OPINION

たった1つの誤算で、核の惨禍が現実に

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米陸軍が公開した1945年8月6日の広島への原爆投下の様子を捉えた写真/U.S. Army/Hiroshima Peace Memorial Museum/AP

米陸軍が公開した1945年8月6日の広島への原爆投下の様子を捉えた写真/U.S. Army/Hiroshima Peace Memorial Museum/AP

(CNN) 国連のグテーレス事務総長に対して、パニックに陥りやすい人物という見方はほとんど当たらない。ましてや物事を誇張しがちなタイプでもない。その彼がこれほどおびえた様子を見せるのは異例のことだ。

デービッド・A・アンデルマン氏
デービッド・A・アンデルマン氏

「人類はたった1つの誤解、たった1つの誤算が生じるだけで核によって滅亡する」。グテーレス氏は今週そう語った。同氏をはじめ、核の問題とそれがもたらす結果とを深く考える人が見るところでは、世界は起こり得る最終戦争に向かって、頭から飛び込もうとしている。自分たちの行動、あるいは不作為の行き着く先がどのようなものなのか、ろくに顧みることもなく。

ペロシ米下院議長はそうした恐怖感をほとんど意に介さず、軽い気持ちで台湾を訪問したように見える。これに対しては中国本土の指導部が、強い警告を発していた。本土の武器庫には350発の核兵器があり、台湾とは狭い海峡1つを隔てただけだ。加えて今回の訪台は、ロシアのプーチン大統領がウクライナを巡って好戦的な言動を示す状況下で行われた。地理的に近い北朝鮮でも、金正恩(キムジョンウン)総書記が核にまつわる言説と活動を継続している。

グテーレス氏の不安は当然ながらより広範かつ深いものであり、現在のアジアで燻(くすぶ)る火種のみにとどまらない。同氏は核不拡散条約(NPT)再検討会議で演説を行った。この会議は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のため、2年延期されていた。

NPTは1968年7月1日に93カ国が署名し、2年後に発効した。現在は191カ国が締結国に名を連ねるものの、かつてないほど脆弱(ぜいじゃく)に思える。重要性はこれまで以上に高まっていても、なおそうした印象は拭えない。

背景にあるのは、グテーレス氏も見抜いているように、今年の会議が置かれた状況だ。条約の署名から10度目となる今回の会議は、「冷戦の最悪期以来となる核の危機を迎える中での開催」だった。

確かに、世界の安全保障のまさしく基盤となるものが、これまで実質的に平和を保証してきた。戦争中使用された最後の原子爆弾が1945年8月9日に長崎の上空で爆発して以降はそうだった。しかしここへ来てその基盤はひどく揺らいでいる。

米国は依然として、戦争で核兵器を使用した史上唯一の国であり続けている。旧ソ連が最初の核実験を行ったのは、上記の原爆投下から4年後のことだった。

59年7月、当時のフランスのドゴール大統領は、筆者との共著で書籍を出版してもいるアレクサンドル・ド・マレンシュ伯爵をワシントンに派遣した。アイゼンハワー大統領に対し、フランスが核保有国の仲間入りを果たすための秘策を授けるよう頼むためだ。アイクことアイゼンハワー大統領は、丁重ながらも断固とした態度でこれを断った。

しかしそれから1年と経たないうちに、フランスは最初の核実験を実施した。英国でも、その8年前に初の核実験が行われていた。

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