観測史上最大のブラックホール同士が衝突、国際チームが重力波を観測
超高速の回転
GW231123のもう一つの特徴は、猛烈な回転速度だ。
「私たちがこれまでに重力波で観測したブラックホールのほとんどは、比較的ゆっくり回転していた」と、ホイ氏は語る。「GW231123はこれまで観測された合体とは違うメカニズムで形成された可能性がある。あるいは、私たちのモデルを修正する必要があるのかもしれない」

LIGOの二つの観測装置によって捉えられた「GW231123」/LIGO-Virgo-KAGRA Collaboration
ハンナム氏によると、これほど高速の回転は、それぞれのブラックホールが過去にも合体を経験していたという説の裏付けになる。合体を経たブラックホールは、回転が速くなると考えられているからだ。
過去に記録された最大のブラックホール合体は「GW190521」だが、その規模はGW231123の60%にすぎなかった。ハンナム氏は、将来さらに大規模な合体現象が見つかるかもしれないと話す。今後20年ほどのうちに、米国のコズミック・エクスプローラー(CE)や欧州のアインシュタイン望遠鏡(ET)など次世代の重力波観測プロジェクトにより、さらに正確な装置で衝突、合体を観測できるようになるかもしれない。
今回の大規模な合体は1回限りの例外か、あるいは巨大な氷山の一角なのか。それは今後の観測で明らかになると、専門家らは期待している。