中国がインドやブータンとの係争国境近くで「村」建設か 衛星写真が捉える

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衛星写真で新たに建設されたと見られる建物群があることが判明。左下は「パングダ村」、右側に備蓄庫/Satellite image ©2020 Maxar Technologies

衛星写真で新たに建設されたと見られる建物群があることが判明。左下は「パングダ村」、右側に備蓄庫/Satellite image ©2020 Maxar Technologies

香港(CNN) 中国がヒマラヤ山脈にあるインドやブータンとの国境付近の地域で建設活動をしていると見られる様子を衛星写真が捉えていたことがわかった。この地域は2017年にインドと中国の間で1カ月間にわたるにらみ合いが続いたドクラム地域の近くにある。

米国の衛星運用会社、マクサーテクノロジーズは声明で「2020年10月28日付けの写真から、トルサ川の渓谷地域で大規模な建設活動があったのは明らかだ」と述べ、ドクラム地域付近で「新たな軍の備蓄庫の建設もあった」とも付け加えた。

マクサーによると、新たに建設された「パングダ村」は両国が争う国境線のブータン側にあり、備蓄庫は中国側にあるという。

駐インド・ブータン大使は「ブータン内部に中国の村は存在しない」との声明を発表した。

中国外務省はこの衛星写真に対するCNNからのコメント要請に回答していない。インド外務省もコメントを出していない。

マクサーはパングダ村は中国と争う国境線のブータン側に建設されたとの見解を示している/Satellite image ©2020 Maxar Technologies
マクサーはパングダ村は中国と争う国境線のブータン側に建設されたとの見解を示している/Satellite image ©2020 Maxar Technologies

17年ににらみ合いが起きたドクラム地域は中国とブータンの両国が領有権を主張する。インドも含めた3カ国に接する幅の狭い地域で、インドにとっては同国北東部と残りの地域を結ぶ戦略的に重要なシリグリ回廊の近くにある。

アナリストのサイド・ファズレハイダ氏は、「中国軍は130キロも進めばブータンや西ベンガル、インド北東部の州を寸断できる。北東部に住む約5000万人が分断される」と指摘する。

中国国営紙の環球時報は、ブータンの領土に村が建設されたとのマクサーの主張やインドメディアの報道を否定する中国の専門家の話を伝えた。

17年のにらみ合いは、ブータンが同国の領土内で中国が道路建設を行っているとして、条約上の義務の「直接的な違反だ」と非難したことに端を発した。ブータンと公式に国交を結んでいない中国はそれを否定し、同地域は中国の領土の一部だと主張した。

ブータンは伝統的にインドの同盟国で、軍隊の訓練ではインドに頼り、外交政策でもインドと緊密に連携してきた。だが、最近は中国とインドのライバル関係がヒートアップする中で、その関係性にも変化が起き始めているようだ。

今年前半には、インドと中国はヒマラヤ山脈の別の係争地で衝突し兵士が少なくとも20人死亡。1962年の中印国境衝突以来、最悪の事態となった。

その後両国は事態の鎮静化で合意したが、マクサーの写真が示すのは、中国がインドとの国境付近での自国の立場を強化しようとする動きだ。

ドクラム地域の広域画像/Satellite image ©2020 Maxar Technologies
ドクラム地域の広域画像/Satellite image ©2020 Maxar Technologies

中国が自国の立場を徐々に補強し、侵略との主張を激しく否定するやり方は、南シナ海での中国の行動と一致する。中国は係争海域の大部分を実効支配下に置こうと、岩礁や小島を軍事要塞化してきた。

ニューデリーのシンクタンク、オブザーバーリサーチ財団のフェロー、マノイ・ジョシ氏は「中国は自国の主張をし、現地に事実を作り上げ、村ができる」「2017年の後、中国はインド側と同様、国境付近の自国の領域にはほとんど人が住んでおらず、パトロールが難しいことを理解した。いまや、現地に事実を作り上げ、村を作り上げ、常にそこにあったと主張できる」と指摘する。

同氏はさらに「ブータンはそれと付き合っていこうと、わめかずに見て見ぬふりをしようと思っていると私は考える」とも述べた。ブータンが抗議をしなければ、インドができることはほとんどないという。

「直線距離で今回の地点はインドから11キロあまり離れている。ブータンが公に支援を求めない限りインドにできることはない。インドとブータンの条約を見ると、防衛に関して明確に定める条項はない。ブータンがそれとうまくやっていこうとすれば、我々は見て見ぬふりをし、中国は現地に事実を作り上げていくことになる」(ジョシ氏)

オーストラリア戦略政策研究所のアナリスト、ネイサン・ルーサー氏は、新しい村は永続的なものというよりは、領有権を主張するためのものに見えると指摘する。

同氏は、村が建設された川の渓谷の真ん中にある砂州は非常に不安定な土地だと言及。高い崖に囲まれ融雪による川の水量は予測不能で、鉄砲水も起こるとの見方を示す。「中国人技術者はこれに対抗するための擁壁を建て、洪水による水が村に入り込まないようにしたと思うが、村に出入りする道路が洪水時に水に沈む1本しかない状況ではそれを信頼できない」と語った。

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