大坂選手の失敗、テニス界のメンタルヘルス対応の不十分さ浮き彫りに

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大坂選手の棄権に衝撃 米国の元プロテニス選手

(CNN) テニスの試合はローマ帝国のグラディエーター(剣闘士)ショーの現代版ともいえる。そして高温多湿になることが多い環境で何時間もプレーした後、精神的にすり減ってストレスレベルが急上昇したまま、テニス界のスター選手はメディアが待ち構える氷のように冷たい部屋に入る。試合後の記者会見の時間だ。

大坂なおみ選手(23)にとって、こんな経験はもうたくさんだった。テニス界のトップに上り詰める過程で数え切れない敵と対戦してきた大坂選手だったが、今週そのラケットを置き、メディアの質問攻めから身を引いた。

大坂選手は全仏オープンの記者会見に臨むよりも、大会を棄権することを決断。これをきっかけに、試合後に会見を行う文化や、会見が選手の心の健康に与える影響について幅広い議論が巻き起こっている。

こうした記者会見は、「ハゲワシの居場所」に等しい。そう指摘するのは、英アンディ・マレー選手の母親が創設した財団のコンサルタントを務めるクリス・スーター氏だ。マレー選手はこれまで、テニスが自らの精神面に与えた負担について公に語ってきた。

スーター氏はCNNの取材に、負けた選手にとって、しばしば男性が圧倒的に多い記者会見の場は威圧的だと語る。「負けた理由を根掘り葉掘り聞かれる。記者たちは厳しい質問を投げかける機会を探っている」

どんなアスリートにとってもきつい展開であり、大坂選手にとってももちろんそうだ。大坂選手はツイッターで、「もともと人前で話すのが得意でなく、世界中のメディアに話す前には大きな不安の波に襲われる」と認めていた。

そのため、大坂選手は心の健康を理由に、記者会見を一切避けるという大きな決断を下した。罰金が科された場合、全額を心の健康を扱う慈善団体に寄付してほしいと呼び掛けた。

これに対し、大会主催者は罰金1万5000ドル(約165万円)を科したほか、大会追放を示唆。これを受けて大坂選手は大会を棄権し、ツイッターに「皆さんがパリで行われているテニスに再び集中できる」ことを望むとつづった。

そのうえで、2018年に初めて4大大会(グランドスラム)を制して以来、「長い間うつに苦しんでいた」と言い添えた。

大坂選手が会見拒否を決めた後、全仏オープン側はツイッターに、ラファエル・ナダルや錦織圭、アリーナ・サバレンカ、ココ・ガウフ各選手がメディア対応をする写真を投稿、「彼らは仕事を理解していた」と書き込んだ。その後、写真は削除された。

こうした対応について、スーター氏は「冷たい」と指摘し、「先陣を切って」テニス界のメンタルヘルス問題への解決策を探る機会を逃したとの見方を示す。

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