新型コロナ、感染急増の日本 最悪の事態恐れる医療従事者

感染拡大に歯止めがかからない日本。医療従事者からは事態の悪化を恐れる声が上がる/CHARLY TRIBALLEAU/AFP/Getty Images

感染拡大に歯止めがかからない日本。医療従事者からは事態の悪化を恐れる声が上がる/CHARLY TRIBALLEAU/AFP/Getty Images

東京(CNN) 日本の医療システムは、これから起こる事態に対応できないのではないか――カジワラ・アヤコさんはそんな不安をぬぐえないでいる。

カジワラさんは看護師長として勤務する埼玉県の病院で、集中治療室(ICU)にかかる負担の大きさを目の当たりにしている。そこで治療を受けているのは、新型コロナウイルス感染症の重症患者だ。

「つらいのは、よくなっていると思った患者さんでも、突然容体が悪化してしまうことだ」とカジワラさんは話す。

この2~3週間で、日本での新型コロナウイルスの感染者数は激増。期待とは裏腹に、政府のこれまでの対策が感染拡大抑止につながっていない実態が明らかになった。

安倍首相は急激な感染者の増加を受けて、緊急事態宣言の対象地域を当初の7都府県から全国に拡大した。17日には、医療用マスクやガウン、フェースシールドといった防護具も医療機関に供給すると約束。これらの施設ではこの1週間ほどで防護具が急速に不足する事態となっている。

政府の専門家チームは、日本で予想される新型コロナウイルス関連の死者について、人と人との接触を減らすなどの対策を取らない場合は40万人を超える可能性があるとの見解を示した。

これらの死者のほとんどは、人工呼吸器の不足が原因で命を落とすとも警告している。

医療物資の不足は、大阪市の松井市長が人々に未使用の雨がっぱの提供を呼びかけたことで明らかになった。医療用ガウンの足りない医療現場では、医師らがガウンの代わりにごみ袋を使わざるを得ない状況に陥っていた。

専門家からは、医療物資の不足と比較的低い日本の検査率、テレワーク態勢の不備が、感染者の急増という脅威を生み出す恐れがあるとの見方が出ている。

クラスター対策を検証

2月に日本で最初の新型コロナウイルス感染者が確認されて以降、当局者らはクラスターと呼ばれる集団感染の封じ込めに注力し、隣国の韓国などで見られる広範な検査を行ってこなかった。

これまで日本で検査を受けたのは約9万人にとどまるが、韓国の検査人数は51万3000人を超えている。両国の人口は、日本の1億2600万人に対し韓国が5100万人。

専門家らは日本における実際の感染率について、すでに公式発表をはるかに上回っている恐れがあるとみている。

今年2月、鳥取県の病院で新型コロナ患者に対応する訓練を行う医療従事者/The Asahi Shimbun/Getty Images
今年2月、鳥取県の病院で新型コロナ患者に対応する訓練を行う医療従事者/The Asahi Shimbun/Getty Images

日本の検査の方針は、緊急の治療を要する重症者に対象を絞ることで医療崩壊を回避するというものだ。厚生労働省の報道官によると、現在国内では1日当たり最大1万2000件の検査を実施することが可能だが、実際に行われているのは同6000~7000件だという。

東京都医師会は15日、検査を受診できる拠点約20カ所を新たに立ち上げると発表。感染症に詳しい久住英二医師は、軽症の人に対する検査も可能になれば、より多くの感染者が見つかる公算が大きいと述べている。

政府は、自分たちの検査の方針に自信を持っていると繰り返し強調してきた。

厚労省の報道官は、クラスター対策に注力し続ける中で、これまでのところ新型コロナウイルス感染者によるオーバーシュート(爆発的な患者の増加)は起きていないと説明する。

しかし、一部では感染経路が不明の感染者も出てきている。例えば東京で新たに197人の感染者が確認された11日、東京都はこのうちの77%について感染経路を突き止めることができないとしていた。

世界保健機関(WHO)事務局上級顧問で英キングスカレッジ・ロンドン教授の渋谷健司氏によると、大都市では感染経路が多岐にわたるため、クラスターを封じ込めて感染の経過を追跡するのは極めて難しいという。

クラスターを封じ込めるには、医療従事者が陽性反応の出た患者に聞き取り調査を行い、感染源を推定する作業が必要になる。しかし新型コロナウイルスはドアノブや電灯のスイッチの表面でも生存できるため、人々がどのように感染したかを特定するのは困難になる場合が多いと渋谷氏は指摘する。

渋谷氏がさらに付け加えたところによれば、クラスターの封じ込めに注力するやり方は感染率がまだ低く感染の範囲も狭い初期の段階は機能したものの、医療システムへの負荷が一段と高まりつつある現状では、戦略の見直しが強く求められているという。

メッセージの方向性に変化を

京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授は、新型コロナウイルスを封じ込めるため、政府は国民に対して正直になる必要があるとの認識を示す。ウイルスの存在を前提とした当面の生活がどのようなものになるのか、とりわけ人と人との距離を保つ「ソーシャル・ディスタンシング」や在宅勤務の機会が多くなることについて、きちんと説明するべきだと訴える。

政府は緊急事態宣言の対象地域を当初の7都府県から全国に拡大した/The Asahi Shimbun/The Asahi Shimbun/The Asahi Shimbun via Getty Images
政府は緊急事態宣言の対象地域を当初の7都府県から全国に拡大した/The Asahi Shimbun/The Asahi Shimbun/The Asahi Shimbun via Getty Images

宮沢氏の考えでは、政治家は現状で国民に期待を持たせすぎている。来月6日の緊急事態宣言の解除まで自粛してほしいと要請すれば、国民はその日にすべてが終わるものだと思い込む。現実はそうではないことを理解していない。実際には、その日が過ぎてもウイルスに対する警戒を維持する必要があると宮沢氏は強調する。

冒頭の看護師長のカジワラさんが勤務する病院は、今月初めに新型コロナウイルスの患者のためのICUを立ち上げた。ただベッドは6床しかなく、そのうちの半分はすでに埋まっている。カジワラさんは、すぐにも患者の受け入れが不可能になってしまうのではないかと恐れている。

医療器具の不足に関する懸念もある。日本呼吸療法医学会などの調査によると、全国の医療機関が備える人工呼吸器は約2万2000台にとどまる。2月下旬の時点で、このうち4割が使用されていた。

カジワラさんは他のスタッフとともに患者のため全力を尽くすとしているが、今後助からない患者が出ること、自分たちが感染するリスクもあることは理解している。

「希望は失いたくない」と語るカジワラさん。今回の経験を通じ、自由で快適な暮らしが日本人にとって当たり前のものになっていることを思い知らされたとしつつ、「今は世間の人たちも自分に何が必要か、この状況で本当に大事なことは何なのか、よくわかるのではないか」と言い添えた。

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