他の共和国では、社会主義建築は崩れるまで放置されることが多いが、「ソビエトアジア」に掲載されている建造物の多くは今でも使用されており、中には重要な歴史的建造物になっているものもある。コンテ氏によると、強い文化的関心からそれらの建造物を保存する動きがあり、ここ数年で建造物の保護団体がいくつか設立されたという。それらの団体は建造物の建築的重要性を認識しているとコンテ氏は言う。

しかし、都市の中心から離れた地区にある建物、特に大量生産された公営住宅の中には崩壊するまで放置されているものや、解体の危機に瀕している建物もある。

写真家のコンテ氏とペレーゴ氏は、自分たちの本がきっかけとなり、これまであまり調査や探索が行われなかったソ連時代の建造物に世間の注目が集まることを期待している。

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