OPINION

両親は朝鮮系移民、アトランタ在住の記者が反ヘイト訴え

米首都ワシントンのチャイナタウンでアジア系に対する差別への抗議デモに参加する女性/Graeme Sloan/Sipa USA/Reuters

米首都ワシントンのチャイナタウンでアジア系に対する差別への抗議デモに参加する女性/Graeme Sloan/Sipa USA/Reuters

(CNN) 筆者の両親が朝鮮半島から米国にやってきたのは、多くの移民と同様、よりよい未来のためだった。彼らはそこが果てしないチャンスの国であり、ルールに従うことでそうしたよりよい未来に到達できるのだと教えられた。ルールは極めて強力かつ明確で、常に広く知れ渡っていたため、移民がそれを守るメリットを見逃すことは決してなかった。こうした「ルール」により米国人の理想は生き続けるとみられたが、実際のところは外国人を彼らの居場所にとどめ、多数派から遠ざける結果を生んだ。これが「模範的なマイノリティー(少数派)」の神話だ。そして現在ますます明らかになっているように、神話はあくまでも神話なのである。

ジェイン・キム氏
ジェイン・キム氏

アジア人とアジア系米国人に対する襲撃と殺害について、直近では筆者の地元のアトランタで起きた銃撃事件で、アジア系女性6人を含む8人が死亡した。こうした事例が証明する通り、我々はルールに従っていようと、口を閉ざして目立たないようにしていようと、結局殺害されてしまう。米国が我々の文化や料理への愛着を口にしても、我々は依然として外国人であり、地元の一員とはみなされない。白人側だと思われていても、ふとした時にそうではなくなる。同じように、我々は人目につかない存在であり、歴史上の居場所を失いつつあるように見える。

しかし、いつか「白人」になれるかもしれないと信じることで、我々は白人至上主義を永続させている。米国において人種という話題は、第一に白人対黒人に焦点を当てるものであり、しばしばアジア系米国人が目に見えず、声も出せない状態に置かれる。今回のような恐ろしい事件が起きた後でさえも、人々が選んだのはアジア・太平洋諸島系(AAPI)のコミュニティーへの人種差別は存在しないと信じ込むことだった。なぜか? 人種問題が白人対黒人に集中しすぎているから、その他のコミュニティーに対する人種差別は存在しなくなったり、それほど深刻でなくなったりするという理屈だろうか? これは何も、我が黒人の同胞に数百年にわたって起きていることの重大性を失わせようという話ではない。それでもどういうわけか、アジア系に対する人種差別と憎悪は、より見えにくい問題となっている。まさしくそこに存在し、非常に勢いづいているにもかかわらず。

我々の大多数にとって2020年1月26日は、米プロバスケットボール(NBA)の元スター選手、コービー・ブライアントが悲惨なヘリコプター事故で亡くなった日だ。筆者もブライアントの死を永遠に記憶にとどめるだろう。何といっても彼は、筆者の好きなアスリートの一人だった。しかしながら、ある別の出来事もまた、この日の記憶に暗い影を落としている。

当時はまだ「COVID―19」の名称はつけられていなかったが、命にかかわるコロナウイルスが新たに人々の知るところとなり、世界中のメディアの見出しに登場しつつあった。ほとんど未知のウイルスで、わかっていたのは最初の感染例が中国の武漢で確認されたことと、感染力が極めて強いことくらいだった。その日、筆者は当時のボーイフレンド(現在の婚約者)と、ジョージア州スマーナにあるレストランで遅めのランチをとることにした。レストランに着いた私たちには、何の問題もなかったように思う。人にじっと見られたり、悪意のある視線を投げかけられたりはしなかった。誰も私たちのすぐ近くに立つのを避けようとはせず、不快なことも言われなかった。

実際のところ、筆者はアジア系だという理由で他と異なる扱いを受けるなどと思ってはいなかった。しかし私たちだけが建物の外、屋根のあるテラスの席に案内されたのだ。ダイニングルームにはまだ十分空席が残っていたというのに。1月の寒い日だったので、ダイニングルームの席に移れるか尋ねたところ、接客係はこれに応じてくれた。

屋内の席に着いても、私たちの給仕係は非常に不愛想だった。注文を取った後はほとんどテーブルに近寄ろうとせず、文字通り最低限の対応しかしていなかった。私たちが「米国人」寄りのアジア系で、独特なアクセントの英語を話していないと気付いたところでようやく、彼女は顧客サービスらしきものを提供することに決めたのだった。ひょっとすると人種の観点から私たちに新型コロナとの関連を見て取ったのではないか、そう思わざるを得なかった。

状況は丸1年、ずっと荒れている。極力控えめに言ってもそうだが、その要因は1つではない。激しく人種差別的な言説をまき散らす大統領の存在、パンデミック(世界的大流行)、黒人男性ジョージ・フロイドさんの殺害に続く人種問題の議論まで、誰もが心に相応の傷を負ってきた。

筆者はミレニアル世代(1980~90年代生まれ)や移民の子どもたちの代弁者ではないが、自信を持って言えるのは、我々の世代にとってアトランタでの銃撃のような事件を目撃させられるのはつらいものだということだ。ニューヨークやサンフランシスコなどでアジア系の高齢者が襲われる事件にしてもそうである。彼らは我々の祖父母であり、おば、おじ、両親だ。こうした移民たちは人生の新たな出発のため米国にやってきて、清掃などの仕事で長時間働き、家族を養った。経済的に成功するケースはまれでも、アメリカン・ドリームを追い求めて生きてきた。自らの生活を気にかけるだけの罪なき人々が、道を歩いていて、職場で、レストランでの食事中に、アジア系という理由で襲撃されている。理解しがたい話だが、これがいかに不当で間違ったことかはわかる。いかなる少数派のコミュニティーであれ、人種を理由に攻撃されるいわれなどない。

だからこそ我々は反撃に転じ、現状をありのまま訴えている。街頭へ、ソーシャルメディアへ、私的なメールや会話の中へ、現状に対する認識を持ち込んでいる。こんなことは絶対によくないと、世界に知らしめているのだ。

同じく苦痛なのは、ジョージア州チェロキー郡のジェイ・ベイカー保安官室報道官のような人物から、アトランタでの銃撃の容疑者を擁護するかのようなコメントが聞かれることだ。その内容は「容疑者は相当うんざりしていた」「(事件当日は)容疑者にとって実にひどい1日だった」などといったもので、この後ベイカー氏は報道官の職務を外れている。フランク・レイノルズ保安官はベイカー氏のコメントについて、被害者の誰をも軽蔑する意図はなく、「容疑者に対する共感や同情」を示したものでもないと説明したが、彼らは依然として罪のないアジア系の人々が殺されたという事実を完全に軽んじている。また当局は、事件を直ちにヘイトクライム(憎悪犯罪)と認定しなかった。容疑者が警察に対し、自分が「セックス依存」を抱えていること、マッサージ店での銃撃を実行したのは「誘惑」を消し去るためだったことを告げた後も、認定は見送られた。

これを白人特権の典型と言わずして何と言おう。そんな特権は存在しないと主張することももはやできまい。AAPIの女性を分別なく殺害した罪に問われた男が、動機は人種と無関係だと当局に供述し、少なくとも何人かはその言葉を真に受けているようだ。これは危険な先例になる。今後、特定のコミュニティーに対する憎悪を実際の行動に移す人々は、この先例を利用するだろう。現状では、未来や人間の在り方について希望を持つのは難しい。我々の苦痛と苦闘は常に無視され、闇に葬られてしまう。あるいはもっと悪いことに、我々は苦しんで当然だという認識さえ存在している。

ただ一方で、今回は様子が違うという実感もある。アトランタの事件に対する反応は心温まるもので、我々の背中を押すのに十分な量が届いている。支援の波がありとあらゆる方面から押し寄せる状況は、我々の存在が今回の事件よりも大きなものとなっていることを示唆する。

我々に必要なリーダーとは、人種差別主義者や犯罪者、殺人者、襲撃者に対し、自分たちの行為の責任を取らせる人物、現状をありのままに訴える人物だ。我々に必要な親とは、子どもに対し、善良で真っ当な人間になるよう教える人たちだ。我々に必要な同調者、支持者とは、今後も果敢に戦い続け、同僚や友人、隣人といった人々の支援を継続する人たちだ。これからの我々に必要なのは、互いへの共感と思いやりを持ち続けることであり、痛みや苦しみの度合いを比べることではない。

こうしたことを真に念頭に置けば、アジア系と黒人のコミュニティーは当初の想定より一段と密接な関係を築ける。重要なのは、我々の苦しみが非常に異なるものであるのを認めることだ。それらを互いに比較したところで何も生まれはしないが、それぞれの経験と苦しみには不思議とつながるところがある。

一連の事件は偶然でもなければ特異なものでもない。そこには意図があり、筆者のコミュニティーが狙われている。我々は全員狙われているのだ。危険な状態にあり、恐怖と怒りを感じている。我々が求めるのは、生きていく上での公平な機会だけだ。愛する人の死を嘆き悲しむ、あるいは愛する人が無事に帰宅するかどうか不安に駆られている、そういったすべての人々のために、我々はヘイトを止めなくてはならない。

ジェイン・キム氏はCNNの社員で、アトランタに約20年住んでいる。アジア系米国人ジャーナリスト協会(AAJA)のアトランタ支部に所属する。記事の内容は同氏個人の見解です。

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