OPINION

グローバル企業は気候変動に対処すべし、手遅れになる前に

異常気象が猛威を振るう中、グローバル企業は気候リスクに直ちに対処する必要がある/Andrew Caballero-Reynolds/AFP/Getty Images

異常気象が猛威を振るう中、グローバル企業は気候リスクに直ちに対処する必要がある/Andrew Caballero-Reynolds/AFP/Getty Images

気候変動がもたらす脅威は、人類がこれまで直面した中で最大のものの一つだ。この数週間だけを見ても山火事が地球の至る所で発生し、猛烈な熱波が米国各地の都市を襲い、洪水は欧州とアジアで数百人の命を奪っている。気候変動の影響が長期化する中で、こうした異常気象による被害は今後も悪化の一途をたどる公算が大きい。

パニー・レンジェン氏
パニー・レンジェン氏

有意義かつ目に見える形で対策を進めることがとてつもなく重要な任務となる。この星と将来世代のために不可欠なのは、グローバル企業とそれを動かす専門職とが気候変動との戦いに力を入れ、緊急的な対策を取ることだ。

以下、そのための方法を示す。

自社の排出量を削減する

先の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、世界のリーダーたちは気候に関する自分たちの公約を強化し、エネルギーの移行の機会に注力するとした。そうした取り組みにより、世界中でクリーンエネルギーにまつわる雇用を創出できるようになるだろう。このほかにも2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量実質ゼロを達成すると約束。30年までに全体での排出量を半減させ、陸地と海洋の少なくとも30%を保全するとした。

産業界も各国政府と足並みをそろえ、各社の事業の中で排出削減に取り組まなくてはならない。

今や数百社がそのための第一歩を踏み出し、100%再生可能エネルギーによる操業を約束している。とりわけハイテク分野がこの動きを牽引(けんいん)。多数の企業がすでにその目標を達成しているほか、さらに多くの企業も科学に基づいた計画を打ち出して実現を目指す。

リスクを公開し、新たな報告基準を採用する

企業は気候変動がもたらす財務リスクを分析し、その情報を一般に公開しなくてはならない。

グローバルな資本市場には高品質で一貫した、比較可能なデータが必要だ。それをもとにリスクとリターンの原動力を把握し、資本を効率よく配分。より弾力的かつ低排出の経済への移行に向けた資金を調達する。

金融市場に正しい情報を提供することで、我々は資金が必要なところへ流れているとの自信を得られる。それらの資金は経済の弾力性を高め、世界中の排出量を低減させる。つまり、長期的な気候変動関連のリスクにさらされている企業は事業コストが膨らむ恐れがある一方、気候問題の解決策を進める企業はより安い資本にアクセスできるようになる可能性があるということだ。そうした事例はもう実際に起きている。

例えば独保険会社のアリアンツは今後、新たな炭鉱運営を計画する採掘会社に損害保険を提供しない。また資産運用大手のブラックロックは、気候変動リスクにさらされている企業への投資に制限を設けている。

心強いことに企業は気候変動の影響に関する報告を増やし、世界経済フォーラム(WEF)の「ステークホルダー資本主義の指標(SCM)」のような構想を通じて透明性と説明責任の向上にも取り組んでいる。SCMは環境・社会・ガバナンス(ESG)を指標とする開示事項で、企業はこれを活用して成果報告を行える。先のG7では気候に関する報告基準を採用することが約束された。こうした動きは今後規制環境の進む方向性を強化するものだ。

従業員を教育する

ビジネスリーダーである我々は、従業員こそ自社の最大の資産であることを認識する必要がある。企業にとってのまさに「スーパーパワー」だ。組織ぐるみの気候教育プログラムを通じ、企業は持続可能性の文化を作り上げ、気候問題への意識を業務のまさに中心に据える思考を育むことができる。

そうした理由からコンサルティング会社デロイトは今月、新たな気候教育プログラムの本格展開を開始した。全世界で働く専門職33万人全員が対象だ。

世界自然保護基金(WWF)と共同開発した同プログラムは、気候変動の影響について従業員が関与できるように作られている。問題への対処法を伝え、実際に行動を起こすよう促す仕組みだ。従業員の間に気候問題に対する意識を根付かせ、具体的に行動する文化を構築することで、持続可能なビジネスモデルへの移行を助けるネットワークが出来上がるだろう。その影響は広範囲に及ぶはずだ。

気候政策を支持する

企業は団体としての力を活用して、気候政策を支持しなくてはならない。それらの政策は、50年かそれよりも早い時期までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにするという大胆な目標を掲げる。

世界中の企業トップと並んで、筆者は最近、政治指導者らへの要望書に署名した。二酸化炭素に値段をつけ、化石燃料からの移行に必要なインフラ投資を行うよう求めたのだ。運輸・物流の巨大企業から小売り大手まで、各社が同様の措置を講じ、近年構造的な変革を進めている。石油・天然ガス部門でさえ、炭素排出量の価格付けを支持するようになった。

他のリーダーたちにも、この課題に立ち向かうよう呼び掛けたい。彼らは気候に関する知識を事業全般にわたる中核的能力としなくてはならない(それがより大きな行動へのきっかけになる)。そして具体的な対策を立て、気候危機に真っ向から挑む必要がある。

世界が力を合わせ新型コロナと戦う状況には、まさに心を奮い立たせるものがある。しかし各共同体がパンデミック(世界的大流行)から回復し始める中、以前のやり方にただ立ち戻るのは不可能だ。世界が手を取り合っているこの現状を足掛かりにしよう。我々はそうした協力が可能であると知っている。そして次に待ち受ける人類最大の危機へと立ち向かおう。

企業がすべてのステークホルダー(利害関係者)にとっての長期的かつ持続可能な価値を作り上げるには、自分たちの役割を果たし、公正で持続可能な未来を築かなくてはならない。我々の将来はそれにかかっている。

パニー・レンジェン氏はコンサルティング企業デロイト・グローバルの最高経営責任者(CEO)。記事の内容は同氏個人の見解です。

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